[OJ-4-3] 口述発表:高齢期 4興味のある作業活動の探索から,継続的な離床へと繋がった一例
【報告の目的】
離床拒否はリハビリテーション(以下,リハ)を行う上で阻害的な要因であり,心身機能の低下に繋がる.離床を促すことは,健康な生活を送る点からも重要である.今回本人の興味のある作業を探索し,作業療法場面で得られた情報を多職種と共有することで離床へと繋がった一例を報告する.
【事例紹介】
70代前半の女性(以下,Aさん)3年程前より家に引き籠りがちとなっていた.今回自宅内のトイレで体動困難となり加療後に施設入所となった.既往歴は2型糖尿病,高血圧であった.自宅で伝い歩きは出来ていたが,家事は夫が全て行い,食事と夫との会話が主な生活行為であり多くは寝て過ごしていた.家族構成は夫と息子と3人で暮らしであった.家族は在宅復帰に対し,本人の自立度が低く介護困難と考えるため消極的であった.本報告に際して家族に説明し,書面にて同意を得た.
【作業療法評価】
機能的自立度評価法(以下FIM)は30点(運動17点,認知13点)であった.食事以外の日常生活動作に介助を要していた.簡単な理解は可能であったが,表出は単語レベルであった.失禁してもナースコールの要請や助けを呼ぶことはなかった.Vitality Index(以下,VI)は1点であり,顕著な意欲低下を認めた.リハや離床に強い拒否を示し終日ベッド臥床であり,話かけにも応じない時があった.
【介入の基本方針】
問題点として,離床拒否がありベッド臥床が続いていた.在宅復帰は未定ではあるが全体の方針として,まず離床ができ,施設生活に適応出来ることであった.作業療法の介入では能動的な活動が増えていくことを目標に,本人の興味のある作業の探索から関ることとした.
【介入経過】
介入当初,制作活動の提案や会話を試みるも,離床を拒む状況が続いた.介入から3か月後にAさんのアルバム写真を見ながら会話を実施した.Aさんは花が好きであり,夫と花をよく見に行った事を笑顔で話した.その後の介入から花の話題で会話が可能となり,スタッフに声掛けの共有を実施した.1週間後には花の観察に誘うと拒否なく離床を行える事が多くなった.介入から5か月後には,花の水やり等の作業に従事し作業の広がりを見せ始めた.またスタッフと笑顔で交流する場面も見られることが多くなった.
【結果】
FIMは38点(運動20点,認知18点)となり,運動面は大きな変化はなかったが,認知面に改善が見られた.表出は文章レベルで行えるようになった.リハ内でAさんから作業療法士に困り事を相談することが時折みられ,促すと拒否なく離床ができ,他スタッフと笑顔で交流する場面が増えた.VIは4点に向上し,声掛けに笑顔で反応でき,尿や便が出たことを伝えることができ,リハは促せば参加できるようになった.
【考察】
離床拒否のあるAさんに対して,興味のある作業を探索し介入した結果,継続的な離床が可能となった.作業療法士とともに作業に対する肯定的な経験を共有した結果,Aさんの離床する事への解釈の変化が生じたことが推察される.また作業療法場面で得た情報を関るスタッフと共有することにより,関わるスタッフのAさんへの接し方が変化し,Aさんが安心して離床できる環境になったことも考えられる.興味のある作業の探索,多職種との情報共有は離床拒否の解決へと繋がることが示唆された.
離床拒否はリハビリテーション(以下,リハ)を行う上で阻害的な要因であり,心身機能の低下に繋がる.離床を促すことは,健康な生活を送る点からも重要である.今回本人の興味のある作業を探索し,作業療法場面で得られた情報を多職種と共有することで離床へと繋がった一例を報告する.
【事例紹介】
70代前半の女性(以下,Aさん)3年程前より家に引き籠りがちとなっていた.今回自宅内のトイレで体動困難となり加療後に施設入所となった.既往歴は2型糖尿病,高血圧であった.自宅で伝い歩きは出来ていたが,家事は夫が全て行い,食事と夫との会話が主な生活行為であり多くは寝て過ごしていた.家族構成は夫と息子と3人で暮らしであった.家族は在宅復帰に対し,本人の自立度が低く介護困難と考えるため消極的であった.本報告に際して家族に説明し,書面にて同意を得た.
【作業療法評価】
機能的自立度評価法(以下FIM)は30点(運動17点,認知13点)であった.食事以外の日常生活動作に介助を要していた.簡単な理解は可能であったが,表出は単語レベルであった.失禁してもナースコールの要請や助けを呼ぶことはなかった.Vitality Index(以下,VI)は1点であり,顕著な意欲低下を認めた.リハや離床に強い拒否を示し終日ベッド臥床であり,話かけにも応じない時があった.
【介入の基本方針】
問題点として,離床拒否がありベッド臥床が続いていた.在宅復帰は未定ではあるが全体の方針として,まず離床ができ,施設生活に適応出来ることであった.作業療法の介入では能動的な活動が増えていくことを目標に,本人の興味のある作業の探索から関ることとした.
【介入経過】
介入当初,制作活動の提案や会話を試みるも,離床を拒む状況が続いた.介入から3か月後にAさんのアルバム写真を見ながら会話を実施した.Aさんは花が好きであり,夫と花をよく見に行った事を笑顔で話した.その後の介入から花の話題で会話が可能となり,スタッフに声掛けの共有を実施した.1週間後には花の観察に誘うと拒否なく離床を行える事が多くなった.介入から5か月後には,花の水やり等の作業に従事し作業の広がりを見せ始めた.またスタッフと笑顔で交流する場面も見られることが多くなった.
【結果】
FIMは38点(運動20点,認知18点)となり,運動面は大きな変化はなかったが,認知面に改善が見られた.表出は文章レベルで行えるようになった.リハ内でAさんから作業療法士に困り事を相談することが時折みられ,促すと拒否なく離床ができ,他スタッフと笑顔で交流する場面が増えた.VIは4点に向上し,声掛けに笑顔で反応でき,尿や便が出たことを伝えることができ,リハは促せば参加できるようになった.
【考察】
離床拒否のあるAさんに対して,興味のある作業を探索し介入した結果,継続的な離床が可能となった.作業療法士とともに作業に対する肯定的な経験を共有した結果,Aさんの離床する事への解釈の変化が生じたことが推察される.また作業療法場面で得た情報を関るスタッフと共有することにより,関わるスタッフのAさんへの接し方が変化し,Aさんが安心して離床できる環境になったことも考えられる.興味のある作業の探索,多職種との情報共有は離床拒否の解決へと繋がることが示唆された.