[PG-1-3] ポスター:内科疾患 1全身性強皮症のQOL低下と関係する障害像
筋力低下を含めた臨床所見の再考
【はじめに】
全身性強皮症(SSc)では各種臨床症状より機能障害をきたしQOLが損なわれる.我々は,皮膚硬化による手指のROM制限や間質性肺炎(ILD)による呼吸機能障害に対するリハビリテーションを実践し,QOL低下につながる臨床所見について報告した.患者の中には経過中に筋力低下を認め,ADL低下に至ることも経験する.今回SScの筋力を評価し,臨床所見との関連性を改めて調査し,SScのQOLに影響を及ぼす障害像,臨床所見について明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】
2019年3月より2021年12月に外来または入院で診療したSSc患者 68例を対象とした.平均年齢は64.1±14.5歳,平均罹病期間は9.8±9.5年であった.病型分類ではびまん皮膚硬化型(dcSSc)が40例,限局皮膚硬化型(lcSSc)が28例であった.
QOL評価として,EQ-5D-5LとHAQを測定した.筋力評価として徒手筋力計(アニマ社製ミュータスF1)により膝伸展最大筋力を測定した.また同時期の体組成計(Inbody570)による骨格筋量,筋肉量(SLM),骨格筋量指数(SMI)も測定した.QOLと検討した臨床所見は,最大筋力,骨格筋量, SLM, SMI,罹病期間,病型分類,皮膚硬化の程度を示すMRSS,臨床所見として,ILD,肺高血圧症,皮膚潰瘍,手指拘縮,腎クリーゼ,逆流性食道炎,偽イレウスの有無,%VC,%DLcoとした.統計解析は, QOL評価と罹病期間,最大筋力,骨格筋量, SLM,SMI,罹病期間,MRSS,%VC,%DLcoはピアソンの相関,病型分類,臨床症状の有無については関連のないt検定を行ったうえで重回帰分析を行った.有意水準は0.05とした. 研究は大学の倫理委員会の承認(No. 2397)を得た.
【結果】
対象者の臨床所見は,最大筋力は年齢性別に応じた平均値(最大-最小)の右102.0%(181.9-49.7)101.6%(170.9-47.9),MRSSの平均は11.2点,ILDは41例,肺高血圧症は7例,皮膚潰瘍17例,腎クリーゼ7例,逆流性食道炎44例,偽イレウス12例であった.2変量の解析による各々のQOLと臨床所見の関連性を示す.EQ-5D-5Lのindex scoreでは, %DLcoのみ有意な相関がみられた.HAQでは,%VC,%DLco,最大筋力,SLM,骨格筋量で有意な相関がみられた.ステップワイズ法による重回帰分析による検討では,HAQと臨床所見においては,R2が0.33,最大筋力の低下(p=0.0002)のみがQOLを低下させる要因として示された.
【考察】
SScの臨床所見は,皮膚硬化や皮膚潰瘍,ILD,肺高血圧症,腎クリーゼなど多彩である.今回評価した筋症状については,報告はあるが,早期に筋力低下のためADL低下におよぶ症例は経験しない.しかし経過とともに臨床症状の悪化に伴いみられ,場合によってはADL低下の一因となっている.今回の結果からも筋力低下が機能障害,QOLの悪化に影響を与える因子であることが示された.QOLについては,我々の先行研究において%DLcoをはじめとした呼吸機能の関与を示したが,対象者の違いがあるものの,筋力の関与の大きさが明確となった.
SScの最大筋力は平均値で健常者の100%はあったものの,低下した症例では50%未満まで低下していた.また手指機能障害や呼吸機能障害が多いdcSScよりlcSScで低下していたことが示された.これまでの SScの治療対象はdcSScが多いと考えていたが,筋力低下を伴った場合はlcSScにも注意が必要であることが示唆された.
全身性強皮症(SSc)では各種臨床症状より機能障害をきたしQOLが損なわれる.我々は,皮膚硬化による手指のROM制限や間質性肺炎(ILD)による呼吸機能障害に対するリハビリテーションを実践し,QOL低下につながる臨床所見について報告した.患者の中には経過中に筋力低下を認め,ADL低下に至ることも経験する.今回SScの筋力を評価し,臨床所見との関連性を改めて調査し,SScのQOLに影響を及ぼす障害像,臨床所見について明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】
2019年3月より2021年12月に外来または入院で診療したSSc患者 68例を対象とした.平均年齢は64.1±14.5歳,平均罹病期間は9.8±9.5年であった.病型分類ではびまん皮膚硬化型(dcSSc)が40例,限局皮膚硬化型(lcSSc)が28例であった.
QOL評価として,EQ-5D-5LとHAQを測定した.筋力評価として徒手筋力計(アニマ社製ミュータスF1)により膝伸展最大筋力を測定した.また同時期の体組成計(Inbody570)による骨格筋量,筋肉量(SLM),骨格筋量指数(SMI)も測定した.QOLと検討した臨床所見は,最大筋力,骨格筋量, SLM, SMI,罹病期間,病型分類,皮膚硬化の程度を示すMRSS,臨床所見として,ILD,肺高血圧症,皮膚潰瘍,手指拘縮,腎クリーゼ,逆流性食道炎,偽イレウスの有無,%VC,%DLcoとした.統計解析は, QOL評価と罹病期間,最大筋力,骨格筋量, SLM,SMI,罹病期間,MRSS,%VC,%DLcoはピアソンの相関,病型分類,臨床症状の有無については関連のないt検定を行ったうえで重回帰分析を行った.有意水準は0.05とした. 研究は大学の倫理委員会の承認(No. 2397)を得た.
【結果】
対象者の臨床所見は,最大筋力は年齢性別に応じた平均値(最大-最小)の右102.0%(181.9-49.7)101.6%(170.9-47.9),MRSSの平均は11.2点,ILDは41例,肺高血圧症は7例,皮膚潰瘍17例,腎クリーゼ7例,逆流性食道炎44例,偽イレウス12例であった.2変量の解析による各々のQOLと臨床所見の関連性を示す.EQ-5D-5Lのindex scoreでは, %DLcoのみ有意な相関がみられた.HAQでは,%VC,%DLco,最大筋力,SLM,骨格筋量で有意な相関がみられた.ステップワイズ法による重回帰分析による検討では,HAQと臨床所見においては,R2が0.33,最大筋力の低下(p=0.0002)のみがQOLを低下させる要因として示された.
【考察】
SScの臨床所見は,皮膚硬化や皮膚潰瘍,ILD,肺高血圧症,腎クリーゼなど多彩である.今回評価した筋症状については,報告はあるが,早期に筋力低下のためADL低下におよぶ症例は経験しない.しかし経過とともに臨床症状の悪化に伴いみられ,場合によってはADL低下の一因となっている.今回の結果からも筋力低下が機能障害,QOLの悪化に影響を与える因子であることが示された.QOLについては,我々の先行研究において%DLcoをはじめとした呼吸機能の関与を示したが,対象者の違いがあるものの,筋力の関与の大きさが明確となった.
SScの最大筋力は平均値で健常者の100%はあったものの,低下した症例では50%未満まで低下していた.また手指機能障害や呼吸機能障害が多いdcSScよりlcSScで低下していたことが示された.これまでの SScの治療対象はdcSScが多いと考えていたが,筋力低下を伴った場合はlcSScにも注意が必要であることが示唆された.