[PH-6-2] 活動を用いる支援者“作業療法士”による行動活性化療法を参考にした介入
無為な生活パターンからの脱却
【はじめに】今回,うつ症状の遷延化により無為な生活パターンが定着していた事例に,うつ病治療に効果が示唆されている行動活性化療法を参考に介入を実施したところ,良好な経過が得られたため以下に報告する.本報告に当たり,本人の同意を得ている.
【事例紹介】60代男性.診断名は双極性障害.初発はX-35年頃,A院にて短期間の入院治療を受ける.X-13年,職場でのストレスを機にうつ状態となり同院にて,約1年間の入院治療を受ける.X年Y-4か月に再びうつ状態が悪化し,A院にて入院治療を行うが症状に改善が見られず,退院後,X年Y月に自宅近辺の当院を受診し,同日に入院.
入院時より不安・焦燥感が強く,集団作業療法 (以下,集団OT)への参加や個別作業療法(以下,個別OT)による介入には拒否的であり,病棟内を俯いて歩いている場面や,自室で臥床している姿が多くみられた.
【作業療法評価】Y+11ヶ月,活動量低下による廃用性の機能低下が懸念され,個別OTを開始.事例からは,「何もやる気が起きない.無能になった」等の抑うつ的な訴えが聞かれ,STAI (状態-特性不安検査)では状態不安59,特性不安62であった.作業に関する自己評価2.2版 (以下,OSA)では,自分自身について変えたいと思う項目の1番に「自分が重要だと思うことに基づいて決めている」,2番に「自分の課題に集中する」を選択した.身体的不調には動作の緩慢さや,両肩関節の動作時痛を訴え,「身体もボロボロになった」と語った.病院生活においては,対人交流は少なく,スタッフとの会話も必要最低限の内容であり,集団OTへの参加は月に数回であった.
【介入経過】行動活性化療法は,快活動を行うのではなく目標に向かう活動を用いるとされているため,OSAの結果や事例の語りを基にした活動を用いることとした.
個別OT開始時,事例に,「何かをしたいと思う意欲が湧いてきた時に楽に動けるよう,今は身体を良い状態にしていきましょう」と説明し介入の同意を得た.介入初期,事例が語った生活上にて困難な作業は,①髭剃り②更衣③言葉が出てこないこと,であった.①②は,他動にて肩関節のストレッチを実施し,③に対し,介入中は事例が興味を持っている内容を話題に多くの会話を行った.また,「身体機能向上」,「集団への適応」を目的に,作業療法士(以下,OTR)を含めた小集団での体操を実施した.介入中~後期,事例から語られた,「できるようになりたい事」を基に,同伴での屋外散歩や近隣スーパーでの買い物等,事例の心理的負担に配慮しながら介入を継続した.
【介入結果】介入後より集団OTへの参加回数は週2~3回に増加した.約半年間の介入にて病院生活にも変化が見られ,看護師から,「前より明るくなった」との意見が多く聞かれた.対人交流も増加し,病棟にて他患と麻雀を行う姿も見られた.OSAでは,「自分の課題に集中する」,「他人に自分を表現する」,「他人と上手くやっている」,「自分の好きな活動を行う」の項目にて有能性が1点向上した.
【考察】うつ症状への薬物療法による改善は3カ月程度を目安とすることが多いとされているが,寛解まで数年に至ることもまれではない.しかし,遷延化したうつ症状に対する明確な介入方法は明らかではない.今回,行動活性化療法を参考にした介入が奏功し,事例の生活パターンの変化に繋がったと考えられた.行動活性化療法は,活動を通した成功体験や気分転換,生活習慣の構築など,対象者の支援に活動を用いる作業療法との親和性が高い.本報告は遷延化するうつ症状の改善に対する作業療法介入の一助となると考える.
【事例紹介】60代男性.診断名は双極性障害.初発はX-35年頃,A院にて短期間の入院治療を受ける.X-13年,職場でのストレスを機にうつ状態となり同院にて,約1年間の入院治療を受ける.X年Y-4か月に再びうつ状態が悪化し,A院にて入院治療を行うが症状に改善が見られず,退院後,X年Y月に自宅近辺の当院を受診し,同日に入院.
入院時より不安・焦燥感が強く,集団作業療法 (以下,集団OT)への参加や個別作業療法(以下,個別OT)による介入には拒否的であり,病棟内を俯いて歩いている場面や,自室で臥床している姿が多くみられた.
【作業療法評価】Y+11ヶ月,活動量低下による廃用性の機能低下が懸念され,個別OTを開始.事例からは,「何もやる気が起きない.無能になった」等の抑うつ的な訴えが聞かれ,STAI (状態-特性不安検査)では状態不安59,特性不安62であった.作業に関する自己評価2.2版 (以下,OSA)では,自分自身について変えたいと思う項目の1番に「自分が重要だと思うことに基づいて決めている」,2番に「自分の課題に集中する」を選択した.身体的不調には動作の緩慢さや,両肩関節の動作時痛を訴え,「身体もボロボロになった」と語った.病院生活においては,対人交流は少なく,スタッフとの会話も必要最低限の内容であり,集団OTへの参加は月に数回であった.
【介入経過】行動活性化療法は,快活動を行うのではなく目標に向かう活動を用いるとされているため,OSAの結果や事例の語りを基にした活動を用いることとした.
個別OT開始時,事例に,「何かをしたいと思う意欲が湧いてきた時に楽に動けるよう,今は身体を良い状態にしていきましょう」と説明し介入の同意を得た.介入初期,事例が語った生活上にて困難な作業は,①髭剃り②更衣③言葉が出てこないこと,であった.①②は,他動にて肩関節のストレッチを実施し,③に対し,介入中は事例が興味を持っている内容を話題に多くの会話を行った.また,「身体機能向上」,「集団への適応」を目的に,作業療法士(以下,OTR)を含めた小集団での体操を実施した.介入中~後期,事例から語られた,「できるようになりたい事」を基に,同伴での屋外散歩や近隣スーパーでの買い物等,事例の心理的負担に配慮しながら介入を継続した.
【介入結果】介入後より集団OTへの参加回数は週2~3回に増加した.約半年間の介入にて病院生活にも変化が見られ,看護師から,「前より明るくなった」との意見が多く聞かれた.対人交流も増加し,病棟にて他患と麻雀を行う姿も見られた.OSAでは,「自分の課題に集中する」,「他人に自分を表現する」,「他人と上手くやっている」,「自分の好きな活動を行う」の項目にて有能性が1点向上した.
【考察】うつ症状への薬物療法による改善は3カ月程度を目安とすることが多いとされているが,寛解まで数年に至ることもまれではない.しかし,遷延化したうつ症状に対する明確な介入方法は明らかではない.今回,行動活性化療法を参考にした介入が奏功し,事例の生活パターンの変化に繋がったと考えられた.行動活性化療法は,活動を通した成功体験や気分転換,生活習慣の構築など,対象者の支援に活動を用いる作業療法との親和性が高い.本報告は遷延化するうつ症状の改善に対する作業療法介入の一助となると考える.