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[O07-P13] 習志野隕石火球の発光による落下位置の検討
キーワード:習志野隕石火球、落下地点
§1.動機・目的
2020年7月2日午前2時32分に、関東地方の上空を西から東に流れる火球が観測された。同日に千葉県習志野市で発見された石が最近落下した隕石であることから、隕石の正体は火球に関連するものであるとみられ、「習志野隕石」と命名された。この火球を本校の北東方向に向けたカメラにより観測することができた(図1)。そこで、撮影された火球の映像から軌道解析と落下位置の検討を行うことにした。
§2.火球とは
流星の中でも絶対等級が-4等級よりも明るいものを火球という。また、隕石との大きな違いは物体が地表に落下したか否かであるが、隕石となって地表に落下したものも火球と呼ばれる場合がある。
§3.方法
火球の観測には高感度CCDカメラ(WAT-100N)を使用した。カメラの映像はパーソナルコンピュータにより自動で常時監視され、動体を検知した場合その前後3秒を含めた映像を記録する。パーソナルコンピュータの内部時計は、GPS時計により1/100秒の精度で同期されており、精確な観測時刻を記録する。次に動体検知ソフト「UFOCaptureHD2」と動体分析ソフト「UFOAnalyzerV2」を用いて火球の軌道や発光開始・終了地点の緯度経度と高度を特定し、落下地点を検討した。発光がより強くなった部分では隕石の分裂が生じて落下速度が変化すると仮定して、火球の分裂間の平均の速度から鉛直方向の軌道・落下地点を検討した。
§4.結果
4-1 発光開始-発光終了の2地点間から求めた軌道と平均の速度
「UFOCaptureHD2」から火球の軌道を推定して地図上に表示した。「UFOAnalyzerV2」で求めた緯度経度から、発光開始-終了地点間の水平距離は73.3[km]となった。また、火球の発光開始地点と発光終了地点の高度はそれぞれ84.4[km]と20.4[km]となった。さらに「UFOCaptureHD2」で調べた発光継続時間7.16[s]から求めた火球の平均の速度は13.6[km/s]であった。これをGoogle Earth Proを用いて立体的に表示した(図2)。
4-2 発光開始-発光終了地点間の火球分裂を考慮した軌道と平均の速度
撮影された火球の映像をみて、発光がより強くなった時刻の火球の緯度経度と高度を基に、習志野隕石火球の推移のグラフを作成した。しかし、発光終了時にすでに水平方向の移動距離が90[km]を超えていたため、実際の発光開始地点―習志野市間の水平距離は約90㎞であるため誤差が生じていると分かった。そこで、誤差が生じた要因と考えられるデータを除いて、同様にグラフを作成した(図3)。図4は誤差を除いた分裂間の平均の速度のグラフである。
§5.考察
4-1より火球が直線運動を続けた場合、発光開始地点から約97.0[km]離れた地点に落下すると考えられる。この数値は実際の習志野市までの距離よりも大きくなっている。これは空気抵抗などの物理的要因が考慮されていないためである。対して、水平方向の移動距離に着目すると、60-80[km]間の3点のデータの傾きがそれ以前のデータの傾きよりも急であることから、物理的要因によって放物運動して落下したと考えたため、3点の傾きから図5を作成した。すると、発光開始地点-落下推定地点間は91.0[km]となり、実際の習志野隕石火球の落下地点に近い値となった。
§6.結論
習志野隕石火球は、発光終了後に物理的要因を受けながら放物運動して落下している。また、輝度の変化から落下位置を推定することができる。
§7.今後の展望
気象庁の観測データによると、習志野隕石火球が発見された時刻に南風が吹いていた。図5をみると習志野市よりも南側に落下している。このことから実際は風の影響を受けて北側に逸れて落下したと考えられるため、今後は気象要因との関係について検討していく。また、正確なデータを求めるために火球の瞬間の速度についても検討していく。
§8.参考文献
