日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

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[U-07] FutureEarth-GRPsによる地球環境変化研究の統合

2018年5月20日(日) 13:45 〜 15:15 103 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:石井 励一郎(総合地球環境学研究所)、安成 哲三(総合地球環境学研究所)、谷口 真人(総合地球環境学研究所、共同)、Hein Mallee(Research Institute for Humanity and Nature)、座長:谷口 真人石井 励一郎Mallee Hein

14:00 〜 14:15

[U07-01] ランドサイエンスを通した持続可能な社会への諸問題に対するGLP小委員会およびGLP日本拠点オフィスの取り組み

★招待講演

*渡辺 悌二1春山 成子2 (1.北海道大学大学院地球環境科学研究院、2.三重大学大学院生物資源学研究科共生環境学専攻)

キーワード:全球陸域研究計画、土地利用・土地被覆

全球陸域研究計画GLP(Global Land Programme)は,変動環境下における陸域システムの変化について,人間-環境結合システムに注目し,山岳地域から海岸地域までの陸上すべてを対象として,土地利用・土地被覆および陸上生態系の構造・機能の変化パターンやメカニズムをあらゆる空間スケールで明らかするための国際共同研究計画である。また,前身プロジェクトであるGCTE(Global Change and Terrestrial Ecosystem)とLUCC(Land-Use and Land-Cover Change)における成果を踏まえ,FE(Future Earth)体制の前には,IGBP と IHDP の共同プログラムとして,自然科学と社会科学の協同による持続可能な陸域システムの管理や保全に向けた科学的示唆を創出することを目指してきた。GLPは,FEが提起する8つの大きな課題群のいずれとも関わりを持っており,国連の持続可能な開発目標(SDGs)のいずれとも深く関わっている。

GLP小委員会は,春山成子代表のもと,地理学や生態学、農学などを研究対象とする15名ほどの委員で第24期の活動を行っている。GLP小委員会はGLP日本拠点オフィスと協力関係にあり,日本拠点オフィスは,スイス・ベルンに設置されているIPOおよび世界7ヵ所の拠点オフィスとの協力を通して,国際的な動向の情報共有や国際会議への日本のGLPコミュニティからの参加の呼びかけを行っている。また,陸域の持続可能性,脆弱性, 回復力の3つに焦点をあてた研究を推進している。

かつて日本のGLPコミュニティでは,アジアの土地利用・土地被覆変化研究(氷見山幸夫・前小委員会代表)やインドネシア(大崎 満),アムール(白岩孝行)でのプロジェクトなどを通して,主にアジアにおける陸域の環境問題への貢献を行ってきた。23期の成果の一部は,平成29年10月16日に日本学術会議公開シンポジウムで発表した。これらの成果には,「北東アジアの乾燥地における土地劣化・再生と社会-生態システムの再編」(大黒俊哉),「山岳途上国における地域の持続性-パミールとヒマラヤ」(渡辺悌二),「中国の都市地域における死後の土地利用(土居晴洋),「中国における都市化に伴う郊外地域の変容(季 増民),「閉鎖性水域の水環境問題-地域環境問題を地球的課題につなげる考え方(近藤昭彦),「Fieldology (人環水土学) の構築」 (大崎 満),「土地利用変化が流域水・物質循環に与える影響-長江流域を例として(王 勤学),「ダム湖水質に及ぼす温暖化の直接・間接影響と土地利用の重要性」(占部城太郎)が含まれている。

GLPはFE体制になって,Global Land ProjectからGlobal Land Programmeに変わった。国内では組織上の大きな変更はないが,拠点オフィスは札幌拠点オフィスから日本拠点オフィスに名称を変更して,全国の複数大学でのコンソーシアム体制に移行した。現在,北海道大学が事務局となって,酪農学園大学,東北大学,筑波大学,京都大学および広島大学が参加している。日本拠点オフィスでは,IPO・他の拠点オフィスとの情報共有を密にすること,これまで同様に国際ウインタースクール・サマースクールの実施を通して若手研究者の育成・取り込みに注力すること,国際的なネットワーキングを強化すること(特に若手を巻き込んだネットワーク構築)がFEの実践のためのKANs構築と関連して期待されており,GLP小委員会とは陸域の持続可能性研究の推進だけではなく,次世代の教育連携においても強い協力関係を維持していくことが求められている。

「大型研究」については24期小委員会で議論を行っているところであるが,アフリカ諸国をはじめ人口増加が進行する国・地域が多数ある中で,過去に人口増加と経済発展を経験した日本がすでに少子高齢化社会に入り,その中で将来の土地利用・管理,資源の保護保全などをどう進めて行くことができるのかを議論しなければならない。国際的には,「災害大国」として研究成果をフィードバックしていくことが期待され,「少子高齢化先進国」としても海外に研究成果をフィードバックしていかねばらない。その際,これまでにはない超高精度の衛星画像の利用や最先端技術の適用による新しい土地とのつきあい方の提案などが求められる。言い換えれば,これまでのランドサイエンスでは過去の土地利用・土地被覆変化のトレンド解析から近い将来を予測してきたが,それだけではなく,多分野の研究者が持続可能な社会像の形成に強く関与して,方向性を見いだす努力が求められるであろう。