第58回日本作業療法学会

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ポスター

精神障害

[PH-6] ポスター:精神障害 6 

Sat. Nov 9, 2024 4:30 PM - 5:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PH-6-4] 精神科作業療法におけるヨーガプログラムが精神機能にもたらす効果

天野 今日子1, 栗栖 歩美1, 平賀 さおり1, 兼田 絵美2, 上城 憲司3 (1.医療法人 社団 緑誠会 光の丘病院, 2.東京医療保健大学, 3.宝塚医療大学)

【目的】
本研究の目的は,精神科病院の入院患者を対象とした精神科作業療法におけるヨーガプログラムを行い,精神機能に与える影響について検討することで,その介入効果を明らかにすることである.
【方法】
1.対象
対象者は,精神一般病棟に入院中の患者とした.対象者に研究の趣旨を説明し,研究の同意が得られたものを対象とした.本報告は当院の個人情報保護規則に準じた倫理審査を受け承認されている.
2.ヨーガプログラムの概要
ヨーガプログラムは,ヨーガインストラクター兼理学療法士の指導のもと,精神科作業療法の枠組にて実施した.内容は,①摩擦法と叩打法用いて四肢をほぐす(触った感覚,温度を知覚),②脊柱の屈曲,伸展,側屈,回旋ポーズ(胸郭周囲筋のストレッチ),③シルベスター法を用いて上肢運動(換気量を増加),④漸新性筋弛緩法を用いてポーズを繰り返す(筋肉の緊張と弛緩を促す),⑤チェアヨガ(身体の認識,柔軟性を高める)とした.留意点として,ヨーガ全体を通して,呼吸は,細く長く吐く呼吸を行い吐くことを意識し,身体反応が出現した際には適宜フィードバックする.
3.評価項目
気分状態の尺度として日本語版POMS2成人用短縮版(Profile of Mood States Second Edition Adult Short:以下,POMS2)を用いた.POMS2は,怒り‐敵意(AH),混乱‐当惑(CB),抑うつ‐落込み(DD),疲労‐無気力(FI),緊張‐不安(TA),活気‐活力(VA),友好(F)の7尺度およびネガティブ気分(TMD)からなる.POMS2で得た各測定値は,年齢・性別により正規化した値(T得点 =50+10×(素得点−平均値)/標準偏差)に換算し標準化した.
4.分析方法
ヨーガプログラムの介入前後の各測定値の比較は,Wilcoxonの符号付き順位検定を用いて分析した.帰無仮説の棄却域は有意水準5%未満とし,データの表記は,中央値(25%タイル,75%タイル)にて示した.統計解析は,SPSS version26 for Macintoshを用い分析した.
【結果】
対象者は20名(女性11名,男性9名),平均年齢は50.2±14.9歳であった.診断名は,統合失調症14名,感情障害3名,知的障害2名,アルツハイマー型認知症1名であった.
ヨーガプログラム介入前後における各測定値を比較した結果,POMS2の怒り‐敵意(AH)(p = .023),混乱‐当惑(CB)(p = .005),疲労‐無気力(FI)(p = .022),緊張‐不安(TA)(p = .005),活気‐活力(VA)(p = .004)の値は有意に低下した.一方,抑うつ‐落込み(DD)(p = .076),友好(F)(p = .116),ネガティブ気分(TMD)(p = .984)に有意差は認められなかった.
【考察】
今回,急性期の入院患者を対象としたヨーガプログラムの精神機能に与える影響について検討した.結果,怒り‐敵意(AH),混乱‐当惑(CB),疲労‐無気力(FI),緊張‐不安(TA),活気‐活力(VA)の改善効果が示された.
急性期作業療法の運動プログラムでは,不安や混乱を遠ざけ,安心・安全感を保障しながら身体感覚を取り戻していく関わりが中心となる(山根 2008).
ヨーガプログラムは,身体感覚レベルからの働きかけを通して心身の緊張の緩和を促すことから,急性期作業療法における精神機能改善のプログラムとして有用であると考える.