[OA-12-2] 口述発表:脳血管疾患等 12脳卒中重度上肢麻痺に対するrTMSと上肢機能訓練の5年間の経過
【はじめに,目的】
脳卒中後の上肢機能を改善させる手段として,反復経頭蓋磁気刺激治療(以下rTMS)と上肢機能訓練を併用した治療法が注目されている.この治療法は,軽度から中等度の上肢麻痺に対し,上肢機能の改善に有効であると報告されている.一方,重度の上肢麻痺に対しては,上肢機能の改善に効果を認めないという報告が散見される.脳卒中後の上肢麻痺を改善させるためには,随意的な上肢の運動を促すことが重要とされているが,重度の上肢麻痺を有する場合,その頻度と量が短期間の治療では確保できないことが影響として考えられる.そこで,重度の上肢麻痺を有する症例に対し,rTMSと上肢機能訓練を1年に2回の頻度で5年間にわたってフォローアップした結果,麻痺側の上肢機能と使用頻度に改善が得られたため,その成果を報告する.
【方法】
症例は脳卒中発症後約11年が経過した重度の上肢麻痺を有する60歳代の男性.初回治療開始時点のBrunnstrom stageが上肢手指Ⅱで,麻痺側肩関節に2横指分の亜脱臼を認めた.FIMは122点で歩行はT-caneを使用して自立していた.
rTMSは健側の第一背側骨間筋の運動誘発電位が最小刺激強度で誘発可能な部位に対し,運動閾値の90%の強度で実施した.1Hz の低頻度rTMSを1セッション20分間,1日に2回の頻度で計24セッションを約3週間の入院治療にて平日のみ実施した.rTMS直後に40分間の上肢機能訓練を実施し,その他の時間で自主訓練を2時間行った.上肢機能訓練と自主訓練の内容は,上肢の自動介助運動,上肢体幹の筋力訓練,ミラー療法,ロボット療法,電気刺激療法,課題指向型訓練とした.土日祝日は上肢機能訓練と自主訓練のみ実施した.このプログラムを1年に2回の頻度で5年間にわたって計9回実施した.入院期間外においても,自宅での自主訓練,また通所リハビリテーション(週2回)のスタッフと連携を図り,その時点の能力に応じた上肢機能訓練を行えるように支援した.
評価はFugl-Meyer Assessment(以下FMA)の上肢項目合計点,肩関節内転筋・肘関節屈筋・手指屈筋のModified Ashworth Scale(以下MAS),Motor Activity Log(以下MAL)の使用頻度(以下AOU),動作の質(以下QOM)のそれぞれの平均点を用い,各入院治療前後に実施した.
【同意と説明】
対象者には治療と研究内容について説明し同意を得た.
【結果】
入院時はFMA12点,MAS肩関節内転筋0,肘関節屈筋1+,手指屈筋0,MAL-AOU0点,QOM0点.生活の中で麻痺側上肢を使用することはなかった.4回目治療後はFMA14点,MAS肩関節内転筋1,肘関節屈筋2,手指屈筋1,MAL-AOU 0.25点,QOM 0.21点.食事や書字の時に食器や紙を押さるなど麻痺側上肢を使用する意識が向上した.9回目治療後はFMA25点,MAS肩関節内転筋0,肘関節屈筋1+,手指屈筋0,MAL-AOU 0.46点,QOM 0.35点.食事中はお椀を持ち上げることやパンを口に運ぶことが可能となった.
【考察】
重度の上肢麻痺患者に対して,rTMSと上肢機能訓練を5年間にわたってフォローアップした結果,上肢機能および生活の中での使用頻度の改善を認めた.内山らは「重度の上肢機能障害に対しても,CI 療法を基盤として各種治療手段を複合的に用いることで,上肢機能改善と上肢活動の日常生活への汎化を実現できる可能性が示された」と述べている.単発での治療では上肢機能の改善が得られない重度の上肢麻痺患者であっても,治療を継続して実施することで,上肢機能および使用頻度の改善に効果が得られる可能性が示された.
