第58回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-4] ポスター:地域 4

Sat. Nov 9, 2024 2:30 PM - 3:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PN-4-8] リハビリテーション病院退院後の障害者に対する就労支援目的の電話支援体制とその実態調査

吉井 千晴, 須江 慶太, 藤本 圭祐, 両角 瞳, 森泉 秀太郎 (JA長野厚生連 鹿教湯三才山リハビリテーションセンター 鹿教湯病院)

【はじめに】
 当院リハビリテーション部では入院患者が円滑に復職できることを目指し,多職種から成る「就労支援部会」を立ち上げ,回復期リハビリテーション病棟などに入院した患者やその担当者の支援を行っている.部会の支援内容は患者担当者と共に復職の方法を検討する会議の開催,患者の心身状況を職場に伝える書類の作成,ならびに退院後のフォローアップとして行う電話支援がある.入院中の復職支援に関する報告は散見されるが,退院後のフォローアップを含めた支援に関する報告は多くはない.そのため,本実践報告では退院後の電話支援の取り組みについて概観し,これまでの調査で得られた退院後の実態を明らかにすることで今後の作業療法における就労支援方法を検討することを目的とした.なお,本報告はヘルシンキ宣言に基づき,当院の研究委員会の承認(承認番号:2023022)を得た後に実施した.
【実践内容】
 退院後の電話支援は,入院中に復職支援希望があり日常生活動作の自立または自立が見込まれる65歳未満の入院中の患者で,復職支援開始時に電話支援の同意が得られた者を対象としている.電話支援は,基本的には入院中に担当していた作業療法士が退院後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月を目安に実施しており,日常生活状況,就労状況,社会状況,今後の展望と課題について聴取している.その中で作業療法士は,退院後の生活や復職状況を本人と振り返り不安や相談に対して具体的なアドバイスをしながら,今後の課題を整理し見通しを立てられるように支援を行っている.
【調査結果】
 2023年度に電話支援を実施した対象者は全6名(平均年齢:46.2歳±6.3,いずれも男性)で,入院に至った疾患は脳出血4名,くも膜下出血,脳梗塞が各1名であった.退院時の運動麻痺は12段階式片麻痺grade(中央値)で上肢9.5,手指7.5,下肢9.5であり,高次脳機能障害としては軽度の注意障害を有していた者が5名であった.退院時のFunctional Independence Measure(FIM)は運動86.8点±4.5,認知30.3点±3.8であった.退院後1ヶ月では,6名全員が自宅生活に慣れ,うち4名は職場へ出向き就労準備段階に入っていた.相談内容としては対象者やその家族からは,高次脳機能障害への対処法や制度に関する相談が聞かれた.退院後3ヶ月では3名が短時間勤務や病前の状態に近い勤務形態での就労を開始しており,退院後6ヶ月では多くが電話がつながりにくい状態であったが1名の就労定着が確認できた.
【考察】
 電話支援では,対象者本人や家族が自宅生活に慣れ就労準備段階に入ったことで感じる不安に対して,担当作業療法士が入院中の経過を踏まえてより具体的なアドバイスができるなどのメリットがあると示唆された.相談内容としては復職そのものというよりは高次脳機能障害への対処法や制度に関する内容が多く,実生活における障害との付き合い方を身に付ける中で復職に間接的に寄与できる可能性がある.しかし,電話支援の実施時期に関しては退院後6ヶ月以降は電話がつながりにくい対象者も多く,就労の可否や現場で生じる問題の把握,そしてそれに対する十分な支援が行えない.また患者や家族目線での問題点に留まり,実際に会社側が感じる問題点の把握が困難なことは電話支援の限界であるといえる.今後は,復職後の問題点の把握や解決のためにも人事労務担当や産業保健スタッフとの協力体制をいかに構築するかが課題である.