第58回日本作業療法学会

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ポスター

脳血管疾患等

[PA-8] ポスター:脳血管疾患等 8

Sun. Nov 10, 2024 9:30 AM - 10:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PA-8-3] 脳卒中患者に就労移行支援のためのチェックリストに基づく連携にて復職に至った事例

石川 恵美子1, 林 慎也2, 友野 有希1, 松本 有生志1 (1.医療法人社団博慈会 青葉さわい病院, 2.アール・クラ横浜)

【はじめに】
回復期リハビリテーション病棟(以下,リハ病棟)では,日常生活動作の改善と在宅復帰が重要となる.作業療法士は,就労を目標とする脳卒中患者に対して,日常生活動作の改善と在宅復帰だけでなく,就労支援が求められる.しかし,就労支援には多職種連携が不可欠である.先行研究は,脳卒中患者に就労移行支援のためのチェックリストを活用した単一職種による報告であり,連携の報告はない.今回,脳卒中患者に障害者職業総合センター推奨の就労移行支援チェックリスト(以下,就労チェックリスト)を活用し,リハビリテーション専門職間で連携した結果,復職に至ったため以下に報告する.
【事例紹介】
電気配線の会社経営者であり,独居の50代男性.心原性脳塞栓症の発症から28日後にリハ病棟に転院.報告について,事例より書面にて同意を得ている.
【初回評価】
Brunstrom Stage(以下,BRS)は2-4-4,Fugl Meyer Assessment上肢運動項目(以下,FMA)は38/66点であった.認知機能面に問題はなかった.Frontal Assessment Battery(以下,FAB)13/18点,Behavioural Inattention Test (以下,BIT)は通常検査120/146点,行動検査50/81点であった.就労チェックリストは,金銭管理・買い物ができない,自分の障害や症状をあまり理解していない,介助者が働いているため援助をあまり求めることができないことが課題であった.「早めに復職したい」と希望があり,「困っていることはない」と発言があった.経営者の業務であるパソコンで見積書を作成すると,行の読み飛ばし・読み間違い・段ずれなど視覚性注意障害のエラーがあり,集中して作業できる時間は5分程度であった.給与計算はできる状態ではなかった.
【介入】
就労チェックリストの結果をもとに,Physical Therapy(以下,PT),Occupational Therapy(以下,OT),Speech Therapy(以下,ST)が話し合い,分担して介入した.
金銭管理・買い物ができない点は,STが会計訓練を,PTが買い物訓練を行った.
自分の障害や症状をあまり理解していない点は,3職種から繰り返し説明し,障害の理解に努めた.介助者が働いているため援助をあまり求めることができない点は,相談員とOTがケアマネジャーとの調整を行い,ヘルパー導入など環境調整を行った.さらに,経営者として見積書や給与計算をパソコンで作業するため,OTがパソコンを使用して介入した.
【結果】
初回評価から4ヶ月後,BRSは4-5-5,FMAは48/66点であった. FABは15/18点,BITの通常検査は125/140点,行動検査は70/81点であった.見積書は,エラーがほぼ消失し30分集中することが可能となった.給与計算は,従業員5人分の支給を行い,初回は1/5件,2回目はミスなく配分できた.事務作業が可能となり,経営者として復職することができた.
【考察】
先行研究は,リハ病棟で働く専門職の8割以上が他職種や対象者など意見や価値観の違いが生じ,その3割は効果的な対処ができず支援の質の低下に繋がると報告している.職種間連携を促進する要因は,「就労アセスメント」と言われており,今回,就労チェックリストを活用して課題や支援内容を整理することで,PTOTSTが復職に向けて明確な役割分担ができたことが復職に繋がったと考える.