[OD-5-4] 口述発表:運動器疾患 5疼痛に基づく基準変更デザインによる肩関節周囲炎改善効果
【背景】肩関節周囲炎は肩関節の疼痛や拘縮を呈し,日常生活動作に影響を与えることが広く知られている.肩関節周囲炎患者に対する作業療法では,物理療法を含めた様々な介入方法を段階的に実施することが多い.しかし,介入方法の変更は経験主義的な判断により決定されることも多く,介入の段階づけをどのような基準で変更することが有効なのかについては明らかではない.
【目的】肩関節の疼痛と関節可動域制限を併発した症例について,疼痛に基づく基準変更デザインによる物理療法や運動療法の段階付けの有効性を明らかにすることを目的とした.
【対象】対象は40歳代の右肩関節周囲炎患者1名とした.X-4月から右肩関節の疼痛を自覚.X月,疼痛が増悪し,夜間時痛も認めたため,作業療法が開始となった.なお,発表に際し,本人の同意を得ている.
【方法】研究デザインには,基準変更デザインを用いた.作業療法は,週1回の頻度で外来にて実施した.介入方法の選択は,Visual Analog Scale (VAS)を用いて評価した安静時痛を基準とし,直前に用いた介入方法のVASの平均値よりも低値となるように次の介入方法を選択した.介入方法は,ベースライン期はアイシング,ストレッチ,介入期(1)はホットパック,ストレッチ,介入期(2)はTENS,ストレッチ,介入期(3)はTENS,ストレッチ,筋力トレーニングを実施した.また,効果指標は,他動肩関節屈曲,下垂位外旋可動域,運動時痛(VAS)とし,作業療法実施時に毎回測定した.なお,主観的評価であるShoulder 36(V.1.3)をベースライン終了時,最終評価時に測定した.
【結果】各介入方法における安静時痛のVAS(平均値)は,ベースライン期34mm,介入期(1)12mm,介入期(2)9mm,介入期(3)0.2mmであり,段階的に減少した.最終評価時の肩関節の関節可動域は,ベースライン終了時の屈曲85度から105度,外旋30度から55度へと増加した.運動時痛は,ベースライン終了時のVAS4.8mmから最終評価時3.0mmへと減少した.Shoulder 36は疼痛1.0から2.8,可動域1.0から2.8,筋力0から2.3,健康感2.5から3.7,日常生活動作1.7から3.6,スポーツ能力2から3へと全ての項目で改善した.介入方法ごとの関節可動域と運動時痛の推移は,ベースライン期では屈曲105度から85度,外旋45度から30度へと減少し,VASは 48mmから48mmと変化がなかった.介入期(1)では屈曲85度から90度,外旋40度から25度へと屈曲は増加,外旋は減少し,VASは43mmから49mmへと増加した.介入期(2)では屈曲90度から110度,外旋40度から45度といずれも増加し,VAS 62mmから48mmへ運動時痛も改善した.介入期(3) では屈曲105度から105度,外旋50度から55度へと屈曲は変化しなかったが,外旋は増加した.VASは15mmから30mmへ増加した.
【考察】今回,安静時痛に基づく基準変更デザインを用い,物理療法と運動療法の介入方法を変更することによって関節可動域や運動時痛も徐々に改善を認めたと考えられる.先行研究では病期に即した治療方針が重要とされる.このことから,肩関節周囲炎患者の作業療法において安静時痛を基準とした物理療法と運動療法の段階付けは作業療法介入の一助となる可能性がある.
【目的】肩関節の疼痛と関節可動域制限を併発した症例について,疼痛に基づく基準変更デザインによる物理療法や運動療法の段階付けの有効性を明らかにすることを目的とした.
【対象】対象は40歳代の右肩関節周囲炎患者1名とした.X-4月から右肩関節の疼痛を自覚.X月,疼痛が増悪し,夜間時痛も認めたため,作業療法が開始となった.なお,発表に際し,本人の同意を得ている.
【方法】研究デザインには,基準変更デザインを用いた.作業療法は,週1回の頻度で外来にて実施した.介入方法の選択は,Visual Analog Scale (VAS)を用いて評価した安静時痛を基準とし,直前に用いた介入方法のVASの平均値よりも低値となるように次の介入方法を選択した.介入方法は,ベースライン期はアイシング,ストレッチ,介入期(1)はホットパック,ストレッチ,介入期(2)はTENS,ストレッチ,介入期(3)はTENS,ストレッチ,筋力トレーニングを実施した.また,効果指標は,他動肩関節屈曲,下垂位外旋可動域,運動時痛(VAS)とし,作業療法実施時に毎回測定した.なお,主観的評価であるShoulder 36(V.1.3)をベースライン終了時,最終評価時に測定した.
【結果】各介入方法における安静時痛のVAS(平均値)は,ベースライン期34mm,介入期(1)12mm,介入期(2)9mm,介入期(3)0.2mmであり,段階的に減少した.最終評価時の肩関節の関節可動域は,ベースライン終了時の屈曲85度から105度,外旋30度から55度へと増加した.運動時痛は,ベースライン終了時のVAS4.8mmから最終評価時3.0mmへと減少した.Shoulder 36は疼痛1.0から2.8,可動域1.0から2.8,筋力0から2.3,健康感2.5から3.7,日常生活動作1.7から3.6,スポーツ能力2から3へと全ての項目で改善した.介入方法ごとの関節可動域と運動時痛の推移は,ベースライン期では屈曲105度から85度,外旋45度から30度へと減少し,VASは 48mmから48mmと変化がなかった.介入期(1)では屈曲85度から90度,外旋40度から25度へと屈曲は増加,外旋は減少し,VASは43mmから49mmへと増加した.介入期(2)では屈曲90度から110度,外旋40度から45度といずれも増加し,VAS 62mmから48mmへ運動時痛も改善した.介入期(3) では屈曲105度から105度,外旋50度から55度へと屈曲は変化しなかったが,外旋は増加した.VASは15mmから30mmへ増加した.
【考察】今回,安静時痛に基づく基準変更デザインを用い,物理療法と運動療法の介入方法を変更することによって関節可動域や運動時痛も徐々に改善を認めたと考えられる.先行研究では病期に即した治療方針が重要とされる.このことから,肩関節周囲炎患者の作業療法において安静時痛を基準とした物理療法と運動療法の段階付けは作業療法介入の一助となる可能性がある.