第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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口演

口演34群 マネジメント戦略

Thu. Nov 9, 2023 9:00 AM - 10:00 AM 第8会場 (G314+G315)

座長:各務 初恵

[口演Y-34-3] 地域一体型でできるACPを目指した政策案の検討

我妻 雪子1, 多田 早苗2, 中村 供美3, 古屋 雅世4, 佐藤 直子5, 石原 美和6 (1.茅ヶ崎市立病院, 2.厚木市立病院, 3.横浜中央病院, 4.鹿島田病院, 5.西武文理大学看護学部, 6.神奈川県立保健福祉大学保健福祉学研究科)

Keywords:意思決定支援、地域包括ケアシステム、看護政策

【目的】我が国におけるAdvance Care Planning( 以下:ACP)普及に関する問題点と課題を明らかにし、政策案を検討する。【方法】ACP が医療提供体制に上手く導入されていない問題点について、文献やホームページ上のデータを用いて分析し、その結果を用いて政策案を検討する。 倫理的配慮については、A 大学倫理審査委員会より審査不要と承認され、データについても公開された既存資料を用いた。【結果】臨床現場においては、「独居高齢者や認知症患者が増加し本人の意思確認が難しい事例が多く望まない治療に至ること、現場の医療者が個別に意思決定支援をしており、中立な立場での対応か妥当性の確認が難しいこと、入院中の支援が退院後も継続されにくいこと」が問題点として挙げられた。既存データや先行文献等からは「国民の認知度が低いこと、現場の看護師が抱える困難として支援に関する知識技術不足への不安、時間確保の難しさ、療養者の意向との相違などがACP 促進の障壁となっていること」が明らかになった。治療に限らず療養場所の選択等を含めた複雑な意思決定を、継続的に支援する体制が必要であると考えた。自分がどう生きたいか元気な時から考え、周囲と共有できるように、看護職の専門性を発揮できるACP の支援体制の構築を検討した。既存の医療体制や診療報酬、以前廃止となった「後期高齢者終末期相談支援料」などを参考にACP 支援を体制加算とする診療報酬案を作成した。更に、地域包括ケアシステムを活用し、地域で支援できるように「地域一体型ACP」という概念図を作成した。国に対して診療報酬を、市町村に対して介護保険制度の地域支援事業にACP 推進を位置付ける政策提言案の作成に至った。【考察】全ての人に自分でどう生きるかを決定する権利があり、その支援体制を整えることは重要である。地域一体型ACP の推進は、医療機関と地域の看護職が最大限に専門性を発揮し、さらに地域の看看連携により支援体制の構築が可能であると考える。また、望まない医療の回避により国全体の医療費軽減が図れ、結果的に国民の負担軽減につながる。国にとっても必要施策になりえると考える。今回検討した政策案は、今後多死社会を迎え、病院で亡くなることが当たり前ではない時代が近づいている中で、質の高い医療提供と国民の生活の質向上の一助となる政策案となるのではないかと考える。