[PEM12-P27] 南極昭和基地大型大気レーダーによる電離圏沿磁力線不規則構造のイメージング観測
キーワード:PANSY、南極昭和基地、電離圏沿磁力線不規則構造、適応的信号処理
南極昭和基地大型大気レーダー (PANSY レーダー) は南極の昭和基地に設置されている大型 VHF 帯大気レーダーである。本レーダーは対流圏や成層圏、中間圏を観測対象とする MST レーダーとしての機能に加え、電離圏非干渉性散乱 (IS) を用いて地表 100km から 500km におけるプラズマ物理量を観測することが可能である。2015 年には南極で初となる電離圏 IS 観測が開始された。また、PANSY レーダーは周波数 47MHz を用いており、E 領域の沿磁力線不規則構造 (Field Aligned Irregularity: FAI) エコーの観測が可能である。FAI がレーダー電波の半波長の空間スケールを持つとき電波はコヒーレント散乱を起こすため、PANSY レーダーでは約 3m スケールの FAI からのコヒーレント・エコーの観測が行われる。この FAI からのエコーの混入による PANSY レーダーの IS 観測への影響に対処するため、適応的ビーム形成技術を用いた信号処理法が開発された。PANSY レーダーには 1045 本のアンテナからなるメインアレイに加え、24 本のアンテナからなる FAI アレイがある。 FAI アレイには 12 本ずつ直線状に配置されたアレイアンテナが 2 組あり、方向拘束付き出力電力最小化法に基づいた手法を用いて異なる角度からの信号を分離できる。つまり、この手法により、背景の電子密度だけでなく FAI やその運動を観測することも可能である。本発表では、PANSY レーダーによる FAI のイメージング観測において測定された FAI の時間変化を南極昭和基地における磁場の変動やオーロラなどのデータと比較することにより、FAI 発生・発達・消滅の物理過程について報告する。