[PJ-9-4] 作業療法の早期・多様な視点による介入の必要性
【はじめに】作業療法(OT)は,医学・身体・心理・生活等の様々な領域の知識と視点から,生活支援への提案・実践が可能である.今回,このような介入により独居に至った症例を提示し,作業療法士(OTR)の介入への課題を検討した.尚,報告について家族に説明し同意を得ている.
【症例】女性,80歳代.X年アルツハイマー型認知症と診断され,イレウス,尿失禁あり服薬管理や家事困難もあったが,通所や家族の援助で独居生活をしていた.X+10年S状結腸癌のためA病院にて切除術,翌日理学療法(PT)実施,その翌日(Y)転倒し第1腰椎圧迫骨折で安静,Y+6日硬性コルセット装着(3-4ヵ月予定)介助にて離床開始された.その後周術期管理終了となったが,腰背部痛,基本動作・馬蹄式歩行器歩行要監視,移乗介助,食事は低残渣食,排泄は尿便失禁・トイレ介助,更衣・清潔も介助を要し独居困難であった.そのためY+14日当院転院となりPT開始したが,認知症(改訂長谷川式簡易知能評価スケール11点)やADL等の生活への相談がありY+18日OTも開始となった.
【経過】
<独居への課題>食事:食形態と配食サービスの検討,排泄:入院前レベル,自宅環境に合わせた移動,床からの起立(ベッド設置不可),コルセット着脱等の腰部負担管理,通所可能なレベルの離床活動時間・生活リズム確保が考えられた.そこでこれらに共通し,特に排泄に必要な尿便意キャッチへの覚醒水準・姿勢の改善のため離床活動を促そうとしたが,腰痛のため坐位・立位が持続せず臥床で過ごし失禁が続いた.また,歩行器歩行は可能だが,移乗やつたい歩きは支持面減のため腰痛を訴え,コルセットの自己着脱・基本動作困難や装着期間からも腰部負担軽減が必要であった.
<課題の説明>医師が経皮的椎体形成術(PVP)を提案したが,家族は前医で保存治療・歩行器歩行可能=改善と理解しており懐疑的であった.そこで医師がPVPの詳細,OTRが独居生活への課題及びアプローチと腰痛の関連を説明し,家族の希望と本人の同意でY+29日に施行,コルセットも軟性となった.
<排泄・生活リズム改善>PVP後トイレ移乗時の腰痛は軽減したが,1日5-6回の泥状便(ブリストル便性状スケール6)によりシーツ汚染や後始末の困難さがあった.そこで便性状の調整を相談し服薬調整後有形便となり,さらにフリー歩行可能や離床活動時間の延長可能となり自ら尿便意を訴えトイレでの排泄が可能となった.
<自宅生活と腰部負担回避を想定した立位・歩行活動獲得>PTでの歩行・段差・階段に加え,様々な活動の想定と安定化のため,段差・活動に応じた姿勢や変換(屈み・重心移動・方向転換・床からの起立),二重課題や物持ち歩行等の活動を実施した.
<環境・援助への検討>概ね入院前と同様となり独居へとなったが,環境調整・援助は以前と同様ではなく加齢・認知症による変化の考慮を要することと,自宅訪問による環境と症例の活動場面を確認し提案した.多職種・家族と検討を重ねY+90日退院となった.
【考察】常時,様々な領域の視点から把握し最善策を検討・準備し,時機に合わせて提案・実施した.これは当然であるが,今回は転院後の状況や提案に懐疑的な家族への対応・転院後のOT介入・今後を予測した生活への提案等のためは,より明確化して提示する必要があった.早期からOT・生活の視点で介入されていれば,円滑になされたのではないか.当院ではこれまでもOT未介入・中止された症例に遭遇し,その一部をOT介入の有用性とともに報告してきた.未だにこのような課題があること・OTR自身が生活支援を含む様々な役割とそれに必要な知識・視点・スキルを再認識する必要がある.そして各々の現場に未介入や対応不十分等がないか確認し,適正に介入できる体制や多職種との連携に努める必要がある.
【症例】女性,80歳代.X年アルツハイマー型認知症と診断され,イレウス,尿失禁あり服薬管理や家事困難もあったが,通所や家族の援助で独居生活をしていた.X+10年S状結腸癌のためA病院にて切除術,翌日理学療法(PT)実施,その翌日(Y)転倒し第1腰椎圧迫骨折で安静,Y+6日硬性コルセット装着(3-4ヵ月予定)介助にて離床開始された.その後周術期管理終了となったが,腰背部痛,基本動作・馬蹄式歩行器歩行要監視,移乗介助,食事は低残渣食,排泄は尿便失禁・トイレ介助,更衣・清潔も介助を要し独居困難であった.そのためY+14日当院転院となりPT開始したが,認知症(改訂長谷川式簡易知能評価スケール11点)やADL等の生活への相談がありY+18日OTも開始となった.
【経過】
<独居への課題>食事:食形態と配食サービスの検討,排泄:入院前レベル,自宅環境に合わせた移動,床からの起立(ベッド設置不可),コルセット着脱等の腰部負担管理,通所可能なレベルの離床活動時間・生活リズム確保が考えられた.そこでこれらに共通し,特に排泄に必要な尿便意キャッチへの覚醒水準・姿勢の改善のため離床活動を促そうとしたが,腰痛のため坐位・立位が持続せず臥床で過ごし失禁が続いた.また,歩行器歩行は可能だが,移乗やつたい歩きは支持面減のため腰痛を訴え,コルセットの自己着脱・基本動作困難や装着期間からも腰部負担軽減が必要であった.
<課題の説明>医師が経皮的椎体形成術(PVP)を提案したが,家族は前医で保存治療・歩行器歩行可能=改善と理解しており懐疑的であった.そこで医師がPVPの詳細,OTRが独居生活への課題及びアプローチと腰痛の関連を説明し,家族の希望と本人の同意でY+29日に施行,コルセットも軟性となった.
<排泄・生活リズム改善>PVP後トイレ移乗時の腰痛は軽減したが,1日5-6回の泥状便(ブリストル便性状スケール6)によりシーツ汚染や後始末の困難さがあった.そこで便性状の調整を相談し服薬調整後有形便となり,さらにフリー歩行可能や離床活動時間の延長可能となり自ら尿便意を訴えトイレでの排泄が可能となった.
<自宅生活と腰部負担回避を想定した立位・歩行活動獲得>PTでの歩行・段差・階段に加え,様々な活動の想定と安定化のため,段差・活動に応じた姿勢や変換(屈み・重心移動・方向転換・床からの起立),二重課題や物持ち歩行等の活動を実施した.
<環境・援助への検討>概ね入院前と同様となり独居へとなったが,環境調整・援助は以前と同様ではなく加齢・認知症による変化の考慮を要することと,自宅訪問による環境と症例の活動場面を確認し提案した.多職種・家族と検討を重ねY+90日退院となった.
【考察】常時,様々な領域の視点から把握し最善策を検討・準備し,時機に合わせて提案・実施した.これは当然であるが,今回は転院後の状況や提案に懐疑的な家族への対応・転院後のOT介入・今後を予測した生活への提案等のためは,より明確化して提示する必要があった.早期からOT・生活の視点で介入されていれば,円滑になされたのではないか.当院ではこれまでもOT未介入・中止された症例に遭遇し,その一部をOT介入の有用性とともに報告してきた.未だにこのような課題があること・OTR自身が生活支援を含む様々な役割とそれに必要な知識・視点・スキルを再認識する必要がある.そして各々の現場に未介入や対応不十分等がないか確認し,適正に介入できる体制や多職種との連携に努める必要がある.