第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター66群 対象と向き合う看護職の意識③

Sun. Sep 29, 2024 1:30 PM - 2:30 PM ポスター会場 (展示ホール)

座長:野口 香

[ポスター66-3] 日常生活援助に関わる看護師の倫理的感受性に影響を与える要因

日常倫理に関するインタビュー調査

毛利 広恵, 折舘 裕子, 渡辺 みのり (横浜栄共済病院)

【緒言】臨床看護では、日常生活援助において患者の尊厳を守る行動が求められる。そのため清潔や排泄等の日常的な援助を倫理的側面から焦点化した日常倫理が重要だと考えた。日常倫理の観点を重視した倫理的感受性の必要性とその役割を明確化する事も課題とされている(藤野2017)。倫理的感受性に影響を及ぼす要因には年齢や経験年数、勤務形態(大西2016)、看護倫理についての関心、倫理教育、倫理的問題の経験(吉川2013)がある。しかし、臨床場面での日常倫理に関する看護師の思考や行動に関する要因は明らかにされておらず、本研究に取り組んだ。【目的】日常倫理の中で患者の尊厳が守られていないと感じる臨床場面について、看護師の倫理的感受性に影響を与える要因を明らかにし、倫理的感受性を高めるための教育の示唆を得る。〔用語の定義〕倫理的感受性:臨床現場において生じる倫理的問題を認識し、患者ケアを向上させるために解決していく能力【方法】A病院の臨床倫理委員会の承諾を得た(承認番号20230220-3)。研究に同意したA病院A病棟看護師から、経験年数別に無作為抽出した6名に対し「患者の日常生活援助の際、倫理的に問題があると気になった場面や印象に残っている事」について半構造的面接を行った。逐語録を作成しMayring の要約的内容分析で、コード化、カテゴリー化を行った。【結果】代表的なコード≪≫55個、サブカテゴリ―<>13個、日常倫理の中で倫理的感受性に影響を与える要因として『』5個のカテゴリーが抽出された。【考察】『優先される医療的ニード』では、≪トイレに連れていきたいが麻痺が強く安全を優先した≫『優先される患者のニード』では、≪排泄をオムツにしてもらうのは尊厳やプライドが傷つく≫と、対峙するコードとカテゴリーが抽出されており、看護師は変化する援助の中で、患者のニードを満たしたいが、治療や安全を優先する場合はジレンマを抱えていると考えられた。『ケアと業務の優先度』では≪時間的に清潔ケアが後回しになり出来ない時がある≫から<業務の優先度>や時間的制約が清潔ケアに影響していると推察された。『看護の経験による学び』『他者のケアに対する批判』では≪スタッフにより気づきが異なる≫<経験による認識の差>の中で、経験や価値観の違いが、日常生活援助に影響していると考える。新城(2018)は倫理的な実践に影響を与える要因として看護職(者)を取り巻く医療チームの価値観をあげている。日常倫理に対する「気づき」を語り合う事で、チームの日常倫理が醸成され、個人の倫理的感受性も高められると考えられる。さらに、チームと個人の価値観を共有し行動する事で倫理的視点が根付くと考える。【結論】1.倫理的感受性に影響を与える5個のカテゴリーが抽出された2.日常倫理に対する「気づき」を語り合う事でチームの日常倫理が醸成され、個人の倫理的感受性が高まる事が示唆された