第56回日本作業療法学会

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[PN-3] ポスター:地域 3

2022年9月16日(金) 14:00 〜 15:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-3-4] ポスター:地域 3「IADL向上教室」における生活行為向上マネジメントを用いた作業療法介入の効果

青木 佳子1松岡 耕史1三沢 幸史1 (1多摩丘陵病院 リハビリテーション技術部 作業療法科)

【序論】
当院では,町田市における地域リハビリテーション支援事業として訪問・通所を組み合わせた短期集中型サービス「IADL向上教室」や通いの場「町トレ」,介護予防・自立支援のための地域ケア会議「いいケア」,また介護予防・フレイル予防推進員など幅広く総合事業に参画している.今回,「IADL向上教室」において症例を通し生活行為向上マネジメント(以下MTDLP)を活用した介入効果について検討することを目的とした.本症例には発表に関して同意を得ている.
【症例】
70歳代女性,パーキンソン病を呈する夫と二人暮らし.近隣の娘様は協力的.ADLは自立,夫の介護や家事全般も自立.コロナ感染拡大に伴い社会参加が制限され,周囲との関わりや社会貢献活動が実施できず,夫の介護生活のみとなった.心身ともに疲弊し,地域包括支援センターに相談,総合事業対象者として選定されIADL向上教室が開始となった.
【方法】
IADL向上教室とはOTの訪問,週1回全12回の運動プログラム(90分)を実施する通所を組み合わせた介護予防事業である.本症例はOTが事業開始時,中間,最終で3回訪問を行い,MTDLPを用いて合意目標の設定を行った.また事業終了1年後,CMと自宅訪問にて聞き取り調査,WHO QOL26を実施した.
【経過結果】
初回訪問:症例は時折,夫の介護について涙ぐむ場面もあり,先の見えない介護の負担感や膝痛により何をやっても自信が持てないとの発言が聞かれた.基本チェックリスト(以下KCL)13点,MTDLPにて生活行為の聞き取りを行い,余暇活動への想いから映画鑑賞や手工芸・詩吟の再開を図るため目標を①坂道が楽に歩ける.(映画鑑賞に行く)②詩吟などの自主グループに参加すると設定した.①実行度5,満足度2,②実行度1,満足度1.合意目標の共有,CMへケアプラン作成の助言,事業所には運動内容の提案,疼痛管理への助言,また自宅での自主訓練における実施度を可視化するよう環境調整の指導を行った.
中間訪問:運動機能の改善・膝痛の軽減により,階段昇降がスムーズになり,坂道での動作安定・スピード向上がみられた.OTは客観的評価を伝え,改善について自己認識するよう介入した.初回時より笑顔が増え,夫の介護にも前向きな発言が聞かれた.
最終訪問:表情も明るく,家事などに自信が持てたと発言が聞かれ,自ら詩吟教室へ行くこともできた.KCL3点,目標①実行度9,満足度8,②実行度8,満足度8.
1年後:夫の介護が続けてできているとの発言も聞かれ,笑顔も多く,得意の料理を教えてくれる様子や手工芸教室を支援者側で参加することへも前向きに話されていた.事業時の目標①実行度,満足度ともに7,②はコロナの影響により実行度は3,満足度は7.KCL3点,QOL26:全体3.5点,身体的領域3.71点,心理的領域3.5点,社会的関係3.67点,環境3.5点,QOL平均値3.57点.
【考察】
本症例はコロナ禍により他者交流が制限され,先の見えない介護の負担や膝痛により,活動意欲の低下や自信喪失を認めた.IADL向上教室においてMTDLPを活用し,その人の大切にしている作業の抽出,環境調整,習慣化に焦点を当てた介入により事業終了時には介護や家事を役割と捉え,また自ら趣味活動を再開することができた.また事業終了1年後でWHO QOL26にて健常高齢者同年代の全項目がQOL平均値よりやや高値を示したことは,主体的な作業経験により役割を継続できたことで自己効力感が向上し,QOLの維持に関与したと考える.