第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-6] ポスター:教育 6

Fri. Nov 10, 2023 5:00 PM - 6:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PR-6-3] 作業に焦点を当てた業療法実践自己効力感に影響する情報源に関する研究

青山 克実1, 石橋 裕2, 山田 孝3,4,5 (1.九州栄養福祉大学リハビリテーション学部作業療法学科, 2.東京都立大学大学院 人間健康科学研究科作業療法科学域, 3.東京保健医療専門職大学リハビリテーション学部作業療法学科, 4.一般社団法人日本人間作業モデル研究所, 5.東京都立大学名誉教授)

【はじめに】筆者らは,作業に焦点を当てた作業療法実践自己効力感尺度(以下,SES-OFP)を開発中である.SES-OFPは,作業に焦点を当てた評価10項目,意味のある作業を支援する11項目,成果を示す10項目で構成される.Bandura(1977)は,自己効力感は遂行行動の達成,代理的体験,言語的説得,情動的喚起の情報源にて向上するとしている.本研究の目的は,作業に焦点を当てた作業療法実践(以下,OFP)に対する自己効力感を高める可能性がある情報源を,臨床実習を経験した作業療法学生を対象に探索することである.本研究は,筆者所属機関の研究倫理委員会の承認を得た(承認No:2202号).また, COI関係にある企業等はない.【対象】評価実習を経験後,はじめて総合臨床実習を経験するA大学作業法学科4年次学生37名とした.対象者には本研究の主旨と倫理的配慮について説明し同意を得た.【方法】①臨床実習前後にSES-OFPへの回答を求めた.②実習前後SES-OFP(総合)の変化量上位1/4に相当する対象者に自己効力感に影響したと思われる体験についてフォーカスグループインタビュー(FGI)を実施し質的研究の手続きに従い概念化した.前後比較はSPSS27にてWilcoxon符号付順位検定を用いた.FGIの質問項目は,自己効力感が向上したことに影響したと考えられる,(1) うまくできたり成功できたこと,(2)実習中に見たり聞いたりする中で「自分でもできそうだ」という体験,(3)臨床実習指導者などからのフィードバックや声掛け,(4)情動的な変化の体験とした.インタビューは対象者の許可を得て録音後,逐語録を作成した.逐語録から質問の回答に該当するセンテンスを抽出しラベルを生成し,カテゴライズした.【結果】①SES-OFPの実習前後の結果[実習前中央値-実習後中央値,前後比較p値,効果量]は,作業に焦点を当てた評価[4.41-5.55,.007,.51],意味のある作業を支援する[4.15-5.20,.023,.43],成果を示す[3.85-5.05,.005,.54],総合[4.31-5.26,.006,.52]であった.SES-OFPが向上した四分位75%以上に相当する者は7名であった.②FGIは6名が参加した.生成されたカテゴリー[サブカテゴリー(ラベル数)]は,行動の達成[クライエント(以下,Cl)との関係構築(12),心身機能の評価(11),Clの変化や手ごたえ(11),作業への焦点化(9),活動・参加の評価(2),リーズニング(2),評価(2),構成的評価(1) ,知識の活用(1)],安心・承認のメッセージ"[承認と賞賛(13),フィードバック(3),サポート(3),Clからのお礼(3),助言(2)] ,他者行動の観察と気づき声掛け(5),[異なる実践の体験(4),気づきやイメージ(4)],喚起された情動[安心感(8),実習当初の不安(7),楽しさ(6),芽生えたClへの思い(5),嬉しさ(3),終了時のさみしさ(3),自信(2),経験したいことへの希望(1),焦り(1)],実習環境[指導者と部署スタッフ(10),担当Cl(8),評価場面(4),他の学生(3),介入場面(2),スタッフ間の仲のよさ(1),はじめての領域(1),慣れ(1)]であった.【考察】臨床実習を通してOFPの自己効力感を高める情報源として5つのカテゴリーが生成された.指導者やスタッフ,他学生を含めた環境での,Clに対する評価やリーズニング,介入によるClの変化などの行動の達成,フィードバックを通した助言や承認,声かけなどの安心・承認のメッセージ"が自己効力感を高める情報源だと考えた.また,他学生やOTRの実践の見聞きする中での気づきやイメージは代理的体験の一部に相当し,自己効力感の高まりに影響していたと考えた.以上の体験を通した嬉しさや安心感,芽生えたClへの思いなどの喚起された情動も自己効力感の向上に影響する情報源と考えた.