[OD-4-4] 口述発表:運動器疾患 4手掌部に優しい水銀式握力計用カフの開発
【序論】
関節リウマチ患者等の手指変形が強い者への握力計測には,水銀式血圧計のマンシェット部をゴム製の握力カフ(以下,従来型カフ)へ差し替えられた水銀式握力計が使用されてきた.しかし,握力カフの販売が終了され,再販の予定も無いため,我々はダイヤ工業(岡山市)の協力にてゴムより耐久力の高い素材(表:ナイロン,裏:ウレタン)を融着して成型した新型カフ1を作成した.しかし,これはカフ側面の融着部が握力計測時に手掌部へ干渉し,疼痛を誘発する可能性があったため,本研究ではカフ側面を融着後,カフを翻転させて成型した新型カフ2を作成し,従来型カフとの性能比較を実施した.
【方法】
1.使用機器 水銀式握力計(アコマ医科工業社製,アコマ水銀式血圧計卓上型),従来型カフ(アコマ医科工業社製,握力カフ,幅65 mm,長さ150 mm),新型カフ2(ダイヤ工業社製,素材:表裏ともウレタン,幅65 mm,長さ150 mm),ベッドサイドモニタ(日本光電工業社製,PVM-2703),腕用カフ(ベッドサイドモニタ付属small-adultサイズ),ビデオカメラ.
2.手順 検討1:従来型カフと新型カフ2における加圧値と計測値の比較 各カフに対し,臨床場面と同様に20mmHgの初期圧をかけた.その後,ベッドサイドモニタの腕用カフを各カフの周囲に巻きつけ,100~280 mmHgまで20 mmHg刻みに3回ずつ加圧し,水銀血圧計が示す平均値を求めた.この流れを1セットとし,合計5セット繰り返し,5セット分の平均値および,決定係数(R²)を算出した.測定すべてをビデオカメラに録画した後,表示値を読み取った.検討2:従来型カフと新型カフの計測値の比較 検討1で得られた各カフの計測値について,決定係数(R²)を算出した.今回,すべての統計はMicrosoft Excel 2019を使用した.
【結果】
検討1:加圧値に対する計測値について,従来型カフは,低値から順に95.0,109.8,124.9,139.1,154.0,168.9,183.5,198.2,212.8,226.6(mmHg),決定係数は,y=0.7334x+21.934 R²=0.9999であった.新型カフ2は,低値から順に102.1,118.5,136.3,152.7,169.4,185.3,200.2,217.1,232.4,248.7(mmHg),決定係数は,y=0.8119x+22.013 R²=0.9997であった.検討2:従来型カフと新型カフ2を比較したときの決定係数は,y=1.107x-2.2693 R²=0.9998であった.
【考察】
検討1より,新型カフ2は従来型カフに対し,加圧値に対する計測値が全般的に高値であった.要因の一つに新型カフ2がウレタン製であり,ゴム製より柔らかい事が影響したと考えられる.また,既に実施した新型カフ1の加圧値と計測値の決定係数y=0.68x+19.187 R²=0.9996に比較しても高値だった.要因の一つに,融着部がカフの内側となり,表面が平面化され,より均一に加圧されたと考えられる.一方,新型カフ2の決定係数の切片は22.013であり,初期加圧の20mmHgに近く,R²値も0.99以上なので,十分な計測精度が得られていると考えた.検討2の結果も併せて考えると,新型カフ2は従来型カフとほぼ同等な性能であることが分かった.本研究では機器を使用した検討であったが,今後,患者による臨床上での検討を行うと共に,水銀血圧計に代わる新たな計測装置の開発も検討する予定である.
関節リウマチ患者等の手指変形が強い者への握力計測には,水銀式血圧計のマンシェット部をゴム製の握力カフ(以下,従来型カフ)へ差し替えられた水銀式握力計が使用されてきた.しかし,握力カフの販売が終了され,再販の予定も無いため,我々はダイヤ工業(岡山市)の協力にてゴムより耐久力の高い素材(表:ナイロン,裏:ウレタン)を融着して成型した新型カフ1を作成した.しかし,これはカフ側面の融着部が握力計測時に手掌部へ干渉し,疼痛を誘発する可能性があったため,本研究ではカフ側面を融着後,カフを翻転させて成型した新型カフ2を作成し,従来型カフとの性能比較を実施した.
【方法】
1.使用機器 水銀式握力計(アコマ医科工業社製,アコマ水銀式血圧計卓上型),従来型カフ(アコマ医科工業社製,握力カフ,幅65 mm,長さ150 mm),新型カフ2(ダイヤ工業社製,素材:表裏ともウレタン,幅65 mm,長さ150 mm),ベッドサイドモニタ(日本光電工業社製,PVM-2703),腕用カフ(ベッドサイドモニタ付属small-adultサイズ),ビデオカメラ.
2.手順 検討1:従来型カフと新型カフ2における加圧値と計測値の比較 各カフに対し,臨床場面と同様に20mmHgの初期圧をかけた.その後,ベッドサイドモニタの腕用カフを各カフの周囲に巻きつけ,100~280 mmHgまで20 mmHg刻みに3回ずつ加圧し,水銀血圧計が示す平均値を求めた.この流れを1セットとし,合計5セット繰り返し,5セット分の平均値および,決定係数(R²)を算出した.測定すべてをビデオカメラに録画した後,表示値を読み取った.検討2:従来型カフと新型カフの計測値の比較 検討1で得られた各カフの計測値について,決定係数(R²)を算出した.今回,すべての統計はMicrosoft Excel 2019を使用した.
【結果】
検討1:加圧値に対する計測値について,従来型カフは,低値から順に95.0,109.8,124.9,139.1,154.0,168.9,183.5,198.2,212.8,226.6(mmHg),決定係数は,y=0.7334x+21.934 R²=0.9999であった.新型カフ2は,低値から順に102.1,118.5,136.3,152.7,169.4,185.3,200.2,217.1,232.4,248.7(mmHg),決定係数は,y=0.8119x+22.013 R²=0.9997であった.検討2:従来型カフと新型カフ2を比較したときの決定係数は,y=1.107x-2.2693 R²=0.9998であった.
【考察】
検討1より,新型カフ2は従来型カフに対し,加圧値に対する計測値が全般的に高値であった.要因の一つに新型カフ2がウレタン製であり,ゴム製より柔らかい事が影響したと考えられる.また,既に実施した新型カフ1の加圧値と計測値の決定係数y=0.68x+19.187 R²=0.9996に比較しても高値だった.要因の一つに,融着部がカフの内側となり,表面が平面化され,より均一に加圧されたと考えられる.一方,新型カフ2の決定係数の切片は22.013であり,初期加圧の20mmHgに近く,R²値も0.99以上なので,十分な計測精度が得られていると考えた.検討2の結果も併せて考えると,新型カフ2は従来型カフとほぼ同等な性能であることが分かった.本研究では機器を使用した検討であったが,今後,患者による臨床上での検討を行うと共に,水銀血圧計に代わる新たな計測装置の開発も検討する予定である.