第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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口演

口演37群 看護職の心の働きとその対処①

Thu. Nov 9, 2023 2:30 PM - 3:30 PM 第8会場 (G314+G315)

座長:山下 千夏

[口演Y-37-3] 緩和ケア病棟における看護師のがん患者に対する困難感の変化

小林 美紀, 山川 奈美子, 江連 澄江 (栃木県済生会宇都宮病院)

Keywords:終末期がん患者、緩和ケア病棟看護師の困難感尺度、IPOS

【目的】2020 年からの新型コロナウィルス感染症拡大のため、B 病院においても面会制限が続いている。そのため、患者と家族が病状や今後の見通しについて十分に話し合うことが困難な場合や、家族の希望で病状や予後を正確に伝えられていない場面があり、看護師は終末期がん患者の全人的苦痛の把握やケア介入に困難を感じている。今回、患者報告型IPOSをスクリーニングツールとして使用し、A 病棟看護師のがん患者に対する困難感の変化を明らかにする。【方法】2022 年5 月~ 8 月、A 病棟入院患者およびA 病棟看護師14 名を対象に、自記式質問紙調査にてIPOS 実施前後の看護師の困難感調査と患者へのIPOS スコアリングを単純集計し統計処理を実施した。困難感調査は、笹原朋代氏が作成した「一般病棟の看護師の終末期がん患者のケアに対する困難感尺度」(以下困難感尺度と略する)全78 項目中60 項目を使用し6 つのカテゴリーに分類した。倫理的配慮:B 病院の倫理委員会に承認を得た後、A 病棟看護師および患者に研究の趣旨・目的・方法・研究参加の有無で個人の不利益が生じないこと・研究結果の公表など文面を用いて説明した。看護師を対象とするアンケートはプライバシー配慮のため無記名で実施し個人が特定できないようにした。【結果】IPOS 前の調査において、困難感尺度項目の中で項目1『患者・家族のコミュニケーション』で困難感が高く、IPOS 前後の看護師が感じている困難感尺度全体比率比較では、困難感尺度項目1が、75.5%から60.5%の減少がみられた。【考察】看護におけるコミュニケーションは、患者・家族との信頼関係の構築が必要である。A病棟におけるがん患者に対する6 つの困難感尺度から、尺度項目1 が最も困難感が高いことがわかった。IPOS 実施後、A 病棟看護師から「患者と向き合い、話を聞く時間ができる」等の意見が聞かれた。これは患者が感じている苦痛を主観的に確認でき具体的な質問項目による対話が図れたことで、患者の心身的苦痛を把握することや意思決定支援に繋がった。また、IPOS を併用することで患者と直接向き合い、思いや希望が明確になると考える。そのため、患者との対応に困難を感じた時、IPOS を活用し患者の声を聴くことが、コミュニケーションを図る手段としては有効であり、全人的苦痛の把握や患者の思いに応じた看護支援に繋がったと言える。