脳卒中後の上肢機能を改善させる手段として,反復経頭蓋磁気刺激治療(以下rTMS)と上肢機能訓練を併用した治療法が注目されている.この治療法は,軽度から中等度の上肢麻痺に対し,上肢機能の改善に有効であると報告されている.一方,重度の上肢麻痺に対しては,上肢機能の改善に効果を認めないという報告が散見される.脳卒中後の上肢麻痺を改善させるためには,随意的な上肢の運動を促すことが重要とされているが,重度の上肢麻痺を有する場合,その頻度と量が短期間の治療では確保できないことが影響として考えられる.そこで,重度の上肢麻痺を有する症例に対し,rTMSと上肢機能訓練を1年に2回の頻度で5年間にわたってフォローアップした結果,麻痺側の上肢機能と使用頻度に改善が得られたため,その成果を報告する.
【方法】
症例は脳卒中発症後約11年が経過した重度の上肢麻痺を有する60歳代の男性.初回治療開始時点のBrunnstrom stageが上肢手指Ⅱで,麻痺側肩関節に2横指分の亜脱臼を認めた.FIMは122点で歩行はT-caneを使用して自立していた.
rTMSは健側の第一背側骨間筋の運動誘発電位が最小刺激強度で誘発可能な部位に対し,運動閾値の90%の強度で実施した.1Hz の低頻度rTMSを1セッション20分間,1日に2回の頻度で計24セッションを約3週間の入院治療にて平日のみ実施した.rTMS直後に40分間の上肢機能訓練を実施し,その他の時間で自主訓練を2時間行った.上肢機能訓練と自主訓練の内容は,上肢の自動介助運動,上肢体幹の筋力訓練,ミラー療法,ロボット療法,電気刺激療法,課題指向型訓練とした.土日祝日は上肢機能訓練と自主訓練のみ実施した.このプログラムを1年に2回の頻度で5年間にわたって計9回実施した.入院期間外においても,自宅での自主訓練,また通所リハビリテーション(週2回)のスタッフと連携を図り,その時点の能力に応じた上肢機能訓練を行えるように支援した.
評価はFugl-Meyer Assessment(以下FMA)の上肢項目合計点,肩関節内転筋・肘関節屈筋・手指屈筋のModified Ashworth Scale(以下MAS),Motor Activity Log(以下MAL)の使用頻度(以下AOU),動作の質(以下QOM)のそれぞれの平均点を用い,各入院治療前後に実施した.
【同意と説明】
対象者には治療と研究内容について説明し同意を得た.
【結果】
入院時はFMA12点,MAS肩関節内転筋0,肘関節屈筋1+,手指屈筋0,MAL-AOU0点,QOM0点.生活の中で麻痺側上肢を使用することはなかった.4回目治療後はFMA14点,MAS肩関節内転筋1,肘関節屈筋2,手指屈筋1,MAL-AOU 0.25点,QOM 0.21点.食事や書字の時に食器や紙を押さるなど麻痺側上肢を使用する意識が向上した.9回目治療後はFMA25点,MAS肩関節内転筋0,肘関節屈筋1+,手指屈筋0,MAL-AOU 0.46点,QOM 0.35点.食事中はお椀を持ち上げることやパンを口に運ぶことが可能となった.
【考察】
重度の上肢麻痺患者に対して,rTMSと上肢機能訓練を5年間にわたってフォローアップした結果,上肢機能および生活の中での使用頻度の改善を認めた.内山らは「重度の上肢機能障害に対しても,CI 療法を基盤として各種治療手段を複合的に用いることで,上肢機能改善と上肢活動の日常生活への汎化を実現できる可能性が示された」と述べている.単発での治療では上肢機能の改善が得られない重度の上肢麻痺患者であっても,治療を継続して実施することで,上肢機能および使用頻度の改善に効果が得られる可能性が示された.