日本地球惑星科学連合2021年大会

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[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM15] 宇宙プラズマ理論・シミュレーション

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.05

コンビーナ:天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、三宅 洋平(神戸大学計算科学教育センター)、梅田 隆行(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、中村 匡(福井県立大学)

17:15 〜 18:30

[PEM15-P15] 超巨大バイナリー・ブラックホールと重力波の発生—事象限界を越えた外部放射はない

*大家 寛1 (1.東北大学理学研究科地球物理学専攻)

キーワード:カー・ブラックホール、重力波、高温高密度プラズマ

1.序

東北大学デカメータ波電波干渉計により21.86MHzでの観測で得られたFFTコードの解明から天の川銀河中心のブラックホールは従来からの周辺恒星群の運動から結論された430万太陽質量を持つ一個体としてのブラックホールではなく。240万太陽質量〈Gaa と仮称〉と190万太陽質量(Gabと仮称)から成る超巨大バイナリー・ブラックホールであり、それぞれ光速度の18及び22パーセントの速度を持ち、2200秒周期で公転し合っていると結論している。

(https://www.terrapub.co.jp/e-library/9784887041714/index.html) しかし、この近距離・高速公転速度を示すバイナリーは、重力波放出が激しいとされる星質量ブラックホール・バイナリーに関して言われてきた重力波放射論に従えば、放射に伴う運動エネルギー損失で既に合体しているはずとの矛盾があり、本研究ではその真偽を明らかにするため、理論検討に入った。

 2.Kerrブラックホール内部にて凝縮する物質本体

  重力波研究で歴史的に永くかつ多く取り上げられてきた星質量ブラックホールからの重力波問題と超巨大ブラックホールからの重力波問題が本質的に異なる点は、超巨大ブラックホールでは密度がブラックホール半径の逆2乗で薄くなり、高密度高温プラズマとして古典論に基づくプラズマ物理学の範疇で取り扱えることにある。本研究では、アインシュタインの重力方程式を解く形でKerrブラックホールの事象限界を越えた内部の力学平衡状態を検討した。検討はブラックホール内部の測地線、すなわち力学平衡線を自由落下する系で行われ、物質領域は全域にわたり等速度回転を行うモデルをもって究明された。特に高エネルギー状態を考慮すると、質量及び角運動量は特殊相対論効果で増大し物質領域の半径r(Mc) は事象限界半径 r(E)より非常に小さくr(Mc)/r(E) =1/10 ~ 1/100 となりうる。即ち物質半径の縮小状態が可能で、観測から得られている質量M及び回転パラメターa(角運動量を直接反映する)が実現されると結論された。この場合縮小率の逆数r(E)/ r(Mc) は回転光速度に近くその特殊相対論的γ値にほぼ比例し100GeV~200GeVに迫るエネルギーが対象となる。

 3.物質領域を源とする重力波の発生

  Kerrブラックホールの事象限界より内部で、半径r(Mc)に縮小された物質球がバイナリーの公転軌道の原点に対して形成する4重極の加速運動を源とする重力波の発生を検討するが、この過程は従来の重力波発生理論をそのまま踏襲するものである。従って、重力波を形成する10個の波動的・時空計量h(ij) はローレンツ・ゲージ(電磁波理論に類似対応して理解される)の採択と、さらにゲージ固定作用を持つTT(Traceless Transvers)ゲージ選択が可能で、重力波を構成する波動的・時空計量、h(xx) とh(xy)の2個の独立成分をもって重力波の発生が結論される。

 4.波動の伝搬・停止と逆向及び定在波化

 発生した重力波は物質領域を源として離れ、事象限界まで広がる擬真空状態にあるKerr BH時空中を伝搬する。その伝搬速度Vは、光速度cに対しV=cF・(Del/Gam)^0.5 で表され、Fは空間の回転角速度と距離r及び極角の関数、さらに Del及びGamはKerr BH の時空計量で距離r及び極角の関数である。ここでKerr ブラックホール内部空間を進行する重力波に特徴的なのはKerr 時空で、距離r及び極角の関数として顕われるF=0、の点に必ず遭遇することである。その結果波動の進行は止み、逆行をはじめ共存する進行波との干渉のため定在波を形成することになる。即ち形成された重力波はエネルギー伝搬を許されない。

5 結論

 超巨大バイナリーブラックホールの場合事象限界を越えた内部は古典論に基づくプラズマ物理学で記述される。アインシュタイン方程式を測地線近似で内部の力学平衡を、均一擬光速度モデルの場合について解くと事象限界半径の1/10~1/100に凝縮した物質核が結論される。ここから発生する重力波はKerr BH内部の特異点で進行を止め、逆行し、進行波との干渉で定在波を形成、重力波によるエネルギー伝搬はなくなる。従って、超巨大ブラックホールバイナリーから事象限界を越えた外部への重力波の放射はない。