JpGU-AGU Joint Meeting 2020

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[J] 口頭発表

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[O-02] 変化する気候下での強風災害にどう取り組むか

コンビーナ:松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境学域)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、和田 章(東京工業大学)、座長:松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境学域)

[O02-02] 明治~昭和初期の台風資料の活用と課題

★招待講演

*藤部 文昭1 (1.首都大学東京都市環境学部)

キーワード:台風、データベース、データ集成

近年は著しい気象災害が相次ぎ,その理由として気候変動の影響を指摘する意見がある.一方,過去にも近年と同様の,あるいはそれを上回る強風や大雨による災害が起きた例がある.このような過去の事象についての記録を取りまとめ,将来起こり得る災害に備えるための資料として生かすことが望まれる.本発表では,明治時代に著しい強風をもたらした台風の事例を紹介し,当時の資料を活用する上での問題点を論ずる.

1つめの事例は,1899年8月15日に九州を通過した台風である.この台風によって鹿児島では49.6m/sの最大風速が観測され,県内(薩南諸島を除く)の1割に当たる1万6千戸の住家が全潰した.もう1つの事例は,1902年9月28日に関東を通過した台風である.この台風は90~100km/hという速さで北上し,その東側に当たる筑波山では72.1m/sの最大風速が記録された.茨城県では県内の1割に当たる2万戸の住家が全潰し,150校を超える小学校で校舎が倒壊した.当日は日曜日だったため,校舎倒壊による児童の被害はなかったが,この災害は室戸台風(1934年)による学校被害の警鐘になり得るものであった.
明治~昭和初期の気象災害記録に関わる問題点としては,以下が挙げられる.(1) 系統的なデータベースがない:一部の事例は商業出版物等でトピック的に取り上げられているが,当時の風水害全体を網羅する資料は見当たらない,(2) 資料の分散:気象に関する主要な資料は中央気象台の刊行物に掲載されているが,台風時の臨時観測結果や災害に関する情報については他の資料を探す必要がある.(3) 資料の誤り:当時の資料に誤りや齟齬がある.また,近年の資料には原資料からの転記ミスや,当時の観測値のバイアスが補正されていない等の問題が見られる.これらの問題に留意しつつ,台風資料の集成・活用を図っていくことが望まれる.