第57回日本作業療法学会

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ポスター

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[PN-3] ポスター:地域 3

2023年11月10日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (展示棟)

[PN-3-7] 学童保育コンサルテーション事業における,作業療法士のキャリアアップ時の不安とその対策に関する質的研究

藤原 裕登1, 片岡 紗弓2, 小林 隆司3 (1.津山中央病院リハビリテーション部, 2.一般社団法人 Lyckatill, 3.岡山医療専門職大学)

【序論】佐野ら(作業療法38:2019)の研究では,作業療法士(以下,OT)の放課後児童保育育成事業(以下,学童保育)へのコンサルテーション(以下,コンサル)は,放課後児童支援員(以下,支援員)個々とクラブ全体への効果の相互作用が支援員のスキルアップの構造につながることを述べている.また,森川ら(小児保健研究80:2021)の研究においても,作業療法士と支援員の連携には一定の効果があることが述べられている. 2016年から岡山県で始まったOTの学童保育コンサルは2022年で6年を迎え,様々な効果が示されている中で後進の育成も重要視する必要があると考える.当事業では,小児・学童期の作業療法が未経験のOTも受け入れるために,主導的に支援員と関わるOT(以下,指導OT)と今後,指導OTへとキャリアアップをするために帯同し研鑽を積むOT(以下,育成OT)というシステムを構築し後進育成を行っている.
【目的】今年度3名の育成OTが指導OTとしてOTコンサルを行うにあたり不安の聞き取りを行う機会があったため,その内容を分析することで後進育成のシステムを検討する一助となることを目的とした.
【方法】本研究の実施と発表に際し,当院倫理委員会の承認と参加した者には内容を説明し同意を得た.開示すべきCOI関係にある企業等はない.指導OTとしてコンサルに行くことになった,3名(男性1名,女性2名)が不安を語り合う場としてオンライン上で集まり,司会として現在指導OTである女性1名にも参加してもらった.語り合いの内容を映像・音声記録してあった50分程度のデータを分析した.不安を焦点化するために半構造化されたインタビューガイドに沿って「不安・心配なこと」,「必要だと感じる力」,「キャリアアップシステムについて」などを尋ねた.データ分析は,音声記録データから逐語録を作成,逐語録をもとに概念を生成し,さらに生成した概念を整理してカテゴリ化を行い,各カテゴリや概念の関連を統合した図を表してストーリー化を行なった.概念生成やストーリー化した図については,質的研究の経験があるものに助言を受け作成した.
【結果】今回の語り合いからは47の概念が抽出され,16の小カテゴリからなる7の大カテゴリからなるキャリアップ時の不安ついてまとめられた.以下に,小カテゴリを〈〉,大カテゴリを[]で示す.育成OTから指導OTへのキャリアアップ時には,〈領域が違う分野での活動〉であり,[過去の指導OTとの比較]や[自身の知識不足の痛感]から不安が生じていた.そのため,〈事前のサポート体制の構築〉といった[育成OTから指導OTへの緩やかな段階]をキャリアアップ時に必要としていた.また,不足している感じた知識では,〈行動観察の技術〉などの[コンサル時のノウハウ]や〈支援員への伝え方〉などの[コンサル時の振る舞い],〈発達領域の知識〉を含む[専門性の高い知識]が抽出された.さらに〈キャリアアップの不安からの産物〉として[今後の育成システムへの展望]が抽出された.
【考察】学童保育コンサルに参加するOTのキャリアアップには,指導OTとのコンサルへの帯同を通じて,専門的な知識だけでなく支援員との関わり方や訪問時の人的・物的環境としての振る舞いについても学ぶ必要があると考えられた.継続した学童保育との関わりの中で指導OTとしてコンサルを行い,地域生活の場で支援員個人の成熟した知識とOTの専門性を活かすためには,OTのキャリアアップの構造を都度見直し,不安と感じている点について柔軟に補完できるようなシステムの構築を今後も検討していく必要があると考えられた.