日本地球惑星科学連合2021年大会

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[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW22] 流域生態系における物質輸送と循環:源流から沿岸まで

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.09

コンビーナ:前田 守弘(岡山大学)、入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、小野寺 真一(広島大学大学院先進理工系科学研究科)、Adina Paytan(University of California Santa Cruz)

17:15 〜 18:30

[AHW22-P14] 岡山県倉敷平野の地下水流動に及ぼす高梁川の影響

*友澤 裕介1、竹内 徹2、小野寺 真一1、齋藤 光代3、藤岡 正太郎4 (1.国立大学法人 広島大学 大学院先進理工系科学研究科、2.株式会社フジタ地質、3.岡山大学大学院環境生命科学研究科、4.川漁師)

キーワード:沿岸沖積平野、地下水流動、酸素・水素安定同位体比

本研究では瀬戸内海沿岸の沿岸沖積平野である倉敷平野において、水資源として利用されている地下水に対して主要河川である高梁川が及ぼす影響を確認することを目的とし、地下水および河川の水位,水温,一般水質および水素・酸素安定同位体比を比較し考察を行った。

高梁川は、明治期の終わり頃まで支流の小田川の合流地点にあたる八幡山より東西に別れ、扇状地を形成して倉敷や玉島の沖積平野を南流して瀬戸内海の水島灘に注がれていたが、大正14年(1925年)までの高梁川第一期改修工事により、東高梁川を廃川として、川幅の広い西高梁川を本流とする現在の流路へと変更された。倉敷平野は、高梁川の扇状地性の礫質土層の上部に、河川周辺は陸成の砂質土層、その外側を海成の粘性土層による沖積層が海岸部まで堆積している。

河川の観測場所は扇状地頂上部に位置する地点(酒津)、地下水の観測場所は東高梁川左岸にあたる上富井の観測孔(深さ約11m)で実施し,2017年5月からデータロガーで水位・水温を30分間隔で計測した。水質は1週間に1度の頻度で採水し,EC,一般水質,水素・酸素安定同位体比の分析を行った。

観測の結果、高梁川の水温は倉敷の気温と似た傾向を示し、観測孔の水温は、地盤高さ-10mでは6ヶ月の位相のずれがみられ、-3mでは3ヶ月のずれが見られた。採水した水の水素・酸素の同位体比においても、若干の変動が確認された。水温について地盤高さ-10mの水温は地表部の温度の影響が少ないと仮定した場合、酒津から観測孔のある上富井までの距離約4.5kmにおける位相のずれが6ヶ月であり、酒津から水島灘までの距離が約10.5kmであることから、酒津から涵養された高梁川の河川水は、概ね1年の歳月をかけて水島灘の海底から流出していると推定される。

また,大出水時2018年7月及び2018年9月の河川水の水素・酸素安定位同位体比は顕著に低下していた。地下水と比較することにより河川水の影響を見いだせる可能性がある。

今回の観測結果より季節的な周期性が確認でき、その位相のずれを追跡することで河川水が地下水に涵養している様子が明らかになった。また、洪水時にはその河川の高い水圧により、より涵養が進む様子も確認できた。