日本地球惑星科学連合2021年大会

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[O-02] 自然災害と人 ~ジオパークで地球の声に耳を澄ます~

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.02

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、佐野 恭平(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、郡山 鈴夏(糸魚川市役所)、横山 光(北翔大学)

17:15 〜 18:30

[O02-P10] おおいた豊後大野ジオパークにおける阿蘇4火砕流後の地形変遷と防災上の意味-豊後大野市三重町の例

*吉岡 敏和1 (1.おおいた豊後大野ジオパーク推進協議会)

キーワード:おおいた豊後大野ジオパーク、阿蘇4火砕流、大野川、地形変遷、防災

おおいた豊後大野ジオパークが位置する大分県南西部は阿蘇火山の東にあたり、約9万年前に噴出した阿蘇4火砕流によって形成された火砕流台地が広がっている。台地は大野川やその他の河川によって開析され、台地として残った部分は「原(はる)」と呼ばれ、広大な農地として利用されている。また開析谷のうち、比較的小規模な河川によって形成された盆地状の谷底は、生活のための水を得やすいことから居住地として利用されてきた。これに対し、九州屈指の河川である大野川は、蛇行しながら深い谷を形成し、川沿いには数段の河成段丘は見られるものの、沖積平野はほとんど分布しない。
豊後大野市役所がある三重町の中心市街地は、大野川の支流である三重川と玉田川の合流点付近に位置している。三重川は玉田川と合流後、本流である大野川の方向に向かわず、山に向かって南東方向に流れ、松尾川と合流後、北に流れて大野川に合流する。松尾川との合流点付近は狭窄部となっており、その上流では幅広い沖積低地を伴うが、合流後は深い渓谷を形成している。
以上のような地形的特徴は、この地域の災害の特性に大きく関与している。まず大野川沿いでは、降雨時の水位上昇による災害が挙げられる。大野川は流域面積が広く、上流域には阿蘇外輪、くじゅう連山、祖母・傾山系といった降水量の多い地域が含まれる。また本流に沿っては阿蘇4火砕流の強溶結部が分布し、側方侵食が妨げられるため谷底平野が狭く、増水時は一気に水位が上昇するという特性がある。一方、支流の三重川沿いの低地は、出口が閉塞されているため、ひとたび氾濫が発生し、周辺低地が浸水すると、排水が困難となる可能性がある。また三重川に注ぐ小規模な支流は、勾配が比較的急で谷幅が狭いため、土石流による災害の発生の可能性が指摘できる。さらに台地縁の斜面では、基部が地下水の湧出により侵食され、斜面上部が崩落しやすくなることが考えられる。
なお、本発表の内容は2020年10月の豊後大野市三重町防災士会で講演し、地域の防災活動に役立つように努めている。