[PA-9-4] ポスター:脳血管疾患等 9脳血管障害片麻痺者に対するオンラインでのスピリチュアリティ評価の試み
【はじめに】 脳血管障害は急性発症により命を奪う可能性のある疾患として,より早期からスピリチュアリティを含む全人的側面の評価が繰り返し必要であるとされている.(Steiglederら2019)しかし,これまで脳血管障害者のスピリチュアリティ評価の系統的方法については明らかにされていない.今回,脳血管障害者1例に対して,オンラインでのスピリチュアリティ変容の評価を試みたので,考察を加えて報告する.なお本研究は所属機関の研究倫理審査を受け実施した.
【対象】 対象は脳梗塞後左片麻痺の40代男性Aである.本評価の約2か月前に発症し,B病院で1か月の保存的加療後に,さらなるリハビリテーション目的でC病院転院となった.
【方法】
1.オンラインでのスピリチュアリティ評価. 本評価は,通常の作業療法時間以外の時間に,病棟の面会室をオンライン会議システムで接続した環境で実施した.コンピューターの接続以外は,対象者が単独で答えるものとしてプライバシーに配慮した.なお本研究に対する説明と同意は書面で行った.2.評価手段. 評価にはStroke Impact Scale version 3.0日本語版(越智光宏ら2017,以下,SIS3.0)を用いた.本来は自己記入式であるが,表情や言動の観察するため,オンラインでの面接評価とした.問診の最後に「あなたが現在感じているさまざまの健康への影響」を加え,対象者の主観的情報を補った.評価中の表情変化はフェイススケールで捉え,言動記録はその内容の分析した.
【結果】
1.SIS3.0の結果. 評価は転院後1週の時期に実施した.所要時間は約45分を要した. SIS3.0の身体領域の評点は100%換算で,Strength(麻痺側の力)が25%,ADL/IADL(典型的な1 日の活動)が63%,Mobilityは46%,Hand functionは20%であった.それ以外の領域では,Memory(記憶や思考)が85%,Emotion (気分変化と感情コントロール)が75%,Communicationが88%,Social participationは20%であった.Recovery(脳血管障害からの回復)について,100を「完全な回復である」,0を「まったく回復していない」とした場合,「10」と回答した.2.表情や言動の観察. 表情はフェイススケールの<数字>を記録した.評価のはじめは緊張した表情<10>であった.SIS3.0の身体領域の項目では<11>から<15>と表情の暗さが目立つようになった.「Emotion」では「悲しいとき」があり「自分には先に楽しみが何もない」「非常に不安に感じる」の設問で「時々あった」と答え,「自分は他の人の重荷になっている」が「常にあった」とスピリチュアリティの変容を述べた.表情も<16><18>と変化した.さらにSocial participationでは全設問で「制限は常にあった」と述べ,表情は<18>のまま続いていた.最後の主観的情報の確認では,「このまま,左手足が動くようになるか」「前の趣味ができるか,」「家族へ前と同じようにできるか」「家族には前と負担がかかっていないか」など回答し,表情が<18>が続いたが,「これからのことを考えたい」と述べた後で,徐々に<10>へと回復した.
【考察】 SIS3.0は脳血管障害者の治療効果判定として15分程度の自己記入の方法として使用されている.今回の調査では,構造化された問診の一つとして使用を試みた.この結果,3倍程度の時間を要した一方で,回答中の表情や言動変化によりスピリチュアリティの変容が捉えられた.これは対話を通じた面接であり,面接者が遠隔な環境にあったことで対象者の自己内省が進んだ可能性があると考えられた.今後,さらに対象者を増やし,脳血管障害者のスピリチュアリティ評価の系統的方法について深めていきたい.
【対象】 対象は脳梗塞後左片麻痺の40代男性Aである.本評価の約2か月前に発症し,B病院で1か月の保存的加療後に,さらなるリハビリテーション目的でC病院転院となった.
【方法】
1.オンラインでのスピリチュアリティ評価. 本評価は,通常の作業療法時間以外の時間に,病棟の面会室をオンライン会議システムで接続した環境で実施した.コンピューターの接続以外は,対象者が単独で答えるものとしてプライバシーに配慮した.なお本研究に対する説明と同意は書面で行った.2.評価手段. 評価にはStroke Impact Scale version 3.0日本語版(越智光宏ら2017,以下,SIS3.0)を用いた.本来は自己記入式であるが,表情や言動の観察するため,オンラインでの面接評価とした.問診の最後に「あなたが現在感じているさまざまの健康への影響」を加え,対象者の主観的情報を補った.評価中の表情変化はフェイススケールで捉え,言動記録はその内容の分析した.
【結果】
1.SIS3.0の結果. 評価は転院後1週の時期に実施した.所要時間は約45分を要した. SIS3.0の身体領域の評点は100%換算で,Strength(麻痺側の力)が25%,ADL/IADL(典型的な1 日の活動)が63%,Mobilityは46%,Hand functionは20%であった.それ以外の領域では,Memory(記憶や思考)が85%,Emotion (気分変化と感情コントロール)が75%,Communicationが88%,Social participationは20%であった.Recovery(脳血管障害からの回復)について,100を「完全な回復である」,0を「まったく回復していない」とした場合,「10」と回答した.2.表情や言動の観察. 表情はフェイススケールの<数字>を記録した.評価のはじめは緊張した表情<10>であった.SIS3.0の身体領域の項目では<11>から<15>と表情の暗さが目立つようになった.「Emotion」では「悲しいとき」があり「自分には先に楽しみが何もない」「非常に不安に感じる」の設問で「時々あった」と答え,「自分は他の人の重荷になっている」が「常にあった」とスピリチュアリティの変容を述べた.表情も<16><18>と変化した.さらにSocial participationでは全設問で「制限は常にあった」と述べ,表情は<18>のまま続いていた.最後の主観的情報の確認では,「このまま,左手足が動くようになるか」「前の趣味ができるか,」「家族へ前と同じようにできるか」「家族には前と負担がかかっていないか」など回答し,表情が<18>が続いたが,「これからのことを考えたい」と述べた後で,徐々に<10>へと回復した.
【考察】 SIS3.0は脳血管障害者の治療効果判定として15分程度の自己記入の方法として使用されている.今回の調査では,構造化された問診の一つとして使用を試みた.この結果,3倍程度の時間を要した一方で,回答中の表情や言動変化によりスピリチュアリティの変容が捉えられた.これは対話を通じた面接であり,面接者が遠隔な環境にあったことで対象者の自己内省が進んだ可能性があると考えられた.今後,さらに対象者を増やし,脳血管障害者のスピリチュアリティ評価の系統的方法について深めていきたい.