第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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口演

口演17群 精神看護①

Wed. Nov 8, 2023 10:30 AM - 11:30 AM 第10会場 (G318)

座長:中澤 範子

[口演Y-17-3] 不穏状態の患者への頓服薬使用の判断の視点

―病棟看護師へのインタビューを通して―

水口 宅巳, 硲 寿枝 (公立能登総合病院)

Keywords:精神科、不穏、頓服薬

【目的】A病院精神科病棟では入院患者の病状が変化し不穏状態となった際に、医師の指示に基づいた頓服薬の使用を看護師が行っている。しかし、使用の明確な基準はなく、判断は対応する看護師に委ねられている。適切に頓服薬を使用するため看護師の視点を明らかにする。【方法】X年9月~10月にA病院精神科病棟に勤務する看護師17名を対象に研究者が作成したインタビューガイドをもとに半構造化面接を行った。質問内容は①精神科での経験年数②頓服薬を実施する場面③頓服薬を使用しない場面④使用を迷う場面。これらの質問から得た内容から「不穏状態の患者への頓服薬使用の判断の視点」に関わる要素をコード化し類似性、相関性、関連性に基づきカテゴリー化した。所属施設の倫理審査会の承認を得て研究を開始した。対象者には口頭と書面にて研究内容を説明し同意を得た。【結果】不穏状態の患者への頓服薬使用の判断の視点として〈患者の苦痛を軽減し本人と周囲の人間の安全を守ることを考えて薬の効果を期待する〉〈看護師の人員、勤務状況を考慮して頓服薬の使用を考える〉〈患者自身が症状をコントロールできるように考える〉〈頓服薬を使用せず対応や関わり方を工夫することを考える〉〈頓服薬使用後の患者の反応と身体的影響に対する不安・迷いがある〉〈人権問題や信頼関係が崩れる可能性を考える〉〈チームメンバーに相談し助言を受ける〉の7つのカテゴリーが抽出された。【考察】不穏時の頓服薬の使用は、患者が症状をコントロールできない時に鎮静するため使用されている。会話や付き添いなどの対応を優先し不要な薬を使用しないように判断することが多い。また、患者自身が症状をコントロールする術を身に付けることや身体に悪影響を及ぼすことを考慮して使用方法を検討することが多い。しかし、患者の状態や看護師の人員の変化、勤務状況により、やむを得ず頓服薬を実施することがある。頓服を実施する必要性、必然性があっても強制的に注射薬などの身体的に侵襲を伴う頓服を実施することによって患者の人権を侵害してしまうという葛藤や信頼関係が崩れて今後の治療に悪影響を及ぼす場合があるなど自身の対応にジレンマを抱えている看護師は多いと考えられる。一人で適切な判断ができない時はチームメンバーに相談やカルテから過去に薬剤を使用した際の反応を確認することで、適切な頓服薬実施に繋がると考える。