[口演S-5-2] 両側同時人工股関節全置換術後患者の有用な退院支援の検討
-患者の術前・術後の日常生活の実態と思いから-
Keywords:両側同時人工股関節全置換術、日常生活、退院支援
【目的】両側同時人工股関節全置換術(以下両側 THA)後患者の術前・術後の日常生活の実態を明らかにし、有用な退院支援を検討する。【方法】2019年 12 月から 2021年7 月にA 病院で両側 THA を施行した患者のうち、本研究の参加の同意が得られた 16 名を対象とした。術前・術後の生活状況や思いについて独自のインタビューガイドにて半構成的面接を行った。加えて、術前・術後の疼痛と生活動作のアンケート調査を行った。インタビュー結果は類似性と相違性を検討しながらカテゴリー化し質的に分析、アンケート結果は単純集計した。対象者に研究目的等の説明をし書面で同意を得た。【結果】対象者は男性 1 名、女性 15 名、調査時の術後経過期間は 3 か月~ 1 年 8 か月であった。語られた患者の経験から、手術を受けるまでの生活を構成する<自らを制限してやっとやっとな生活>、<生活復帰と楽しみのために一回で治す!>を含む 4 カテゴリー、入院中の生活を構成する<想像より動けない術後>、<自信をもって家に帰るための準備>を含む 3 カテゴリー、退院後の生活を構成する<術前とは違った感じと生活の難しさ>、<痛くなかった頃の生活に戻った感じ>、<できないことやリハビリは日常生活の中で工夫>、<退院後の生活で頼りにしているもの>を含む 6 カテゴリーを抽出した。アンケート調査より、疼痛は術前は「常に痛い」、「常に非常に痛い」と回答した者が10 名、術後は0 名であった。生活動作の困難度は、術前平均 2.5 ± 0.9 点から術後平均 0.6 ± 0.6 点に改善していた。【考察】患者は少しでも早い生活復帰を目標に両側 THA を決断しており、その決断の背景は退院後の目標設定の理解に繋がると考える。また、術前の疼痛等で制限されていた生活は、術後は術前とは異なる違和感や生活動作の難しさへと変化しており、手術で生活の改善を期待していた患者らは戸惑っていた。しかしこれらは経過とともに改善しており、変化の予測を患者にも伝えていくことで不安を軽減できると考える。そして、患者らは入院中から退院後を見据えて行動し、退院後もさまざまな工夫をしながら生活を送っていたことから、入院中の生活場面をきっかけに患者の住居環境や支援体制などを情報収集し、退院後の必要物品や周りのサポート、活用できるサービスについて患者とともに考えていくことが、患者が安心できる有用な退院支援に繋がると考える。