17:15 〜 18:30
[O02-P17] 地域での合意形成を図りながら被災したジオサイトの復旧を目指す―西予市須崎海岸を例に―
キーワード:四国西予ジオパーク、須崎海岸、斜面崩落、ドローン、防災・減災
変動帯に位置する日本列島では、社会に深刻かつ広範な被害がもたらされる大規模自然災害の発生リスクを常に抱えている。我が国における大規模自然災害への対策は、防災科研と火山学会が協力して「火山ハザードマップデータベース(1)」を取りまとめたり、気象庁が主催する「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会(2)」において地震の発生リスクを評価したりと、国や研究機関が主導したリスク評価や防災計画に基づいて進められる。一方で、地域で局所的に発生する斜面災害については、住民主体の地区防災計画の作成等を通して地域内での防災・減災を進めていくことが望ましいとされている。ただし、発災時にはライフラインの確保や安全が優先されるため、崩落斜面は速やかに被覆され、斜面崩落の現場観察を通した住民への啓発は実施が難しい。こうした中で、自然遺産や地質遺産のような、生活範囲からある程度の距離がある場所において生じた斜面崩落などは、その発生メカニズムの理解や、現場の復旧や活用について話し合いを深める良いきっかけとなりうる場合がある。
愛媛県西予市三瓶町に広がる須崎海岸の露頭には、黒瀬川構造帯の酸性凝灰岩を主とする縦じまの地層が見られ、四国西予ジオパークが保全するジオサイトの一つとなっている。須崎海岸では海岸沿いに崖状露頭があり、この足元に遊歩道が整備されている。2020年(令和2年)7月6日から7日未明にかけての降雨によって、須崎海岸の遊歩道山側斜面の一部で斜面崩落が発生した。斜面崩壊の幅は約10mで、海岸部から崩壊頭部までの高さは約55mである。また、8月に実施した簡単な測量の結果によると、堆積した土砂量は約800m3と推定された。崩落した堆積物には一部に酸性凝灰岩の礫を含むものの、酸性凝灰岩起源の風化土壌が主体であるため、崖上部に存在する土砂部の表層崩壊であると考えられる。遊歩道は船舶の接岸が難しい場所であるため、重機や人力による崩落土の撤去が困難な状況にあり、現在も遊歩道の立入りが制限されている。今回、小型ドローンを用いて月1回程度の頻度で空中写真撮影を行い、崩落土の堆積量の推移を簡易的にモニタリングした。その結果、9月の台風10号の通過後には遊歩道下に堆積した崩壊土は波浪により移動し、遊歩道上に堆積した崩壊土もやや減少した。一方で10月から2月までの変化量はごくわずかであった。これらのことから、崩積土の移動には降雨よりも波浪の影響が大きいと推測され、今後遊歩道上部まで波が達するような台風等に起因する波浪を数回経験すれば、原型復旧に着手できるような規模にまで土量が減少すると予想される。
本発表では、2021年(令和3年)3月13日に開催予定の「せいよ自然と暮らしのカレッジ」における西予市民を対象とした須崎海岸の崩落箇所の現地見学と、一連の取り組みに対する参加者および関係者の反応について紹介する。
参照ウェブサイト
(1) 防災科研「火山ハザードマップデータベース」: http://vivaweb2.bosai.go.jp/v-hazard/ (last access on 2021.02.08)
(2) 気象庁「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会とは」: https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/nteq/assessment.html (last access on 2021.02.08)
愛媛県西予市三瓶町に広がる須崎海岸の露頭には、黒瀬川構造帯の酸性凝灰岩を主とする縦じまの地層が見られ、四国西予ジオパークが保全するジオサイトの一つとなっている。須崎海岸では海岸沿いに崖状露頭があり、この足元に遊歩道が整備されている。2020年(令和2年)7月6日から7日未明にかけての降雨によって、須崎海岸の遊歩道山側斜面の一部で斜面崩落が発生した。斜面崩壊の幅は約10mで、海岸部から崩壊頭部までの高さは約55mである。また、8月に実施した簡単な測量の結果によると、堆積した土砂量は約800m3と推定された。崩落した堆積物には一部に酸性凝灰岩の礫を含むものの、酸性凝灰岩起源の風化土壌が主体であるため、崖上部に存在する土砂部の表層崩壊であると考えられる。遊歩道は船舶の接岸が難しい場所であるため、重機や人力による崩落土の撤去が困難な状況にあり、現在も遊歩道の立入りが制限されている。今回、小型ドローンを用いて月1回程度の頻度で空中写真撮影を行い、崩落土の堆積量の推移を簡易的にモニタリングした。その結果、9月の台風10号の通過後には遊歩道下に堆積した崩壊土は波浪により移動し、遊歩道上に堆積した崩壊土もやや減少した。一方で10月から2月までの変化量はごくわずかであった。これらのことから、崩積土の移動には降雨よりも波浪の影響が大きいと推測され、今後遊歩道上部まで波が達するような台風等に起因する波浪を数回経験すれば、原型復旧に着手できるような規模にまで土量が減少すると予想される。
本発表では、2021年(令和3年)3月13日に開催予定の「せいよ自然と暮らしのカレッジ」における西予市民を対象とした須崎海岸の崩落箇所の現地見学と、一連の取り組みに対する参加者および関係者の反応について紹介する。
参照ウェブサイト
(1) 防災科研「火山ハザードマップデータベース」: http://vivaweb2.bosai.go.jp/v-hazard/ (last access on 2021.02.08)
(2) 気象庁「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会とは」: https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/nteq/assessment.html (last access on 2021.02.08)