日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

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[M-ZZ48] 地質と文化

2021年6月6日(日) 10:45 〜 12:15 Ch.16 (Zoom会場16)

コンビーナ:鈴木 寿志(大谷大学)、先山 徹(NPO法人地球年代学ネットワーク 地球史研究所)、高橋 直樹(千葉県立中央博物館)、座長:先山 徹(NPO法人地球年代学ネットワーク 地球史研究所)、高橋 直樹(千葉県立中央博物館)

11:30 〜 11:45

[MZZ48-04] 日本の醸造文化と地質:薩摩芋焼酎と甲州葡萄酒を例に

*鈴木 寿志1 (1.大谷大学)

キーワード:シラス台地、扇状地、サツマイモ、葡萄

酒類の醸造には、作物の生育条件に加え、麹菌による糖化と酵母によるアルコール発酵という化学反応を伴うため、醸造所の気候条件が大きく関わってくる。では酒類醸造において地質条件はどう関係するだろうか?日本の地域醸造文化の代表例として、鹿児島県薩摩地方の焼酎蔵と山梨県甲州市勝沼の葡萄畑を訪れ現地調査を実施するとともに、地質と醸造文化の関係を考察した。

薩摩地方:シラス台地は透水性が高いため台地上での稲作は不可能で、サツマイモや茶の栽培が盛んである。シラス台地の水文学的特性として、地下水を台地内部に豊富に胚胎し、台地の縁から徐々に湧出することが挙げられる。一般に硬度が低く軟水に分類される。したがって、薩摩地方ではシラス台地という地質特性が、サツマイモの栽培に適しているだけでなく、豊富な軟水の貯留槽として焼酎醸造に利用されている。

甲州市勝沼:今でこそ甲州葡萄酒は日本を代表する葡萄酒であるが、そもそも日本では葡萄酒は醸造されていなかった。明治10年に宮光園が2名の杜氏をフランスへ派遣し、葡萄酒醸造法を学ばせたことから、勝沼で葡萄酒醸造が始まった。ただし、勝沼では江戸時代から葡萄の栽培が盛んであった。それは京戸川扇状地に代表される排水性の良い地質特性が葡萄の栽培に適していたことが挙げられる。また内陸盆地特有の寒暖差の大きい気候特性が、ポリフェノールを多く含む葡萄を生み出す要因となっている。

両地域ともに排水の良い地盤条件が作物の栽培に適していることが挙げられる。薩摩地方ではシラス台地からの湧水が焼酎醸造に利用されているのに対し、葡萄酒醸造では水を必要としないため、甲州市勝沼での水文条件は考慮しなくてよい。これらの例では、地質条件が地域の醸造文化に大きく関わっていることが分かる。