[OK-3-4] 口述発表:認知障害(高次脳機能障害を含む) 3鍵探し検査(Key Search Test;KST)の認知機能スクリーニング検査としての有効性
【序論】
近年,急速な高齢化に伴い,軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)の早期発見が重要となっている.MCIの鑑別には実行機能検査が有用であるが,検査手順は複雑で高齢者には導入が容易ではない.そこで実行機能検査のうち,導入が容易な鍵探し検査(Key Search Test:KST)に着目した.KSTは鍵を無くしたと仮定した図において,被験者は鍵を探す道筋を描き,道筋のパターン等で採点し,効率的なほど加点される検査である.
【目的】
本研究は認知症が疑われる高齢者において,KSTが認知機能障害のスクリーニングに有用であるか検証し,MCIの早期発見に活用することを目的とした.
【対象】
対象は2018年11月30日から2019年6月30日の間に,物忘れ外来を受診した65~90歳までの高齢者52名である.対象は画像診断と神経心理学検査の結果に欠損がなく,医師によるMCIと認知症の診断がなされた者とした.
【方法】
すべての対象にKST,Mini Mental State Examination-Japanese(MMSE-J),Trail Making Test(TMT),Clock Drawing Test(CDT),Frontal Assessment Battery(FAB),老研式活動能力指標(老研式)および一般情報の問診を実施した.医師の診断に従い,有効回答のあった対象を,MCI群と認知症群に振り分け,分析対象とした.変数はKSTを始めとした各種得点及び,年齢,教育年数,自覚症状を独立変数とし,従属変数は認知症群とMCI群の2群とした.統計学的手法は対応のない2群間の差の比較を行い,SPSS Ver23で解析,有意水準を5%とした.
【倫理的配慮】
本研究は全対象に書面にて説明を行い,文書同意を得ている.また所属施設と研究機関の倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号:18-ifn-067 ).開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【結果】
52名中38名(男性19名,女性19名)から有効な検査データが得られた.内訳はMCI群18名,認知症群20名であった.各種検査の結果は,認知症群よりもMCI群が高得点で,MMSE-J(P<0.001),老研式(P<0.001),FAB(P<0.001),CDT(P=0.006),TMT-A(P=0.01)といずれも有意差を認めた.KSTは素点・既存のパターン・すべての場所を網羅しようとする試み・鍵の発見・実施時間の項目でMCI群が有意に高得点であった(すべてp<0.001).
【考察】
MCI群は軽度の低下を認め,認知症群は中等度の認知症が疑われる群であり.関連研究と比較し,両群の認知機能に開きがあったことが差の要因と考えられた.またKSTはMCIと認知症の鑑別に妥当性の高いMMSE-JやFABと同等に有意差を認め,スクリーニング検査として有用な可能性が考えられた. MCIと認知症の鑑別には,計画性の検査が必要となる(Espinosa,2009).計画性の要素を含むKSTは中等度認知症とMCIの鑑別に活用できる可能性がある.KSTの採点項目別の比較では,探索範囲や所要時間等に差を認めた.KSTは推定能力に加え,計画性や効果的な行動の要素を含む検査とされる(用稲,2009).行動の特徴として,MCIでは推定した解は非効率で計画性が乏しく,認知症では適切な解を推定できず,単純な行動に至る傾向にあった.以上の結果から,KSTはMCIの非効率的な行動を示す検査であり,認知症が疑われる高齢者におけるMCIの早期発見に活用できる可能性がある.
近年,急速な高齢化に伴い,軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)の早期発見が重要となっている.MCIの鑑別には実行機能検査が有用であるが,検査手順は複雑で高齢者には導入が容易ではない.そこで実行機能検査のうち,導入が容易な鍵探し検査(Key Search Test:KST)に着目した.KSTは鍵を無くしたと仮定した図において,被験者は鍵を探す道筋を描き,道筋のパターン等で採点し,効率的なほど加点される検査である.
【目的】
本研究は認知症が疑われる高齢者において,KSTが認知機能障害のスクリーニングに有用であるか検証し,MCIの早期発見に活用することを目的とした.
【対象】
対象は2018年11月30日から2019年6月30日の間に,物忘れ外来を受診した65~90歳までの高齢者52名である.対象は画像診断と神経心理学検査の結果に欠損がなく,医師によるMCIと認知症の診断がなされた者とした.
【方法】
すべての対象にKST,Mini Mental State Examination-Japanese(MMSE-J),Trail Making Test(TMT),Clock Drawing Test(CDT),Frontal Assessment Battery(FAB),老研式活動能力指標(老研式)および一般情報の問診を実施した.医師の診断に従い,有効回答のあった対象を,MCI群と認知症群に振り分け,分析対象とした.変数はKSTを始めとした各種得点及び,年齢,教育年数,自覚症状を独立変数とし,従属変数は認知症群とMCI群の2群とした.統計学的手法は対応のない2群間の差の比較を行い,SPSS Ver23で解析,有意水準を5%とした.
【倫理的配慮】
本研究は全対象に書面にて説明を行い,文書同意を得ている.また所属施設と研究機関の倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号:18-ifn-067 ).開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【結果】
52名中38名(男性19名,女性19名)から有効な検査データが得られた.内訳はMCI群18名,認知症群20名であった.各種検査の結果は,認知症群よりもMCI群が高得点で,MMSE-J(P<0.001),老研式(P<0.001),FAB(P<0.001),CDT(P=0.006),TMT-A(P=0.01)といずれも有意差を認めた.KSTは素点・既存のパターン・すべての場所を網羅しようとする試み・鍵の発見・実施時間の項目でMCI群が有意に高得点であった(すべてp<0.001).
【考察】
MCI群は軽度の低下を認め,認知症群は中等度の認知症が疑われる群であり.関連研究と比較し,両群の認知機能に開きがあったことが差の要因と考えられた.またKSTはMCIと認知症の鑑別に妥当性の高いMMSE-JやFABと同等に有意差を認め,スクリーニング検査として有用な可能性が考えられた. MCIと認知症の鑑別には,計画性の検査が必要となる(Espinosa,2009).計画性の要素を含むKSTは中等度認知症とMCIの鑑別に活用できる可能性がある.KSTの採点項目別の比較では,探索範囲や所要時間等に差を認めた.KSTは推定能力に加え,計画性や効果的な行動の要素を含む検査とされる(用稲,2009).行動の特徴として,MCIでは推定した解は非効率で計画性が乏しく,認知症では適切な解を推定できず,単純な行動に至る傾向にあった.以上の結果から,KSTはMCIの非効率的な行動を示す検査であり,認知症が疑われる高齢者におけるMCIの早期発見に活用できる可能性がある.