[OD-5-3] 口述発表:運動器疾患 5情報機器作業時の頸椎肢位の違いが僧帽筋上部線維および手関節伸筋群の即時的な筋硬度変化に与える影響
【緒言】情報機器(Visual Display Terminal;VDT)作業とは, ディスプレイ, キーボード等により構成される作業で, コロナ禍の影響でテレワークが増え, 座位によるVDT作業が増加している. 近年,VDT作業とテニス肘の関連性について報告され, テニス肘の発症割合は, テニスプレイヤーが10%, VDT作業従事者が90%弱と言われている(金子ら, 2018). テニス肘の発症原因は, 手関節伸筋群の使い過ぎと考えられているが, 特に, ①前腕回内位での持続的な手関節伸筋群の収縮, 加えて, ②姿勢による筋緊張の変化も原因の一つと推測され, 不良姿勢が中枢測と末梢測の筋活動に影響を与えることが報告されており(Grandjean E, 1987), 不良姿勢が手関節伸筋群の筋活動量に影響を与える可能性が推測される. 先行研究(Leonard CT,et al, 2004)により筋硬度計で測定される筋緊張は, 表面筋電図の筋活動量と相関し, 筋硬度は, 筋緊張の評価として用いることが可能であるとされている. 本研究の目的は, VDT作業時の良姿勢および不良姿勢時の僧帽筋上部および手関節伸筋群の筋硬度を評価し, 不良姿勢時の手関節伸筋群の筋硬度が上昇するかを検証し, 不良姿勢が即時的に手関節伸筋群の筋硬度に影響することを明らかにすることである.
【対象と方法】対象は, 健常女性10名, 平均年齢21.2歳(20-21), 全例利き手右. 既往に上肢運動器障害および中枢神経障害のないものとした. 自覚的肩こりがなく, 全対象者に対し, 研究に対する説明を口頭および文書にて実施し, 研究協力および本学会での報告の同意を得られたものを対象とした.研究に参加の同意を得られたものとした. VDT作業時の良姿勢と不良姿勢は, 良姿勢はFujitsuのパソコン使用時の良姿勢を参考に, 耳垂, 肩峰, 大転子が一直線になる座位で, なおかつ, 先行研究(Suvarnnato T, et al, 2019)に準じ, 良姿勢の頭蓋脊椎角(CV角;第7頸椎に対する水平線と耳珠がなす角)は23°になるように設定し, 不良姿勢は, CV角が55°となるように設定した. 筋硬度は, try-all製のneutoneを使用. N=0.0258×測定値+0.4 によって単位をニュートンに換算した. 測定部位は右僧帽筋上部線維の筋腹中央, 右手関節伸筋群筋腹中央(長橈側手根伸筋および短橈側手根伸筋)とした. 良姿勢の僧帽筋および手関節伸筋の筋硬度を100%とし, 不良姿勢直後(即時の評価のため)の各々の筋硬度の変化率を算出し, t検定にて比較し, 有意水準は5%未満とした.
【結果】筋硬度は各々, 良姿勢時の僧帽筋上部線維は1.44±0.58N, 手関節伸筋群は1.70±0.54N,不良姿勢時(良姿勢から不良姿勢に変化した直後)の僧帽筋上部線維は1.73±0.45N, 手関節伸筋群は1.83±0.57Nで, 変化率にすると, 良姿勢の僧帽筋100%に対して不良姿勢では173±45%, 手関節伸筋群は100%から183±53%へと即時的な上昇を認め, 僧帽筋および手関節伸筋群の筋硬度は,良姿勢と不良姿勢の間に有意差を認めた(p<0.01).
【考察】本研究結果より, 僧帽筋上部線維と手関節伸筋群は, 良姿勢から不良姿勢へと変化した直後から筋硬度が変化したことを認めた. 本研究結果は即時的な変化のため, 長時間の変化についての検証が必要であるが, 不良姿勢がVDT作業時の手関節伸筋群への負荷を高める可能性が示唆された. コロナ禍によるテレワーク(VDT作業)時の姿勢に留意する必要があると考える.
【対象と方法】対象は, 健常女性10名, 平均年齢21.2歳(20-21), 全例利き手右. 既往に上肢運動器障害および中枢神経障害のないものとした. 自覚的肩こりがなく, 全対象者に対し, 研究に対する説明を口頭および文書にて実施し, 研究協力および本学会での報告の同意を得られたものを対象とした.研究に参加の同意を得られたものとした. VDT作業時の良姿勢と不良姿勢は, 良姿勢はFujitsuのパソコン使用時の良姿勢を参考に, 耳垂, 肩峰, 大転子が一直線になる座位で, なおかつ, 先行研究(Suvarnnato T, et al, 2019)に準じ, 良姿勢の頭蓋脊椎角(CV角;第7頸椎に対する水平線と耳珠がなす角)は23°になるように設定し, 不良姿勢は, CV角が55°となるように設定した. 筋硬度は, try-all製のneutoneを使用. N=0.0258×測定値+0.4 によって単位をニュートンに換算した. 測定部位は右僧帽筋上部線維の筋腹中央, 右手関節伸筋群筋腹中央(長橈側手根伸筋および短橈側手根伸筋)とした. 良姿勢の僧帽筋および手関節伸筋の筋硬度を100%とし, 不良姿勢直後(即時の評価のため)の各々の筋硬度の変化率を算出し, t検定にて比較し, 有意水準は5%未満とした.
【結果】筋硬度は各々, 良姿勢時の僧帽筋上部線維は1.44±0.58N, 手関節伸筋群は1.70±0.54N,不良姿勢時(良姿勢から不良姿勢に変化した直後)の僧帽筋上部線維は1.73±0.45N, 手関節伸筋群は1.83±0.57Nで, 変化率にすると, 良姿勢の僧帽筋100%に対して不良姿勢では173±45%, 手関節伸筋群は100%から183±53%へと即時的な上昇を認め, 僧帽筋および手関節伸筋群の筋硬度は,良姿勢と不良姿勢の間に有意差を認めた(p<0.01).
【考察】本研究結果より, 僧帽筋上部線維と手関節伸筋群は, 良姿勢から不良姿勢へと変化した直後から筋硬度が変化したことを認めた. 本研究結果は即時的な変化のため, 長時間の変化についての検証が必要であるが, 不良姿勢がVDT作業時の手関節伸筋群への負荷を高める可能性が示唆された. コロナ禍によるテレワーク(VDT作業)時の姿勢に留意する必要があると考える.