[PA-9-13] 麻痺手の使用に消極的な脳卒中片麻痺患者が日常生活で再び利き手として使用するまでの取り組み
【はじめに】脳卒中片麻痺症例の上肢に対しAid for Decision-making in Occupation Choice for Hand(以下ADOC-H)を用いた目標共有と介入の結果,麻痺手の利き手としての再獲得と症例の行動変容に繋がったため報告する.本発表に関し症例の同意を得た.
【症例紹介】60代男性.右利き.左放線冠脳出血で44病日目に当院回復期入院,同日作業療法開始.病前は独居で店員の仕事をしていた.
【初期評価】BRSは右上肢Ⅲ手指Ⅳ下肢Ⅲ,感覚は深部覚軽度鈍麻.握力5.5㎏,MFS12点と麻痺手は使用困難であった.高次脳機能面はHDS-R23点,TMTpartA89秒,B350秒,BIT129点と注意障害を認め状況判断や危険予測に乏しかった.FIM46点(運動24点認知22点)とADL全般に介助を要した.本人希望は「身の周りのことができる」.
【介入経過】第1期(44~104病日):麻痺手の機能向上とADL改善のため神経筋電気刺激療法,課題指向型訓練,バランス訓練,ADL訓練を中心に実施した.第2期(105~129病 日):補助手使用可能となったが左手片手動作が定着し「何が困るのですかね」と他人事で「左の方が早い」「失敗したら迷惑がかかる」等の理由で消極的であった.MALはAOU0.78,QOM0.92.第3期(130病日以降):130病日にADOC-Hを用い症例に意味のある作業を聴取し目標共有を図った.最初に選んだ作業は麻痺手で行う「歯磨き」「箸を使う」「髭剃り」「書類に字を書く」で修正CI療法を開始した.OTで1回60分の課題指向型訓練に加え1日午前午後20分以上の自主訓練を進めた.麻痺手の使用状況と満足度を確認するため用紙を作成し自主訓練の実行度と合わせ毎回介入時に聴取し確認した.目標と自主訓練は1週間毎に達成に応じ更新,重点的に取り組んでいる点を他職種にも共有するため目標を紙面にて病室に提示した.経過と共に使用頻度が増え当初は作業の選定に多くの助言を要したが,徐々に症例が装具装着など自ら作業を提案できるようになり「右手を使うことに決めたのですよ」と他職種に明言し麻痺手への意識変化と行動変容がみられた.箸とスプーンを食べ物や時間により使い分けをすることや自主訓練の難易度調整など症例自ら段階付けができるようになり,作業効率へ関心を示したため写真や動画を通し振り返りや工程分析を行った.時に症例は動作の正確さに拘り過ぎ麻痺手の疲労も経験し学習できた.
【最終評価】(164病日目)BRS上肢Ⅵ手指Ⅵ下肢Ⅴ,感覚障害は生活上問題なし.MFS94点,STEF77点,握力14㎏,MALはAOU4.28,QOM4.42と改善し書字,鋏や箸を用いる等利き手再獲得となった. 高次脳機能面はHDS-R30点,TMT98秒,BIT144点に改善した.FIM109点(運動79点認知30点).最終聴取では趣味(映画鑑賞,自伝執筆)の希望が聞かれ関心が広がりをみせた.170病日目に老健退院.自主訓練継続を希望し指導書類と記録を提供した.
【考察】今回の介入はMALの臨床的に意味のある最小評価量を超える改善となった.症例は麻痺手の学習性不使用にあり具体的な使用イメージに乏しかった.ADOC-Hの使用は症例に日常生活で麻痺手をどのように使えるのかと気づきを与えるきっかけとなり,修正CI療法と共に麻痺手をより使いやすくするための行動戦略を立て実行し,結果から再び戦略を考えるというセルフモニタリングの習慣化に繋がった.OTが症例の意識変化に合わせ課題の提示を変え徐々に症例が主体的に計画するよう関わり方を変えたこと,目標達成度が可視化できたこと,他職種からの肯定的フィードバックもあり,症例は利き手として再び使えるという効力感が得られ,最終的に他者の力を必要とせず自分で目標を見出し問題解決を図ることができたと考える.
