日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT16] 環境トレーサビリティ手法の開発と適用

2021年6月3日(木) 17:15 〜 18:30 Ch.08

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、SHIN Ki-Cheol(総合地球環境学研究所)、竹内 望(千葉大学)

17:15 〜 18:30

[HTT16-P15] 酸素ラジカルを利用した低温灰化法による有機質試料中の無機元素定量法の確立

日野 泰亮1、梅田 由里子1、志々目 響1、伊藤 茜1、*谷水 雅治1 (1.関西学院大学)

キーワード:プラズマ灰化、同位体分析、有機質試料

地球表層での物質循環をさまざまな元素について明らかにするためには、多種多様な環境学的試料の無機化学分析を行う必要がある。特に元素循環の物質収支の把握において、生体試料や化石燃料中に含まれる無機元素が重要なリザーバーになっている場合、これらの試料に含まれる元素の濃度や同位体存在度の正確な定量が要求される。
無機元素の高感度定量分析には、原子吸光法やICP 発光分析法、ICP 質量分析法などの原子スペクトル分析が利用されており、通常は各種前処理法により対象試料をあらかじめ溶液化する必要がある。有機質試料の主要成分である有機炭化水素の分解除去には、従来から高温灰化法とマイクロ波加熱分解法による前処理法が用いられているが、前者では高温による揮発性元素の損失や周囲の環境からの汚染の問題があり、また後者では、多量に残存する溶存有機成分によるスペクトル干渉や非スペクトル干渉の影響が懸念されている。特に、微量無機元素の同位体分析では、多量の試料を前処理するため、分解試料量に制限のある後者は利用しにくい。
我々のグループでは、有機質試料中の有機炭化水素を効率的に除去する前処理法として、酸素ラジカルを利用した低温プラズマ灰化法の確立に取り組んできた。低温プラズマ灰化法は、減圧下での酸素ガスのグロー放電によって生成する原子状酸素を用いて、有機炭化水素を徐々に酸化分解し、最終的には気相に除去する手法である。本報告では、炭化水素系パラフィンオイルに各種の無機元素を溶存させた市販の有機金属標準液を用いて、低温灰化処理における各元素の回収率を求めた。その結果、元素酸化物の揮発性や灰化中の不溶性化合物の形成、残留灰分の各種無機酸への溶解性などの因子に依存して、回収率が変化することを突き止めた。最適化した灰化手法を用いて、同位体分析を目的とした化石燃料中の微量元素の定量を行うとともに、海藻や玄米などの固体有機質試料の微量元素の回収率を報告する。