第58回日本作業療法学会

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ポスター

理論

[PO-1] ポスター:理論 1 

2024年11月9日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (大ホール)

[PO-1-2] 作業療法レジュメの新様式CROT-Rは役立っているのか?

藤本 一博 (茅ヶ崎新北陵病院)

【はじめに】
 OT実習のレジュメの様式は,1)はじめに 2)一般情報 3)他部門からの情報 4)評価 5)問題点 6)ゴール 7)治療プログラム 8)統合と解釈 9)治療経過 10)結果 11)考察との項目で構成されたモデルを利用することが多く,実習指導者を対象とした調査では,作業療法の専門性を表現しづらいとの結果であった.そこで作業療法リーズニングの要素である物語的リーズニング,科学的リーズニング,実際的リーズニング,倫理的リーズニング,相互交流的リーズニングの5つを参考にしたCROT-R(Clinical Reasoning Ot Tool – Resume)が作成されたが,このツールが役立つツールであるのか調査したため,報告する.なお発表に際し対象者からは同意を得ている.
【目的】
 従来のレジュメの項目で作業療法実践を自由に記載することは可能であるも,この大きな枠で自由に発想し落とし込むには,高い経験と知識が必要となり,指導者や学生の双方から困難さが指摘されていが,その問題をリリースから2年経過したCROT-Rにて改善できているのかを利点と改善点を調査し検討する.
【方法】
 臨床実習等でCROT-Rを利用し,調査に同意の得られたOTR18名,OTS14名を対象とし, CROT-Rを利用したことでの利点,改善点,感想を自由記載で収集した. 収集データをカテゴリー分析することで,利点と改善点を明らかとする.
【結果】
 CROT-Rを使用することでの利点は,「リーズニングの道標となった71%」「作業療法専門性が促進された31%」「多職種連携が促進された18%」「クライエントの物語を柱としクライエント中心の実践になった12%」「文献の活用が促進された12%」などの回答が多く,「リーズニングを学べた」「レジュメ作成が効率的」「作業を中心とした目標設定となる」などの回答も少数得られた.
 CROT-Rの改善点は,「項目の順を変えた方が良い31%」「新たな項目を追加して欲しい25%」「作業療法効果に容量を割いた方がいい21%」などの回答が多く,「時間を要す」「専門性が必須」などの回答も少数得られた.
 CROT-Rを使用したことでの感想は,「初めて作業療法のリーズニングができた気がする」「クライエントの物語に寄り添える」「これが作業療法の専門性だと感じる」「作業療法士の行動指針になる」「実習期間のスケジュール管理がしやすい」「チームとして共通認識をもって仕事をしていると実感できる」「ニーズが聞ければいいや,ではなく,物語の重要性を認識できた」「作業療法にならざるをえない」「何が分かっていて,何が分からないのか,どこが足りないのか整理できた」など,多くの感想を得られた.
 以上より,利点としてはCROT-Rは作業療法士が何を行うべきかの道標となり,専門性を強化していたが,改善点として施設や領域によってリーズニングの順序が異なることが示された.
【考察】
 従来のレジュメの様式と比較しCROT-Rは,多くの利点が示される有益なツールとなっていることが分かった.何を行うべきかの道標的な効果や専門性を高める効果が認識されており,作業療法の専門性を活かせる詳細な項目を設定していることが効果的であった.しかしリーズニングの手順は施設や領域によって異なるため,柔軟に変更できる必要が示唆された.改訂版では作業療法の専門性を押し出しつつ,柔軟性のあるツールとしていきたい.