[口演S-7-4] 気管切開部の医療関連機器圧迫創傷予防に向けたチェックリスト使用の効果
Keywords:気管切開、医療関連機器圧迫創傷、褥瘡、チェックリスト
【目的】2019 年度 A 病棟では気管切開部の医療関連機器圧迫創傷(以下 MDRPU とする)が 5 件発生した。気管切開部の MDRPU の予防に着目した先行研究はないが、褥瘡予防に対するチェックリストの有効性は示されている。以上より、本研究は気管切開部の観察、ケアに関するチェックリストの使用が気管切開部の MDRPU 予防に有効か明らかにすることを目的とした。【方法】2019年5 月~ 2020年4 月にA 病棟に入室したチェックリスト使用前の患者と 2020 年 5 月~ 2021 年 4 月に入室したチェックリスト使用後の患者での MDRPU の発生率及び発生リスク要因を U 検定、χ2 検定を用いて分析した。P<0.05 を有意水準とした。本研究は、病院の倫理・個人情報保護委員の承認を得て実施した。チェックリストは B 病院集中ケア認定看護師が日総研出版「ICUナースのノート」を参考に作成し、院内採用されているものを使用した。チェックリスト実施率は経過記録のチェックリスト実施に各勤務チェックが付いているかを確認して評価した。【結果】チェックリスト使用前の患者の MDRPU の発生は 40 人中 5 人であった。一方、チェックリスト使用後の患者の MDRPU の発生は 72 人中 1 人であり、チェックリスト使用後の方が MDRPU 発生率は有意に少なかった(χ2 検定で P=0.02)。MDRPU が発生した患者の発生リスク要因として、気管切開孔からの痰の垂れ込みが 6 人中 5 人、浮腫が 6人中 4 人該当した。チェックリストの実施率は月平均 74%だった。【考察】MDRPU の発生件数減少の要因として、チェックリスト使用による観察項目の見落とし予防、皮膚トラブル早期発見が挙げられる。MDRPU に対してチェックリストは有効である。チェックリスト使用前後で MDRPU が発生した患者のリスク要因を調べた結果、気管切開孔からの痰の垂れ込みと浮腫が示され、これはチェックリスト使用後に発生した 1 人にも該当した。これらに関する観察項目、ケア方法の修正・追加をすることで、更なる減少が期待できる。一方でチェックリストの実施率は十分とはいえず、要因として、チェックリスト導入時に病棟にいたスタッフには使用方法の説明が周知できたが、その後に転入したスタッフへの周知が不十分だったことが考えられる。今後は転入者に使用方法を伝える機会を設け、統一したケアが出来る環境作りが必要である。