JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG34] 人間の社会活動と地球惑星科学

コンビーナ:天野 一男(東京大学空間情報科学研究センター)、小口 高(東京大学空間情報科学研究センター)、伊藤 昌毅(東京大学生産技術研究所)、山本 佳世子(国立大学法人 電気通信大学)

[HCG34-P07] 離島支援のためのウェブポ―タルサイトの開発

*山本 佳世子1 (1.国立大学法人 電気通信大学)

キーワード:離島支援、ウェブポ―タルサイト、デジタル地図、ソーシャルメディア、Twitter

日本は多くの島嶼により構成されている。これらの離島は、我が国の領域、排他的経済水域等の保全、海洋資源の利用、多様な文化の継承、自然環境の保全等、国家及び国民の利益の保護及び増進に重要な役割を担っている。一方で、日本全体の少子高齢化に伴い、多くの離島もまた深刻な少子高齢化の問題を抱えている。離島の人口は昭和30年より一貫して減少しており、全国の高齢化率が22.7%であるのに対し、奄美、小笠原、沖縄を含む離島地域では29.7%と、全国数値よりも高い数値となっている。
近年、離島への国内外の観光客が増えており、離島観光のニーズが高まっている。観光客をはじめとした特定の地域と密接な関係を持っている人々の人口を増やすことは、離島における持続可能な開発を達成する可能性がある。しかしながら、離島の多くは観光情報を紹介しているガイドブックやWebサイトが少ない。島の人々は自分たちの島に関する情報を自分で送信する他に方法が少ない。離島への訪問者数を増やすためには、観光情報を送信するために島民を支援する必要がある。また、多くの離島では高齢化が進行しているため、日常生活の中で高齢者を見守ることも重要である。
日本の離島の一つである「田代島」は、宮城県の石巻湾に浮かぶ小さな有人島である。島の周囲は約 11 キロ、およそ80人の人々が住んでいる。2011 年 3 月 11 日に発災した東日本大震災では、集落がある地区では深刻な被害を免れたが、2つの主要港は被害を受けた。高齢の方々が多い中、東日本大震災からの復興を住民の方々の努力によって達成され、非常に活力をもった島である。現在、田代島は「猫の島」として世界的な注目を集めている。田代島では、昔から大漁の神として猫が大切にされ、島の中央にある「猫神社」には猫が祀られている。現在では、島民よりも多くの猫が島に住み、島民と共生し、暮らしている。田代島の猫たちに会うために、世界中から多くの猫好きの人々がこの島を訪れている。
これまで、田代島を訪れる観光客の多くは島民が作った紙の地図を基に島を巡っていた。しかし、その位置情報の正確性と情報提供は十分とは言えない状態である。また、田代島へ向かう交通手段の船は1日数便であり、来訪者の多くは日帰り観光となっている。2020年2月の時点で、始発便は朝9時、最終便は15:35である。観光者は限られた時間内に島内を効率良く回ることが必要である。田代島の観光スポットに関する情報、また正確な位置情報を提供することで、より多くの観光客が効率良く島を観光することが可能になる。また、田代島では東日本大震災以前から過疎化・超高齢化問題が深刻化している。観光客を主体とした関係人口(地域や地域の人々と多様に関わる人々)を増加させることは、地域コミュニティの持続性を図ることにつながる。これらは日本の離島における持続可能な開発に関する諸問題解決の一助となる。
本稿では、観光地としての需要の高まりがありながらも正確な情報提供が十分になされていない実情を鑑み、田代島を訪れる観光客を対象とした観光支援ポータルサイトの開発を目的とする。Web-GISを用いた正確な位置情報の把握、SNSをとおしたリアルタイム性の高い情報を収集可能とすることで、より充実した観光を支援することが可能となる。またWeb-カメラを用いることで、観光客およびその島に興味をもつ人々が島の様子を知ることが可能となる。それと同時に、島民の日常生活を見守ることも可能となり、安全な暮らしを支援することを可能にする。