第58回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

地域

[PN-6] ポスター:地域 6

Sat. Nov 9, 2024 4:30 PM - 5:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PN-6-3] 専門学校の障害学生支援における作業療法士の関与について

照井 裕子1,3, 中川 和美2,3 (1.日本工学院八王子専門学校 スポーツ・医療カレッジ, 2.東京工科大学 医療保健学部リハビリテーション学科作業療法学専攻, 3.片柳学園ヘルスサポートセンター)

【序論】 
 本学ヘルスサポートセンター(以下,HSC)では,現在,臨床心理士,作業療法士(以下,OT),看護師,精神科医,学務関係事務職らによる多職種協業の一つの組織として学生(大学生・大学院生・専門学校生)の支援にあたっている(中川和美 2023).筆頭著者(以下,著者)は専門学校のケースコーディネーターとして利用学生のワンストップ窓口対応と障害学生支援を行っている.障害学生支援に関わる合理的配慮については,障害者差別解消法の改正により2024年4月から私立大学等を含むすべての事業者において義務化されている.大学・短期大学・高等専門学校における障害学生支援については,日本学生支援機構(以下,JASSO)が2005年より実態調査を毎年実施・公開しており,報告事例数も多い.一方,専門学校に関しては,JASSOが2021年度より専門学校向けにセミナーや情報提供を開始したところであり,報告事例も確認できない現状にある.そのような中で,著者の所属校では2018年より修学上の合理的配慮に関する申請を受け付け,2019年からは著者も配慮内容の決定に向けた面談に同席し,決定後は学科や担任教員と連携し各種対応を行っている.
【目的】
 所属校での障害学生支援の実態について整理し,専門学校での障害学生支援に作業療法士が関与する意義について検討することを目的とする.
【方法】
 2019年度~2023年度までの5年間の間に入学した障害学生の記録データより,各年度の入学者数と在籍数,全入学者の障害種別と配慮事項を後方視的に整理し単純集計を行った.また2023年度(2024年2月9日時点)HSCを継続利用している学生に対するOTの対応内容を相談記録から抽出した.なお本研究は,日本工学院八王子専門学校の承認を得た.
【結果】
 障害学生の入学者数は,2019年度1名,2020年度5名,2021年度6名,2022年度7名,2023年度11名と年々増加していた.また全入学者(30名)の障害種別は,身体障害(肢体不自由1名,内部障害3名,聴覚障害6名),精神障害2名,知的障害1名,発達障害16名,その他1名であった.障害別の配慮事項として,身体障害では座席の配慮,ワイヤレス補聴援助システム(ロジャー)の使用,発達障害では録音の許可,視覚的資料の提示,クールダウンできる場所の設定などがあり,個々の障害特性に応じた配慮内容が決定され実施されていた.また2023年度にHSCを継続利用した障害学生6名に対して,OTは学修上の負荷や課題進捗の確認,課題遂行や管理の助言,セルフケアに関するアドバイス,自己理解支援,職業決定や進路変更の悩みに対する助言,心理的支援など幅広い対応を行っていた.
【考察】
 専門学校での障害学生支援において,OTは障害そのものへの支援だけではなく,二次障害やセルフケア,自己理解支援など保健的対応も行っているという特徴がみられた.それは,専門学校が職業(occupation)選択と密接に結びついており,職業アイデンティティ成長の場,さらには社会的自立や自己実現といった生きる力を育む場であるからだと考える.学業課題や生活面全般に関わりながら学生のストレングスを発見し,職業アイデンティティを高め,時には学生の進路変更にも寄り添いながら最終的には学生の自己実現や生きがいの向上に寄与することができるという点で,そして,OTが職業を価値ある作業の一つとして捉えることからも,専門学校での障害学生支援に作業療法士が関与する意義があると考える.