第56回日本作業療法学会

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ポスター

精神障害

[PH-9] ポスター:精神障害 9

Sat. Sep 17, 2022 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PH-9-3] ポスター:精神障害 9精神科救急病棟における作業療法に関連する文献レビュー

前嶋 洋平1 (1茨城県立こころの医療センター)

背景:近年,精神科領域では精神科救急入院料認可施設が増加している.一般社団法人日本精神科救急学会の調べでは2011年に全国で92件だった精神科救急入院料認可施設が2021年には全国で171件となっており10年間で,約1.85倍の施設が精神科救急入院料認可を得ている.また,日本作業療法士協会の統計によれば精神科領域で働いている作業療法士(以下OTR)は主に精神科病院で勤務している.このことを考慮すると必然的にOTRも精神科救急入院料認可病棟(以下,精神科救急病棟)に入院している急性期の患者に対する作業療法を実施する機会も今後は多くなっていくと予測される.筆者の所属機関でも精神科救急病棟での作業療法を実施し,主に個別作業療法を実施しているが現状は手探りの状態での作業療法実施である.
目的:本研究目的は精神科救急病棟においてOTRがどのようなかかわりを行っているか関連する研究を調査し現状を明らかにすることである.その結果から精神科救急病棟におけるOTRの実践や役割を整理考察し今後の展望を考察することである.
研究対象:研究対象は精神科救急病棟における急性期の患者を対象とした研究.
調査方法:医中誌webにて最新5年分の事例研究で原著論文を検索.検索ワードは,「精神」・「急性期」・「作業療法」・「統合失調症」でand検索を行う.その結果の中から筆者がOTRでありかつ事例研究を抽出する.結果を介入方法,介入時期,介入結果で分析をする.
結果:2021/12/16に医中誌webにて検索すると直近5年間における事例研究の原著論文は8件であった.その中で著者がOTRである研究は4件であった.4件とも介入方法には個別作業療法がメインであった.個別作業療法の内容としては,入院患者の興味のある活動の実施,メタ認知トレーニング,ストレッチなどであった.介入開始時期は,すべての研究で入院10日~3週間後といった時期にOTRが評価や作業療法のスタートを行っていた.介入結果は,措置入院から自宅退院,集団OTへの参加頻度向上,結論への飛躍の修正,疾病と服薬に関する意識の変化,現実感の獲得であった.
考察:抽出された4件の研究では個別作業療法を実施しており,精神科救急病棟での作業療法では個別作業療法の必要性をOTRは感じていると推察される.個別作業療法では入院患者の興味やリラックスできることを中心に行っており,OTRは,リラックスできるような治療空間の提供や環境づくりに貢献していると考えられる.また,入院患者本人の興味のあることを介入のきっかけとすることで治療への動機づけにもつながっているものと考えられる.介入開始時期が入院10日から3週間であったことに関しては,精神科救急病棟において入院早期からの作業療法の必要性を精神科救急病棟のスタッフやOTRが感じていることが推察される.さらに,早期の作業療法実施によりその後の治療へスムーズに移行し早期退院につながると考えられる.しかし,抽出された研究が4件だったことに関しては,精神科救急病棟で必要とされている個別作業療法を多くの医療機関で実施することが困難な現状を反映しているものと思われる.
今後の展望:精神科救急病棟に携わっているOTRへ調査を行い現在の精神科救急病棟における作業療法の現状を正しく把握する必要性がある.その結果を踏まえ,OTRが精神科救急病棟において個別作業療法を実施しやすい環境を整える必要性がある.それらは,最終的には入院患者の早期退院につながるとものと考えられる.