[PN-6-2] 地域在住高齢者の「通いの場」における生活行為向上プログラムの実践報告
【はじめに】
地域高齢者の介護予防の取り組みの一つである「通いの場」が推奨されるようになり,多くの地域で開催されている.医療専門職が積極的に通いの場に関わり,運営のマネジメントを支援したり,健康教育・相談などを行ったりすることが期待されている.よって,作業療法士(OTR)の通いの場への関わり方について検討していく必要がある.
【目的】
地域の「通いの場」における高齢者を対象とした生活行為向上に関するプログラムを作成し,その実践を報告する.
【方法】
対象は既存の通いの場に参加している介護認定を受けていない65歳以上の高齢者12名とした.開催者はOTR1名と学生ボランティア4名であった.まず,プログラム開始前に生活行為確認表を用いて不安を感じている生活行為を対象者からアンケート調査した.その結果と日本作業療法士協会で作成された資料1)をもとに,参加者の多くが不安を感じている生活行為への対応方法をまとめた冊子を作成した.プログラムは月1回1時間を2回実施した.1回目のプログラムでは,冊子を用いて不安を感じている生活行為への対処方法を説明し,個々の参加者が不安を感じている生活行為に対して,やってみたい対応方法を参加者間で相談しながら自身で決定してもらった.決定に際し開催者は参加者ができるだけ主体的に決定できるようなファシリテートを行った.1か月間対処方法に取り組んでもらい,2回目のプログラムにて,取り組んだ対処方法によって生活行為が楽になったか,および取り組んだ対処方法の実行度・満足度をアンケート調査した.また,プログラムや冊子に対する感想や意見も合わせて調査した.なお,本研究はすべての対象者から研究参加への同意を得ており,当該施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
取り組んだ対処方法は,12名で20個挙げられた.内容は,床からの立ち上がり3個(15%),階段昇降4個(20%),足の爪を切る2個(10%),重いものを持って運ぶ2個(10%),草むしり1個(5%),もの忘れ6個(30%),その他2個(10%)であった.参加者の78%は生活行為が楽になったと回答した.実行度について,20個中6個は取り組み実施後に得点が増加し,2個は得点が減少した.満足度について,20個中9個は取り組み実施後に得点が増加し,4個は得点が減少した.冊子による対処方法についての説明や取り組む対処方法の決定の方法について,参加者からは,「上手くできていなかった動作を改めて確認できてよかった」「自分の取り組みを考えるうえで他の人の考えや設定が参考になった」など好評価が得られ,92%の参加者は冊子が役に立ったと回答した.
【考察】
今回のプログラムや用いた冊子は「通いの場」における地域高齢者の生活行為向上に役立つ可能性がある.開催者から取り組みを提案するだけではなく,参加者が生活行為について学び,取り組みを自身で考えて決定したことは,自身の生活行為の状況を見直す経験にもなり,取り組み実施の意欲を高めることにつながっていると考える.今回は1か月間の取り組みであったため,今後は対処方法が継続して実施できているか長期的な支援方法も検討する必要がある.
1)日本作業療法士協会.医療から介護保険まで一貫した生活行為の自立支援に向けたリハビリテーションの効果と質に関する評価事業 報告書Ⅲ, 2014.
地域高齢者の介護予防の取り組みの一つである「通いの場」が推奨されるようになり,多くの地域で開催されている.医療専門職が積極的に通いの場に関わり,運営のマネジメントを支援したり,健康教育・相談などを行ったりすることが期待されている.よって,作業療法士(OTR)の通いの場への関わり方について検討していく必要がある.
【目的】
地域の「通いの場」における高齢者を対象とした生活行為向上に関するプログラムを作成し,その実践を報告する.
【方法】
対象は既存の通いの場に参加している介護認定を受けていない65歳以上の高齢者12名とした.開催者はOTR1名と学生ボランティア4名であった.まず,プログラム開始前に生活行為確認表を用いて不安を感じている生活行為を対象者からアンケート調査した.その結果と日本作業療法士協会で作成された資料1)をもとに,参加者の多くが不安を感じている生活行為への対応方法をまとめた冊子を作成した.プログラムは月1回1時間を2回実施した.1回目のプログラムでは,冊子を用いて不安を感じている生活行為への対処方法を説明し,個々の参加者が不安を感じている生活行為に対して,やってみたい対応方法を参加者間で相談しながら自身で決定してもらった.決定に際し開催者は参加者ができるだけ主体的に決定できるようなファシリテートを行った.1か月間対処方法に取り組んでもらい,2回目のプログラムにて,取り組んだ対処方法によって生活行為が楽になったか,および取り組んだ対処方法の実行度・満足度をアンケート調査した.また,プログラムや冊子に対する感想や意見も合わせて調査した.なお,本研究はすべての対象者から研究参加への同意を得ており,当該施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
取り組んだ対処方法は,12名で20個挙げられた.内容は,床からの立ち上がり3個(15%),階段昇降4個(20%),足の爪を切る2個(10%),重いものを持って運ぶ2個(10%),草むしり1個(5%),もの忘れ6個(30%),その他2個(10%)であった.参加者の78%は生活行為が楽になったと回答した.実行度について,20個中6個は取り組み実施後に得点が増加し,2個は得点が減少した.満足度について,20個中9個は取り組み実施後に得点が増加し,4個は得点が減少した.冊子による対処方法についての説明や取り組む対処方法の決定の方法について,参加者からは,「上手くできていなかった動作を改めて確認できてよかった」「自分の取り組みを考えるうえで他の人の考えや設定が参考になった」など好評価が得られ,92%の参加者は冊子が役に立ったと回答した.
【考察】
今回のプログラムや用いた冊子は「通いの場」における地域高齢者の生活行為向上に役立つ可能性がある.開催者から取り組みを提案するだけではなく,参加者が生活行為について学び,取り組みを自身で考えて決定したことは,自身の生活行為の状況を見直す経験にもなり,取り組み実施の意欲を高めることにつながっていると考える.今回は1か月間の取り組みであったため,今後は対処方法が継続して実施できているか長期的な支援方法も検討する必要がある.
1)日本作業療法士協会.医療から介護保険まで一貫した生活行為の自立支援に向けたリハビリテーションの効果と質に関する評価事業 報告書Ⅲ, 2014.