[ポスター68-3] 小児病院外来における特定行為研修修了看護師の活動報告
【背景】看護師特定行為研修は,団塊の世代が75歳以上となる2025年に向け,今後の急性期医療から在宅医療等を支えていくために一定の診療の補助行為を行う看護師を計画的に養成することを目的として2015年から開始された。小児領域でも近年医療的ケアを必要とする児が増加し,A病院では1か月に約70名の患者が胃瘻ボタンや気管カニューレの交換のため外来を受診する。同日に複数科を受診する患者も多く診察までの待ち時間が長くなることがあり,外来診療の効率化を図るため特定行為研修修了看護師(以下,特定看護師)による特定行為実践が求められている。 【目的】特定看護師が外来で特定行為を行う意義を明らかにする。 【実践内容・方法】特定行為研修修了後の202X年12月~202X年6月までを臨床研修期間とし,指導医立会いのもと胃瘻ボタンと気管カニューレの交換(以下,特定行為)を実施。202X年7月からは特定看護師のみで特定行為を行った。特定看護師のみで行った特定行為の実践内容を考察する。 倫理的配慮:個人や施設が特定されないよう配慮した。【結果】202X年7月~202X年2月までに胃瘻ボタン,気管カニューレの交換目的で受診した患者はそれぞれのべ518名,161名,特定行為を行った患者はそれぞれのべ197名,25名であった。A病院では胃瘻ボタン交換後の位置確認をレントゲン写真で行っているが,循環器科の診察前に特定行為を行うことで,胸腹部写真1枚で済ませることができるため被爆回数を減らし,レントゲン撮影に伴う移動の負担を軽減できた。さらに,診察の待ち時間に特定行為を行うことで患者は診察室で医師に相談する時間を確保でき,医師はタスクシフトにより診察に集中できるようになった。患者,家族は診察の待ち時間と院内の滞在時間が短縮した。 【考察】臨床研修期間中に指導医立会いのもと,継続的に特定行為を行うことで患者や家族の信用が得られ,特定看護師のみで交換を行うようになっても患者,家族の不安がない状態で特定行為を行うことができたと推察された。来院後の適切なタイミングで介入することで待ち時間が短縮し,患者の負担軽減につながるため,特定看護師が介入する意義があると言える。また,特定行為実施前に問診をするため医師と看護師の両方の視点からアセスメントでき,特定行為実践時の情報を医師と共有できるため,質の高い診療につながると考える。 【実践への示唆】 特定行為研修制度の趣旨にある在宅医療等の推進を図っていくためには,特定看護師だけでなく外来看護師による在宅療養支援が不可欠であり,治療と生活の両面から患者や家族をアセスメントし,患者にとってベストな選択ができるような関わりが重要となる。今後は外来看護師と協働して外来看護を充実させ,患者や家族を中心とした看護の展開ができるように,チーム医療のキーパーソンとして多職種と連携を図り在宅で安心して生活できるように支援していく必要がある。