[PN-4-7] 作業療法士のシーティング外来での役割
車椅子だけではない役割
【はじめに】褥瘡の予防・管理には「多職種が協力して介入することが重要である」(褥瘡ガイドブック,2023)とされている.しかし,第57回作業療法学会において「褥瘡」をキーワードにした発表はなく,一般には作業療法士(以下OT)が,褥瘡の予防・管理に積極的に介入しているとは思われない.当院では2018年11月よりシーティング外来を開設し,日本褥瘡学会褥瘡受け入れ病院として,医師,皮膚排泄ケア認定看護師など専門チームで現在まで38事例に関わってきた.OT協会は作業療法を「人々の健康と幸福を促進するために,医療,保健,福祉,教育,職業などの領域で行われる,作業に焦点を当てた治療,指導,援助である.作業とは,対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す.」と定義している.そこで褥瘡予防・管理はOTが積極的にかかわる領域であることを,当院のシーティング外来患者の診療内容から見出し,今後の課題を含めて報告する.ヘルシンキ宣言に則り倫理的配慮を行った.
【目的】褥瘡予防・管理に関わるOTの実践を明らかにすることで,OTが地域包括ケアシステムの中で欠かすことできない役割を担っていることを示す.
【方法】当院のシーティング外来は,日本褥瘡学会の認定褥瘡作業療法士が作業療法を行っている.作業療法では,日常生活方法,座圧測定,姿勢評価などを実施し,車椅子の調整,調整方法や生活指導などをフィードバックする.2018年11月から2023年12月までのシーティング外来の人数,病名,褥瘡の有無,車椅子作成,相談内容の内訳を示す.
【結果】シーティング外来患者は38人で延べ102回であり,すべての患者が車椅子シーティングを受けることが初回であり,2回以上外来を利用した患者は20人(51%)であった.病名内訳は,脊髄損傷16人(42%),歩行可能の要支援者9人(24%),脳卒中3人(8%),アルツハイマー型認知症3人(8%),二分脊椎3人(8%),脳性麻痺2人(5%),整形疾患1人(3%),神経難病1人(3%)であった.褥瘡有りは34人(87%)で,すべての患者に褥瘡管理・予防のため,日常生活動作,姿勢,介助方法などの生活指導を本人,家族,介護者,介護支援専門員,訪問医師,訪問看護師,福祉用具業者に直接,あるいは文書にて実施した.車椅子購入者は7人(18%)であった.
【考察】褥瘡予防・管理には,生活行為,環境を評価し,褥瘡発生原因を推察し,その原因を排除・軽減する必要がある.車椅子生活をしている褥瘡を持った患者に対するOTの役割として「対象者の役割や習慣, 姿勢生活環境などの評価をもとに,座位保持が困難な状態から,対象者の希望を紡ぎ,二次的障害を予防しながら,対象者の主体的な生活の獲得 を支援する専門職である」(岩谷清一,2018)と述べられているが,褥瘡があるすべての車椅子生活患者でシーティング評価が受けられていない.これは,在宅・施設においてリハビリ専門職が褥瘡,シーティング双方の知識が不足していることが考えられる. OTは生活行為を評価し,目的や価値を持つ生活行為ができるよう援助することができる職種であり,褥瘡予防・管理にトータルケアとして関わる意義があると考える.当院のシーティング外来は専門チームを有し,チームで生活指導,福祉機器の選定適合を行い,病院・地域をつなぐ役割,また病院のみならず地域でのチームの一員としての役割も有していると考える.また,半数以上の患者が,複数回の外来を利用していることから,継続して対象者と関わることで,綿連と続く生活を尊重しながら,変化する生活に寄り添い,変化に応じて用具の選定適合や生活支援に個別に対応し,地域包括ケアシステムの中で,コーディネーターとしての多職種連携を実施することも可能と考える.
【目的】褥瘡予防・管理に関わるOTの実践を明らかにすることで,OTが地域包括ケアシステムの中で欠かすことできない役割を担っていることを示す.
【方法】当院のシーティング外来は,日本褥瘡学会の認定褥瘡作業療法士が作業療法を行っている.作業療法では,日常生活方法,座圧測定,姿勢評価などを実施し,車椅子の調整,調整方法や生活指導などをフィードバックする.2018年11月から2023年12月までのシーティング外来の人数,病名,褥瘡の有無,車椅子作成,相談内容の内訳を示す.
【結果】シーティング外来患者は38人で延べ102回であり,すべての患者が車椅子シーティングを受けることが初回であり,2回以上外来を利用した患者は20人(51%)であった.病名内訳は,脊髄損傷16人(42%),歩行可能の要支援者9人(24%),脳卒中3人(8%),アルツハイマー型認知症3人(8%),二分脊椎3人(8%),脳性麻痺2人(5%),整形疾患1人(3%),神経難病1人(3%)であった.褥瘡有りは34人(87%)で,すべての患者に褥瘡管理・予防のため,日常生活動作,姿勢,介助方法などの生活指導を本人,家族,介護者,介護支援専門員,訪問医師,訪問看護師,福祉用具業者に直接,あるいは文書にて実施した.車椅子購入者は7人(18%)であった.
【考察】褥瘡予防・管理には,生活行為,環境を評価し,褥瘡発生原因を推察し,その原因を排除・軽減する必要がある.車椅子生活をしている褥瘡を持った患者に対するOTの役割として「対象者の役割や習慣, 姿勢生活環境などの評価をもとに,座位保持が困難な状態から,対象者の希望を紡ぎ,二次的障害を予防しながら,対象者の主体的な生活の獲得 を支援する専門職である」(岩谷清一,2018)と述べられているが,褥瘡があるすべての車椅子生活患者でシーティング評価が受けられていない.これは,在宅・施設においてリハビリ専門職が褥瘡,シーティング双方の知識が不足していることが考えられる. OTは生活行為を評価し,目的や価値を持つ生活行為ができるよう援助することができる職種であり,褥瘡予防・管理にトータルケアとして関わる意義があると考える.当院のシーティング外来は専門チームを有し,チームで生活指導,福祉機器の選定適合を行い,病院・地域をつなぐ役割,また病院のみならず地域でのチームの一員としての役割も有していると考える.また,半数以上の患者が,複数回の外来を利用していることから,継続して対象者と関わることで,綿連と続く生活を尊重しながら,変化する生活に寄り添い,変化に応じて用具の選定適合や生活支援に個別に対応し,地域包括ケアシステムの中で,コーディネーターとしての多職種連携を実施することも可能と考える.