第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 札幌

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口演

口演7群: 安全・安楽への支援

Fri. Sep 2, 2022 12:30 PM - 1:30 PM 口演会場2 (204)

座長:斉藤 美香

[口演S-7-2] 初発急性心筋梗塞患者の危機的体験を通した心境についての考察

上田 加奈子, 浅井 義之, 大谷 敏貴 (京都府立医科大学附属北部医療センター)

Keywords:急性心筋梗塞、危機的体験、心境、MGTA、HCU

【目的】初発急性心筋梗塞患者が生命の危機的体験を通し抱いた心境を明らかにし、退院後の生活管理指導等の看護援助を導き出す。【方法】2019年 11月7 日~ 2020年4月6日 に初発急性心筋梗塞と診断され、PCI 治療を受けた 9 名に A病院の急性冠症候群のリハビリテーション立位 2 分に合格した時点で半構成的面接を行い、MGTA 法を用い分析した。倫理的配慮は文書と口頭により説明し、紙面による同意の確認を行った。用語の定義として、危機的体験とは心筋梗塞を発症し初療から HCU を退室するまでに、精神的身体的にも初めて危ういと感じる体験。心境とは出来事に対して様々な心情を経て、至った心の状態とした。【結果】9 個のカテゴリーと 40 個の概念が生成された。初発急性心筋梗塞患者は、初期の症状を日常の中の違和感の知覚として捉え、<身体感覚から来る初めて経験する不安>を抱く。死を予感するほどの差し迫った症状になると<命の危険から来る不安>に直結し、思考は死後の予測へと及び、<死の覚悟から来る苦しみ>により危機を感じる。自分ではなす術がなく、無力感から医療を受け入れ、<援助の希求>をし、迅速な対処による安心、早期回復への希望を持ち、<医療による生きる力の獲得>をしていた。しかし、早期治療により<実感のなさによる戸惑い>や強いられる安静に対し<病識の乏しさから来る戸惑い>を抱くが、変化した身体を自覚することで<受容により気づいた身体への思い>や<退院後の食事療法への思い>を経ていた。【考察】急性期の患者は、予想外の事態に実感がなく、退院後の生活管理指導に対する介入を行っても病気を捉えられず、生活変容へ思考は転換しないと考える。しかし、その後も続く治療と安静制限により自己の身体へ関心が向き、学習の準備段階に入ると考えられ、まずは病態理解に焦点を当てた指導の必要性を得た。さらに、入院後開始される減塩食療法は入院前の食生活を振り返る機会となっており、食事変容の理解に繋がる早期食事指導の必要性を得た。また、退院後の食事療法に対して抱いた不安は家族背景や発症した自己に対する家族の受け止めが関係していると考える。そのため、急性期の段階から家族の思いを把握することで患者と家族の思いを繋ぎ、家族への病態指導といった援助の方向性を得た。