[口演S-2-2] 業務量調査からみた看護師の役割と生産性の検証
-患者受け持ち看護師とフリー看護師の生産性の比較-
Keywords:生産性、役割分担、業務量調査
【目的】病棟における看護師の日々の業務分担は、患者を受け持つ看護師(以下受け持ち)とフリー業務を行う看護師(以下フリー)に分けられる。生産性を考えた時にその役割により差があると感じていた。日勤業務をどう役割分担することが生産性を高めることにつながるかを業務量調査から検討した。【方法】A 病院独自の業務量調査より、一般病棟の日勤者過去 3 年分のデータを用いた。本研究では受け持ち(ペアラウンド)とフリーの 1 時間あたりの該当項目数の 1 日分を合計し、それらを経験年数別に分けた。分析には単純集計と χ2乗検定またはフィッシャーの直接確率検定を用いた(有意差:p < 0.05)。用語の定義:業務量調査は全 24 項目における 1 分単位の業務内容を1人ずつタイムスタディしたもの。1 日あたりの 1 人の該当項目合計数(以下業務数)が多いことを生産性が高いとした。倫理的配慮:対象者へオプトアウトし、データは匿名化した。A 病院倫理委員会の承認を得た。【結果】単純集計における受け持ちとフリーの業務数合計の平均値の比較では、受け持ち 12.21 ± 2.2、フリー 9.10 ± 3.3 で受け持ちのほうが多い。受け持ちの業務数 2 群(14未満、15 以上)と経験年数 4 群(2 年以下、3-5 年、6-9 年、10 年以上)の比較では 10 年目以上で業務数が 15 以上の割合が高い。フリーでは業務数 2 群(9 以上、9 未満)と経験年数 2 群(10 年以上、9 年以下)の比較では、10 年目以上で業務数 9 以上の割合が高い。【考察】フリーよりも受け持ちの方が生産性は高い傾向であった。その要因としてはペアラウンドの影響が考えられる。10 年目以上の高パフォーマンス群とそれ以外の群でペアを組むことで、能力差を埋め生産性が高くなる可能性がある。フリーでは指示による業務が多く、指示がなければ自主的に仕事を行っていく必要がある。また、時間的な制限が少ないためパーキンソンの法則からも生産性を低下させやすいと考えられる。一方、経験年数 10年目以上のフリーは生産性が高い。その要因として副師長や総リーダーといった役割を担っている者が含まれており、自ら仕事を発見し動ける行動力があるためと考えられる。これらから生産性が高くなる役割分担は、フリーを配置するよりも受け持ちを多く配置した方が生産性が高い可能性がある。フリーを配置する場合は、経験年数が高い方が生産性が高いことが示唆された。