[OE-3-4] 口述発表:神経難病 3パーキンソン病患者の身体活動とその日内変動は非運動症状によって異なるか?
【はじめに】パーキンソン病(PD)患者への作業療法支援は,診断を受けた早期から日常生活の中で身体活動を高めることが役割の一つである(Foster et al, 2021).病初期の段階では,運動症状よりも一見して捉えにくい非運動症状がPD患者の生活の質に影響を与える.また,非運動症状の日内変動(Non-Motor Fluctuations; NMF)が存在することが明らかとなり,非運動症状の種類や時間帯によって症状の出現程度が異なることが特徴である.PD患者の身体活動促進のためには,関連するNMFを把握しながら時間帯と生活パターンを考慮し,支援計画を立案する必要がある.しかし,非運動症状が身体活動の時系列的特徴と関連しているかは定かでない.
【目的】第一にPD患者の身体活動と非運動症状の有無の関連を明らかにすること,第二に関連する非運動症状と身体活動の日内変動パターン(時間帯)による連動を探ることである.
【方法】研究デザインは一施設による横断研究である.PDの診断はMovement Disorder Society(MDS)の臨床診断基準を用いた.取込基準はmodified Hoehn and Yahr (mHY) stage 1-3度,Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)21/30点以上,歩行が自立している者とした.非運動症状の評価は,スクリーニングツールであるMDS-UPDRS Part Iを使用した.13の小項目からなり0(正常)~4(重症)の採点基準であり,症状の有無を各項目ごとに(0:正常,1~4:非運動症状有)に分類した.身体活動は,腰部装着型の3軸加速度計(Active style Pro HJA-750C:オムロン社製)を用いて,睡眠,入浴時などを除き装着するよう指示した.採用データは変動抽出に最適とされる「歩数」とし7日間,7時から22時までのうち,加速度計を1日10時間以上,少なくとも3日間装着していた場合,記録は有効であると判断した.統計学的解析はPD患者の運動習慣の有無をカットオフ値4,200歩/日(Handlery et al, 2021)を基準とした従属変数,MDS-UPDRS Part Iの各小項目の二値変数を独立変数とするロジスティック回帰分析を実施し,共変量は年齢,性別,mHYとした.さらに関連のあった小項目をtwo-way repeated analysis of covariance (ANCOVA)を用い,一日の時間帯別の継時的特徴と連動しているかを明らかにするために非運動症状の有無と時間帯(朝(7時~12時),昼(12時~17時),夜(17時~22時))の間の交互作用,効果量partialη2を示した.本研究は筆頭発表者の所属機関で承認された研究プロトコルに従った.
【結果】計45名のPD患者が本研究に参加した.基準値4,200歩/日を満たさなかった者は23名であった.ロジスティック回帰分析の結果,痛みとその他の異常感覚(OR=8.36,95%CI= 1.59 - 43.94),疲労(OR= 14.26, 95%CI= 1.85 - 109.90)が歩数の少なさと関連していた.ANCOVAによる時間帯別の交互作用は,痛みとその他の異常感覚(p=0.20,ES=0.36),疲労(p=0.08,ES=0.38)でともに認められなかったが,痛みと異常感覚がある対象は朝の時間帯,疲労がある対象は朝,昼の日中の時間帯に一貫して低値で有意差を認めた.
【考察】早朝に運動症状が悪化するearly morning offは,疲労や異常感覚など併発することもあるため,朝方の活動は総じて低い傾向を示したと推察される.疲労は,日中は一貫して活動量が低い傾向であったが,PD患者が行う活動の種類,強度など活動内容に依存する変動や,活動内容等に関係なく一定の時間帯に疲労を示すものまで存在するため,一括りにできない点もある.今後これらを層別化した上で,NMFと身体活動の連動を確認していくことが,生活場面に基づいたPD患者の作業療法支援の一助に繋がると考える.
【目的】第一にPD患者の身体活動と非運動症状の有無の関連を明らかにすること,第二に関連する非運動症状と身体活動の日内変動パターン(時間帯)による連動を探ることである.
【方法】研究デザインは一施設による横断研究である.PDの診断はMovement Disorder Society(MDS)の臨床診断基準を用いた.取込基準はmodified Hoehn and Yahr (mHY) stage 1-3度,Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)21/30点以上,歩行が自立している者とした.非運動症状の評価は,スクリーニングツールであるMDS-UPDRS Part Iを使用した.13の小項目からなり0(正常)~4(重症)の採点基準であり,症状の有無を各項目ごとに(0:正常,1~4:非運動症状有)に分類した.身体活動は,腰部装着型の3軸加速度計(Active style Pro HJA-750C:オムロン社製)を用いて,睡眠,入浴時などを除き装着するよう指示した.採用データは変動抽出に最適とされる「歩数」とし7日間,7時から22時までのうち,加速度計を1日10時間以上,少なくとも3日間装着していた場合,記録は有効であると判断した.統計学的解析はPD患者の運動習慣の有無をカットオフ値4,200歩/日(Handlery et al, 2021)を基準とした従属変数,MDS-UPDRS Part Iの各小項目の二値変数を独立変数とするロジスティック回帰分析を実施し,共変量は年齢,性別,mHYとした.さらに関連のあった小項目をtwo-way repeated analysis of covariance (ANCOVA)を用い,一日の時間帯別の継時的特徴と連動しているかを明らかにするために非運動症状の有無と時間帯(朝(7時~12時),昼(12時~17時),夜(17時~22時))の間の交互作用,効果量partialη2を示した.本研究は筆頭発表者の所属機関で承認された研究プロトコルに従った.
【結果】計45名のPD患者が本研究に参加した.基準値4,200歩/日を満たさなかった者は23名であった.ロジスティック回帰分析の結果,痛みとその他の異常感覚(OR=8.36,95%CI= 1.59 - 43.94),疲労(OR= 14.26, 95%CI= 1.85 - 109.90)が歩数の少なさと関連していた.ANCOVAによる時間帯別の交互作用は,痛みとその他の異常感覚(p=0.20,ES=0.36),疲労(p=0.08,ES=0.38)でともに認められなかったが,痛みと異常感覚がある対象は朝の時間帯,疲労がある対象は朝,昼の日中の時間帯に一貫して低値で有意差を認めた.
【考察】早朝に運動症状が悪化するearly morning offは,疲労や異常感覚など併発することもあるため,朝方の活動は総じて低い傾向を示したと推察される.疲労は,日中は一貫して活動量が低い傾向であったが,PD患者が行う活動の種類,強度など活動内容に依存する変動や,活動内容等に関係なく一定の時間帯に疲労を示すものまで存在するため,一括りにできない点もある.今後これらを層別化した上で,NMFと身体活動の連動を確認していくことが,生活場面に基づいたPD患者の作業療法支援の一助に繋がると考える.