第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

教育

[PR-5] ポスター:教育 5

2023年11月10日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (展示棟)

[PR-5-4] 早期臨床体験の効果

嘉納 綾 (神戸総合医療専門学校)

【はじめに】K専門学校ではCOVID-19の影響で中止となるまで,1年次前期より2年次後期まで近隣の障害者施設や老人保健施設にグループに分かれて参加する早期臨床体験(以下,体験実習)を行っていた.学生は半期で1人2回,2年間で合計8回参加し,実習後には自分の行動を担任と一緒に振り返っていた.今回,2019年度まで学生に実施していたアンケートの自由記載を分析することで,体験実習での学生の成長および体験実習を再開するにあたっての留意点について若干の知見が得られたので報告する.
【方法】2012年度~2018年度K専門学校作業療法士科入学生209名のうち,2年間アンケート調査に継続参加した152名(男性58名,女性94名,平均年齢20.4±5.02歳)を対象とした.学生には研究の目的と方法,参加は任意であり拒否しても不利益がないこと,個人情報を守ることを口頭および書面で説明し,同意を得ている.アンケート調査は1年次7月,1年次12月,2年次7月,2年次12月の4回実施し,自分で成長したと思う点を自由記載で回答してもらった.記載内容について,意味を成す文として理解できるものを区切りラベル化し,ラベルの記述から意味の類似性により集約してカテゴリに分類した.
【結果】自由記載から,1年次7月は240ラベル,1年次12月は220ラベル,2年次7月は161ラベル,2年次12月は184ラベルが得られた.ラベルを集約した結果,aコミュニケーション,b関わり方,c対象者の理解,d記録・報告,e自己認識の5つのカテゴリに分けることができた.
1年次7月はa:39.2%,b:17.9%,c:18.8%,d:2.5%,e:21.7%であった.1年次12月はa:35.9%,b:10.5%,c:27.7%,d:0%,e:25.9%であった.2年次7月はa:22.4%,b:11.2%,c:49.7%,d:3.1%,e:13.7%であった.2年次12月はa:29.4%,b:10.3%,c:36.4%,d:2.7%,e:21.2%であった.
【考察】aコミュニケーションが向上したと感じている学生は,全ての時期で多かった.自由記載で多い意見より,1年次7月に初対面の人とコミュニケーションがとれるようになり,1年次12月には自分から積極的に話しかけ,2年次7月では会話を広げられるようになり,2年次12月には会話から情報を得られるようになったことがわかった.また,e自己認識でも,1年次7月には初めての場所や人に対する緊張が減り,1年次12月で心にゆとりをもてるようになって人と話すことが好きになり,2年次12月にはコミュニケーションをとることを楽しめるようになっている.このような変化は,2年間継続して実習を行ったことから生じただけでなく,担任による振り返り支援を通し「自分の行動の悪いところに気が付いた」「次の実習で同じ失敗を繰り返さないよう努力した」ことも影響していると思われる.次の実習で自分の課題を改善するためには期間が空きすぎないことも重要であり,半期で2回実施の頻度がよかったと考えられる.
1年次7月に,「施設にいる人も普通の人と分かった」「障害者と意識しすぎることがなくなった」等の意見があり,障害者を特別視していたことがうかがえる.学生の偏見をなくすためには,入学後すぐに体験実習をおこなうことが効果的と考えられる.
d記録・報告についての記述は,ほとんどなかった.臨床実習で学生が実習記録を書けないと指摘されることもあるため,今後,体験実習で記録の仕方についても学習できるよう,指導方法を検討する必要がある.