【症例紹介】60代男性.右利き.左放線冠脳出血で44病日目に当院回復期入院,同日作業療法開始.病前は独居で店員の仕事をしていた.
【初期評価】BRSは右上肢Ⅲ手指Ⅳ下肢Ⅲ,感覚は深部覚軽度鈍麻.握力5.5㎏,MFS12点と麻痺手は使用困難であった.高次脳機能面はHDS-R23点,TMTpartA89秒,B350秒,BIT129点と注意障害を認め状況判断や危険予測に乏しかった.FIM46点(運動24点認知22点)とADL全般に介助を要した.本人希望は「身の周りのことができる」.
【介入経過】第1期(44~104病日):麻痺手の機能向上とADL改善のため神経筋電気刺激療法,課題指向型訓練,バランス訓練,ADL訓練を中心に実施した.第2期(105~129病 日):補助手使用可能となったが左手片手動作が定着し「何が困るのですかね」と他人事で「左の方が早い」「失敗したら迷惑がかかる」等の理由で消極的であった.MALはAOU0.78,QOM0.92.第3期(130病日以降):130病日にADOC-Hを用い症例に意味のある作業を聴取し目標共有を図った.最初に選んだ作業は麻痺手で行う「歯磨き」「箸を使う」「髭剃り」「書類に字を書く」で修正CI療法を開始した.OTで1回60分の課題指向型訓練に加え1日午前午後20分以上の自主訓練を進めた.麻痺手の使用状況と満足度を確認するため用紙を作成し自主訓練の実行度と合わせ毎回介入時に聴取し確認した.目標と自主訓練は1週間毎に達成に応じ更新,重点的に取り組んでいる点を他職種にも共有するため目標を紙面にて病室に提示した.経過と共に使用頻度が増え当初は作業の選定に多くの助言を要したが,徐々に症例が装具装着など自ら作業を提案できるようになり「右手を使うことに決めたのですよ」と他職種に明言し麻痺手への意識変化と行動変容がみられた.箸とスプーンを食べ物や時間により使い分けをすることや自主訓練の難易度調整など症例自ら段階付けができるようになり,作業効率へ関心を示したため写真や動画を通し振り返りや工程分析を行った.時に症例は動作の正確さに拘り過ぎ麻痺手の疲労も経験し学習できた.
【最終評価】(164病日目)BRS上肢Ⅵ手指Ⅵ下肢Ⅴ,感覚障害は生活上問題なし.MFS94点,STEF77点,握力14㎏,MALはAOU4.28,QOM4.42と改善し書字,鋏や箸を用いる等利き手再獲得となった. 高次脳機能面はHDS-R30点,TMT98秒,BIT144点に改善した.FIM109点(運動79点認知30点).最終聴取では趣味(映画鑑賞,自伝執筆)の希望が聞かれ関心が広がりをみせた.170病日目に老健退院.自主訓練継続を希望し指導書類と記録を提供した.
【考察】今回の介入はMALの臨床的に意味のある最小評価量を超える改善となった.症例は麻痺手の学習性不使用にあり具体的な使用イメージに乏しかった.ADOC-Hの使用は症例に日常生活で麻痺手をどのように使えるのかと気づきを与えるきっかけとなり,修正CI療法と共に麻痺手をより使いやすくするための行動戦略を立て実行し,結果から再び戦略を考えるというセルフモニタリングの習慣化に繋がった.OTが症例の意識変化に合わせ課題の提示を変え徐々に症例が主体的に計画するよう関わり方を変えたこと,目標達成度が可視化できたこと,他職種からの肯定的フィードバックもあり,症例は利き手として再び使えるという効力感が得られ,最終的に他者の力を必要とせず自分で目標を見出し問題解決を図ることができたと考える.