[PR-5-6] 地域での生活支援に必要なOTの卒業時コンピテンシー項目からみた教育内容の検討
地域実践OTと地域作業療法領域教員の調査から
【背景と目的】
地域包括ケアシステムの構築に向けて,作業療法養成段階から教育が見直され,2018年の指定規則では通所リハビリテーションまたは訪問リハビリテーションでの実習が新設された.新たな領域での実習追加により,教育内容の見直しが図られている.そこで,地域での生活支援をするためのコンピテンシー項目を抽出し,教育との関連性を検討することによって得られた情報から,教育内容を検討する資料のあり方を提示することを目的とした.
【方法】
本研究は,通所リハビリテーションまたは訪問リハビリテーションに従事するOT(以下,地域実践OT)へのデルファイ法を用いた地域での生活支援に必要な作業療法学生の卒業時コンピテンシー項目に関する研究(赤堀将孝,2023)と,卒業時コンピテンシー項目を地域作業療法領域のOT教員(以下,教員)への調査研究を用いた二次分析である.
デルファイ法による卒業時コンピテンシー項目は51項目の必要度の割合,教員への調査は卒業時コンピテンシー51項目の教育の必要性,教育の実施状況,実施計画有の割合を算出した.その上で,各項目ごとにそれぞれの割合を比較検討した.なお,2つの研究は同意した者のみから回答を得るとともに,倫理的配慮として大学の倫理審査を受けて実施した.
【結果】
卒業時コンピテンシー項目は,必要度75%以上の19項目は,個人情報の保護や自己の健康管理,対象者のリスク管理,対象者や家族を含む支援者との信頼関係構築に関する項目,必要度51%以上75%未満の22項目は,評価や支援計画の立案などの作業療法プロセス,対象者に合わせた評価項目の抽出や個別プログラムの立案,退院後の住環境への適応を援助する項目,必要度51%未満の10項目は,MTDLPの各シートを用いた支援計画や医療保険制度や介護保険制度に関する項目,地域資源の情報収集に関する項目,近隣住民を含む連携に関する項目などであった.
教員への調査では,23都道府県に所在する47校から回答を得た.必要と教育実施が100%の項目は1項目であり,この項目以外で必要が100%の11項目は実施と計画有が98〜74%であり,必要が90%台の23項目は実施と計画有が100〜59%であり,必要が89%以下の16項目は実施と計画有が76〜38%であった.
【考察】
養成施設の実施や計画有の割合をもとに活用する方法として,必要が高く実施が高い「対象者や家族の個人情報を保護することができる」などだけでなく,必要が80%台である「対象者が利用する施設までの経路の段差やスペース,手すり等が情報収集できる」や「対象者と家族の生活を踏まえた住環境整備が提案できる」など実施は70%以上である.他の領域や科目がある中で,教育の実施や計画の割合が多い項目は地域作業療法領域にて教育を実施する目安となる.
また,「MTDLPの各シートを用いて支援計画が立案できる」は地域実践OTの必要度が低かったが,現状の養成教育では,国家試験への出題(厚生労働省,2022)やMTDLPを活用した実習ガイド(日本OT協会,2023)の作成により,94%が必要と考えており,そのうち95%が教育の実施と計画であった.このように地域実践OTと教員で教育への考え方に違いがある項目は,教育の実施状況を踏まえて実習指導や卒後教育などで実践するOTと教員が連携する必要があると考える.以上より,2つの研究結果は教育内容を検討する資料となると考えられた.
地域包括ケアシステムの構築に向けて,作業療法養成段階から教育が見直され,2018年の指定規則では通所リハビリテーションまたは訪問リハビリテーションでの実習が新設された.新たな領域での実習追加により,教育内容の見直しが図られている.そこで,地域での生活支援をするためのコンピテンシー項目を抽出し,教育との関連性を検討することによって得られた情報から,教育内容を検討する資料のあり方を提示することを目的とした.
【方法】
本研究は,通所リハビリテーションまたは訪問リハビリテーションに従事するOT(以下,地域実践OT)へのデルファイ法を用いた地域での生活支援に必要な作業療法学生の卒業時コンピテンシー項目に関する研究(赤堀将孝,2023)と,卒業時コンピテンシー項目を地域作業療法領域のOT教員(以下,教員)への調査研究を用いた二次分析である.
デルファイ法による卒業時コンピテンシー項目は51項目の必要度の割合,教員への調査は卒業時コンピテンシー51項目の教育の必要性,教育の実施状況,実施計画有の割合を算出した.その上で,各項目ごとにそれぞれの割合を比較検討した.なお,2つの研究は同意した者のみから回答を得るとともに,倫理的配慮として大学の倫理審査を受けて実施した.
【結果】
卒業時コンピテンシー項目は,必要度75%以上の19項目は,個人情報の保護や自己の健康管理,対象者のリスク管理,対象者や家族を含む支援者との信頼関係構築に関する項目,必要度51%以上75%未満の22項目は,評価や支援計画の立案などの作業療法プロセス,対象者に合わせた評価項目の抽出や個別プログラムの立案,退院後の住環境への適応を援助する項目,必要度51%未満の10項目は,MTDLPの各シートを用いた支援計画や医療保険制度や介護保険制度に関する項目,地域資源の情報収集に関する項目,近隣住民を含む連携に関する項目などであった.
教員への調査では,23都道府県に所在する47校から回答を得た.必要と教育実施が100%の項目は1項目であり,この項目以外で必要が100%の11項目は実施と計画有が98〜74%であり,必要が90%台の23項目は実施と計画有が100〜59%であり,必要が89%以下の16項目は実施と計画有が76〜38%であった.
【考察】
養成施設の実施や計画有の割合をもとに活用する方法として,必要が高く実施が高い「対象者や家族の個人情報を保護することができる」などだけでなく,必要が80%台である「対象者が利用する施設までの経路の段差やスペース,手すり等が情報収集できる」や「対象者と家族の生活を踏まえた住環境整備が提案できる」など実施は70%以上である.他の領域や科目がある中で,教育の実施や計画の割合が多い項目は地域作業療法領域にて教育を実施する目安となる.
また,「MTDLPの各シートを用いて支援計画が立案できる」は地域実践OTの必要度が低かったが,現状の養成教育では,国家試験への出題(厚生労働省,2022)やMTDLPを活用した実習ガイド(日本OT協会,2023)の作成により,94%が必要と考えており,そのうち95%が教育の実施と計画であった.このように地域実践OTと教員で教育への考え方に違いがある項目は,教育の実施状況を踏まえて実習指導や卒後教育などで実践するOTと教員が連携する必要があると考える.以上より,2つの研究結果は教育内容を検討する資料となると考えられた.