15:45 〜 16:00
[HCG27-02] 原子力発電所裁判における科学の問題の取り扱いの変遷
★招待講演
キーワード:原子力発電所裁判、科学の問題、取り扱いの変遷
原子力発電所に被害を及ぼすような強い地震動は稀な現象であるので,原発の運転期間である数十年程度でそれが起こるか否かを確実に述べることは難しく,こうした科学の問題には大きな不定性を伴う.しかし,それにも関わらず,原子力発電所の運転を差し止めるような重大な結論を出すためには,ある程度確定的な理由付けを行わざるを得ず,これまでの判決では科学の問題に関して無理をしているところが多かった.しかし,2020年12月の大飯原子力「発電所運転停止命令義務付け請求事件」に対する大阪地裁の判決では,争点2(入倉・三宅式及び檀ほか式の合理性),争点3(入倉・三宅式に基づき計算された地震モーメントをそのまま震源モデルにおける地震モーメントの値とすることの合理性)などにおける科学の問題に無理な理由付けを行っていない.それに替わって,地震動審査ガイドにある「ばらつき条項」(「震源モデルの長さ又は面積,あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連づける経験式を用いて地震規模を設定する場合には,(中略)経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから,経験式が有するぱらつきも考慮されている必要がある。」)に,被告(電力会社)が従っていないことが主な論点とされた.つまり,手続き論的な問題に置き換えることによって,科学の問題の不定性を回避したことになるだろう.
従来,地震規模の算出におけるばらつきは震源モデルの設定が保守的に行われる(安全側の設定が取られる)ことによって考慮済みであるとされてきたが,判決では「ばらつき条項」の後半が2012年3月に特に追加されたなどの経緯から,独立して陽に考慮しなければならないとされている.さらには,震源断層を対象とする入倉・三宅式を地表からの活断層調査の結果に用いることが合理的であるとする理由の一つに,震源モデルの設定が保守的に行われていることが挙げられているから,二重に理由とすることは適切ではないであろう.
従来,地震規模の算出におけるばらつきは震源モデルの設定が保守的に行われる(安全側の設定が取られる)ことによって考慮済みであるとされてきたが,判決では「ばらつき条項」の後半が2012年3月に特に追加されたなどの経緯から,独立して陽に考慮しなければならないとされている.さらには,震源断層を対象とする入倉・三宅式を地表からの活断層調査の結果に用いることが合理的であるとする理由の一つに,震源モデルの設定が保守的に行われていることが挙げられているから,二重に理由とすることは適切ではないであろう.