[ポスター65-3] 救急外来看護師へのACPに対する学習会の効果
【背景】病院では,患者に対してアドバンス・ケア・プランニング(以下Advance Care Planning:ACPとする)を行うことが基本となっており,今後さらに一般にも浸透していくと考えられる。しかし,救急外来看護師にACPに対する知識がなく,理解できていない場合,ACPが行われている患者が救急搬送された際,患者の意思や人生観とは異なった終末期医療が実施される恐れがある。【目的】限られた情報や時間的制約の中で,意思決定支援を行う救急外来看護師のACPに対する現状を明らかにして,ACPに関する勉強会・症例検討を行うことで,ACPに対する意識向上を図る。【実践内容・方法】令和X年7月から1年間,救急外来看護師12名を対象に取り組んだ。ACPに関する意識調査(以下意識調査とする)を21項目で独自に作成した。内容は『知識』『実践』『家族支援』『救急外来ACP』とし,評価は5段階評定尺度(1点:できない/ない~5点:できる/ある)とした。意識調査を行い,ACPを実践する上で,分からないことや知りたいことを記載してもらった。そこから明らかとなったACPに対する現状をもとに,約4ヶ月かけて,コミュニケーションスキルを含むACPの勉強会を3回,救急外来での代理意思決定を迫られた家族へのACP支援について,ロールプレイングを取り入れた症例検討を2回行なった(以下学習会とする)。学習会から4ヶ月後に2回目の意識調査を行い,学習会後の意見や気付きを自由記載してもらった。分析はウィルコクソンの符号付順位和検定を用い,自由記載については,記載内容の類似性でまとめた。本研究は,A病院看護部倫理委員会の承認を得た(承認番号 倫6)。対象者には匿名化と情報の管理について,また,学術集会で実践報告として発表することを書面で説明し,同意書をもって同意を得た。【結果】意識調査において,学習会後に20項目で有意に上昇した(p<0.001,p<0.01, p<0.05)。学習会後の意見として「ACPの具体的なタイミングやコミュニケーションスキルを学べたので実践に活かしたい」「患者・家族がACPを意識できるタイミングを逃さず関わっていきたい」などがあった。【考察】意識調査は学習会後,20項目で有意に上昇した。これは,勉強会で得たACPの基礎的な知識を,症例検討で活用したことで,ACP支援を行うためのタイミングや具体的なイメージがついたためと考える。更に,ロールプレイングを取り入れ,看護師・患者・家族役となることで,各々の感情を理解し,ACP支援のイメージがつきやすくなったと推察する。今回,ACPの必要性を理解し,知識及び技術を習得したことで,時間的な制約がある中でも,ACPを見据えた,より質の高い看護実践への意識づけに繋がったと考える。【実践への示唆】学習会によってACPに対する意識が向上することが確認できた。今後もACPを意識した意思決定支援を行うために,学習会を継続していくことが必要である。