[PK-11-2] 色カルタを用いた集団活動中に見られる参加者同士の交流の特徴
【はじめに】色カルタは認知症高齢者向けに開発されたアクティビティで,色にまつわる話題を通して自己を表現しながら他者との会話を楽しむものである.筆者は色カルタを用いた集団活動の実践を通して,セッションを重ねるごとに参加者同士の交流が促進される様子を目の当たりにしてきた.交流の特徴について検討した我々の予備的研究では,〔参加者が自ら他の参加者に対してアクションを起こす〕,〔リーダーと参加者が話している会話に他の参加者が参加する〕,〔リーダーが参加者間の会話を中継する〕の〔3つの局面〕と<10の会話の特徴>が見出されている.しかし,この結果は1グループの3名を検討したものに過ぎず,結果の一般化は困難である.そこで,対象グループを増やし参加者同士の交流の特徴について検討した.
【目的】複数グループの観察を通して,色カルタを用いた集団活動中に見られる参加者同士の交流の特徴を明らかにする.
【方法】関東近郊の回復期リハビリテーション病棟に入院中の認知機能の低下を認めた65歳以上の高齢者16名(5グループ)を対象に,色カルタを用いた集団活動を毎週2セッション4週間実施した.1グループの参加人数は3~5名,1セッションの実施時間は30~40分程度とした.実施中の様子を撮影し,録画記録より参加者同士の会話が見られる場面を抽出し会話分析を行った.本研究における会話とは,参加者間で言語的・非言語的なやり取りが2回以上継続した場面と操作定義した.本研究は所属機関の倫理委員会の承認を得ている(承認番号:2021-206).またJSPS科研費(JP15K08811, 21K20191)の助成を受けて行った.
【結果】全8セッションのうち,初期・中期・後期に該当するセッションをそれぞれ便宜的に選択して分析した.その結果,参加者同士の会話シーンは,初期74,中期152,後期187の計413シーン抽出された.そこから参加者同士の交流の特徴として,〔5つの局面〕と<32の会話の特徴>が見出された.各局面における(前期-中期-後期 合計のシーン数)および<会話の特徴数>は,〔参加者が特定の他の参加に向けてアクションを起こす〕が(30-73-112 計215シーン)<9の会話の特徴>,〔参加者が不特定者に向けたアクションに反応する〕が(10-35-25 計70シーン)<7の会話の特徴>,〔参加者が他者の会話に参加する〕が(21-27-40 計88シーン)<8の会話の特徴>,〔スタッフが橋渡しの役割を担う〕が(9-16-10 計35シーン)<5の会話の特徴>,〔会話以外の交流〕が(4-1-0 計5シーン)<3の会話の特徴>であった.
【考察】参加者同士の交流は,〔参加者が特定の他の参加に向けてアクションを起こす〕,〔参加者が他者の会話に参加する〕という参加者が他者に働きかける能動的な側面と〔参加者が不特定者に向けたアクションに反応する〕,〔スタッフが橋渡しの役割を担う〕という他者から働きかけられる受動的な側面があった.両者の経時的変化に注目すると,前者に該当するシーンはセッションを重ねるごとに増加する一方,後者に該当するシーンは初期から中期で増加し中期から後期にて減少していた.このことから,集団活動の初期から中期には受動的な交流が展開されやすく,中期から後期にかけて能動的な交流へ移行する可能性が示唆された.また,後期は<同意を求める>,<同意を示すことで会話に参加する>など,共存的な交流や同調的な交流が増えた.これらのことから,能動的な交流への移行には,なじみの人間関係や共存関係の形成など参加者同士の関係性の変化が関与したと考える.
【目的】複数グループの観察を通して,色カルタを用いた集団活動中に見られる参加者同士の交流の特徴を明らかにする.
【方法】関東近郊の回復期リハビリテーション病棟に入院中の認知機能の低下を認めた65歳以上の高齢者16名(5グループ)を対象に,色カルタを用いた集団活動を毎週2セッション4週間実施した.1グループの参加人数は3~5名,1セッションの実施時間は30~40分程度とした.実施中の様子を撮影し,録画記録より参加者同士の会話が見られる場面を抽出し会話分析を行った.本研究における会話とは,参加者間で言語的・非言語的なやり取りが2回以上継続した場面と操作定義した.本研究は所属機関の倫理委員会の承認を得ている(承認番号:2021-206).またJSPS科研費(JP15K08811, 21K20191)の助成を受けて行った.
【結果】全8セッションのうち,初期・中期・後期に該当するセッションをそれぞれ便宜的に選択して分析した.その結果,参加者同士の会話シーンは,初期74,中期152,後期187の計413シーン抽出された.そこから参加者同士の交流の特徴として,〔5つの局面〕と<32の会話の特徴>が見出された.各局面における(前期-中期-後期 合計のシーン数)および<会話の特徴数>は,〔参加者が特定の他の参加に向けてアクションを起こす〕が(30-73-112 計215シーン)<9の会話の特徴>,〔参加者が不特定者に向けたアクションに反応する〕が(10-35-25 計70シーン)<7の会話の特徴>,〔参加者が他者の会話に参加する〕が(21-27-40 計88シーン)<8の会話の特徴>,〔スタッフが橋渡しの役割を担う〕が(9-16-10 計35シーン)<5の会話の特徴>,〔会話以外の交流〕が(4-1-0 計5シーン)<3の会話の特徴>であった.
【考察】参加者同士の交流は,〔参加者が特定の他の参加に向けてアクションを起こす〕,〔参加者が他者の会話に参加する〕という参加者が他者に働きかける能動的な側面と〔参加者が不特定者に向けたアクションに反応する〕,〔スタッフが橋渡しの役割を担う〕という他者から働きかけられる受動的な側面があった.両者の経時的変化に注目すると,前者に該当するシーンはセッションを重ねるごとに増加する一方,後者に該当するシーンは初期から中期で増加し中期から後期にて減少していた.このことから,集団活動の初期から中期には受動的な交流が展開されやすく,中期から後期にかけて能動的な交流へ移行する可能性が示唆された.また,後期は<同意を求める>,<同意を示すことで会話に参加する>など,共存的な交流や同調的な交流が増えた.これらのことから,能動的な交流への移行には,なじみの人間関係や共存関係の形成など参加者同士の関係性の変化が関与したと考える.