日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS24] 地球流体力学:地球惑星現象への分野横断的アプローチ

2021年6月6日(日) 09:00 〜 10:30 Ch.10 (Zoom会場10)

コンビーナ:伊賀 啓太(東京大学大気海洋研究所)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、柳澤 孝寿(国立研究開発法人海洋研究開発機構 海域地震火山部門)、相木 秀則(名古屋大学)、座長:中島 健介(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

09:45 〜 10:00

[MIS24-04] 室内用小型超音波風速計による二重らせん渦の高周波測定

*板野 稔久1 (1.防衛大学校)

キーワード:多重渦、超音波風速計、運動量輸送

渦の中心核が不安定となり、複数の二次渦へと分裂してそれらがらせん状に絡まりながら最大風速半径付近を公転する「多重渦」現象は、1960年代半ばに発見され(Fujita, 1967)、1970年代初頭には室内実験で再現された(Ward, 1972)。その後、1980年代にかけて、「多重渦」が再現できる特殊回転風洞がいくつかの大学で開発され、その形成条件に加えて、風速・圧力分布が詳細に調べられた。但し、時代的な背景もあって、この時点で実施された測定法は、1・2次元の熱線風速計による直接測定か、スモークワイヤー・ストロボ・カメラを組み合わせた写真解析による遠隔測定が主体であった。この内、熱線風速計は高周波測定が可能なものの、1次元のプローブでは運動量輸送やコスペクトルを求めることができず、また2次元のプローブでも無条件に2成分の風速が測れるわけではなく、流れの方向をプローブの測定面にそろえ、且つ風速変動を90°以内押さえる必要があるなど制約が多い。特に、渦の中に二次渦がはめ込まれた「多重渦」では風速変動が大きく、また風向が反転するため、熱線風速計でその中心核付近を計測することは断念されている。その後、計測技術の進展に伴い、1990年代にはレーザードップラー流速計を用いた測定や、最近ではピトー管の一種と思われるコブラプローブと呼ばれる測器による測定が散発的に実施されている。後者は、3成分の風速に加えて圧力が同時に計測できるという魅力的な測器であるが、やはり逆方向からの風速は測定できないため、「多重渦」の計測に利用するのは難しいと思われる。このような状況を踏まえて、今回「多重渦」の計測に室内用小型超音波風速計を用いた試みについて紹介したい。

 防衛大学校の特殊回転風洞(直径1.9m×高さ0.95m。収束槽の縦横比a=0.857(=0.3m/0.35m))において、案内羽の流入角θ=45°(スワール比S(=tanθ/(2a)=0.58))で送風機を10Hz(レイノルズ数Re=16,800)で駆動した時に発生する「二重らせん渦」を本研究の対象とした。風洞内の鉛直断面を半径方向に3cm毎、鉛直方向に5cm毎に移動させて計72点の測定点を設定し、各点において4分間10Hzの測定を、トランスドューサー間の基線長が3cmの超音波風速計WA−790<Sonic>で計測した。平均場でみると、旋回する主流は多くの領域で〜10°ほど内向きに偏向し、上昇すると共に仰角を増す。一方、中心部では下降流が存在し、全風速も弱く”目”が形成されている。風速の標準偏差はこの両者の間に存在するシアー域で大きな値を取り、そこが二次渦の通り道であることがわかる。共分散をみると、主流の運動量は基本的に上向き&外向きへ輸送されているが、最大風速半径付近では内向きの輸送があることが確認された。