・SonotaCo.JP (最終閲覧日:2020年9月24日) http://sonotaco.jp/main.php
2020年7月2日午前2時32分に、関東地方の上空を西から東に流れる火球が観測された。同日に千葉県習志野市で発見された石が最近落下した隕石であることから、隕石の正体は火球に関連するものであるとみられ、「習志野隕石」と命名された。この火球を本校の北東方向に向けたカメラにより観測することができた(図1)。そこで、撮影された火球の映像から軌道解析と落下位置の検討を行うことにした。
§2.火球とは
流星の中でも絶対等級が-4等級よりも明るいものを火球という。また、隕石との大きな違いは物体が地表に落下したか否かであるが、隕石となって地表に落下したものも火球と呼ばれる場合がある。
§3.方法
火球の観測には高感度CCDカメラ(WAT-100N)を使用した。カメラの映像はパーソナルコンピュータにより自動で常時監視され、動体を検知した場合その前後3秒を含めた映像を記録する。パーソナルコンピュータの内部時計は、GPS時計により1/100秒の精度で同期されており、精確な観測時刻を記録する。次に動体検知ソフト「UFOCaptureHD2」と動体分析ソフト「UFOAnalyzerV2」を用いて火球の軌道や発光開始・終了地点の緯度経度と高度を特定し、落下地点を検討した。発光がより強くなった部分では隕石の分裂が生じて落下速度が変化すると仮定して、火球の分裂間の平均の速度から鉛直方向の軌道・落下地点を検討した。
§4.結果
4-1 発光開始-発光終了の2地点間から求めた軌道と平均の速度
「UFOCaptureHD2」から火球の軌道を推定して地図上に表示した。「UFOAnalyzerV2」で求めた緯度経度から、発光開始-終了地点間の水平距離は73.3[km]となった。また、火球の発光開始地点と発光終了地点の高度はそれぞれ84.4[km]と20.4[km]となった。さらに「UFOCaptureHD2」で調べた発光継続時間7.16[s]から求めた火球の平均の速度は13.6[km/s]であった。これをGoogle Earth Proを用いて立体的に表示した(図2)。
4-2 発光開始-発光終了地点間の火球分裂を考慮した軌道と平均の速度
撮影された火球の映像をみて、発光がより強くなった時刻の火球の緯度経度と高度を基に、習志野隕石火球の推移のグラフを作成した。しかし、発光終了時にすでに水平方向の移動距離が90[km]を超えていたため、実際の発光開始地点―習志野市間の水平距離は約90㎞であるため誤差が生じていると分かった。そこで、誤差が生じた要因と考えられるデータを除いて、同様にグラフを作成した(図3)。図4は誤差を除いた分裂間の平均の速度のグラフである。
§5.考察
4-1より火球が直線運動を続けた場合、発光開始地点から約97.0[km]離れた地点に落下すると考えられる。この数値は実際の習志野市までの距離よりも大きくなっている。これは空気抵抗などの物理的要因が考慮されていないためである。対して、水平方向の移動距離に着目すると、60-80[km]間の3点のデータの傾きがそれ以前のデータの傾きよりも急であることから、物理的要因によって放物運動して落下したと考えたため、3点の傾きから図5を作成した。すると、発光開始地点-落下推定地点間は91.0[km]となり、実際の習志野隕石火球の落下地点に近い値となった。
§6.結論
習志野隕石火球は、発光終了後に物理的要因を受けながら放物運動して落下している。また、輝度の変化から落下位置を推定することができる。
§7.今後の展望
気象庁の観測データによると、習志野隕石火球が発見された時刻に南風が吹いていた。図5をみると習志野市よりも南側に落下している。このことから実際は風の影響を受けて北側に逸れて落下したと考えられるため、今後は気象要因との関係について検討していく。また、正確なデータを求めるために火球の瞬間の速度についても検討していく。
§8.参考文献
・SonotaCo.JP (最終閲覧日:2020年9月24日) http://sonotaco.jp/main.php