第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター66群 対象と向き合う看護職の意識③

Sun. Sep 29, 2024 1:30 PM - 2:30 PM ポスター会場 (展示ホール)

座長:野口 香

[ポスター66-2] 消化器内視鏡における看護師の思考と実践

質的統合法による個別分析の結果から

中野 絵美1, 國江 慶子2, 佐々木 美奈子1 (1.東京医療保健大学大学院医療保健学研究科, 2.東京都立大学人間健康科学研究科)

【緒言】内視鏡室でもタスクシェアが進む中で、内視鏡看護師も専門性を発揮して働くことが求められている。しかし、内視鏡看護分野の研究は具体的な介助方法についてのものが多く、内視鏡看護師の思考や実践に焦点を当てた研究は少ない。【目的】内視鏡看護師が内視鏡室で患者に対してどのような思考や判断で看護を実践しているかについて個別事例から内在する論理を抽出し理解することである。【方法】内視鏡指導施設の看護部署長から推薦を受けた内視鏡看護経験6年以上の看護師を対象に、オンラインによる半構造化面接を実施した。面接では心に残っている患者との関わりの事例、内視鏡室で大事にしている看護は何か等を尋ねた。分析は質的統合法(KJ法)を用い、研究参加者のうち、内視鏡室での看護やその思考プロセスが豊富に語られたA氏の語りから個別分析を実施した。志が同じ内容でグループ編成を繰り返し、最終ラベルを生成し、最終ラベルの関係性に基づいて空間配置を行った。分析の信用性を確保するため、質的研究の経験がある看護学研究者のスーパーバイズを受けた。本研究は、A大学研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:院022-026C)。対象者に目的、方法、参加・中断・撤回の自由、個人情報の保護、結果の公表等を説明し、同意の署名を得た。【結果】A氏は内視鏡看護経験年数17年であった。A氏の35枚の元ラベルより4段目までグループ編成し、6枚の最終ラベル(以下〈〉で示す)を得た。A氏は意識しないと時間が流れていく内視鏡室で〈患者が安心できるように状況に合わせてコミュニケーションを取る努力〉をしつつ、同時に〈カルテ情報と実際の患者から得た情報を合わせて、検査が安全にできるように調整する〉ことの両方を基盤としながら、〈患者と画面から起きていることを把握し、苦痛緩和に努め〉たり、〈状況を判断して会話よりも準備や処置を優先し集中し〉たり、〈苦痛の原因が分からない中で、経験や状況から想定される苦痛に対して試行錯誤を重ねる〉という事を、時には同時並行的に、時には取捨選択しながら看護を実践していた。その看護の根底には〈自分がいる意味を考え続けながら患者のニーズを達成するために支える〉という姿勢があり、その姿勢が全ての思考や実践に影響を与えていた。【考察】A氏は、状況によっては処置介助や全身管理を優先させ集中しながらも、検査中の患者の様子から何かを感じ取ろうと模索し、試行錯誤して看護を実践していた。これは外来看護師の実践知の1つである[流れの中で的確に役割をキャッチする洞察力](原田,2011)と共通しており、内視鏡室における看護師の役割の1つと言える。【結論】内視鏡室において、看護師は目の前の患者に必要な看護を模索しながら、限られた時間の中で優先順位をつけて看護を実践していた。